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「いやぁ~変人だよ。変人だけどやっていることは立派だし、成功させているから大したものだよ」と、作家・村上龍を唖然とさせた女性起業家・山口絵理子(36歳)。
小学校ではイジメにあい不登校になった。その反動から中学では非行に走った。ところが高校では、柔道に打ち込み全国7位の腕前になった。さらに工業高校から開校初の慶應義塾大学に進学した。
そして卒業後は一流企業への就職を選ばず、世界の最貧国で現地の人たちとモノづくりに挑み、世界に通用するブランドを立ち上げてしまった。
会社の名前はマザーハウス。マザー・テレサと、従業員にとって会社が「第二の家」となることを目指してつけた名前である。

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Balukhali Makeshift Camp in Cox's Bazar, Bangladesh, September 19, 2017. (写真:ロイター/アフロ)


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■21世紀のベンチャー

創業は2006年のいわゆるベンチャーだ。
社員数140人。この5年で急成長を遂げ、現在は全国に24店舗、海外では台湾や香港に7店舗を構える。アジア最貧国と言われるバングラデシュの天然ジュートやレザーを使ったバッグを中心に、ストールやジュエリーなどの製造・販売を手掛けている。

今世紀に入って、日本では20~30代の起業家がたくさん出てきた。
そもそもベンチャーブームは、70年代・80年代・2000年前後と3回あった。しかしここ十年ほどの内に20~30代でベンチャーを立ち上げる人々には、以前と少し異なる一面がある。
「世の中の理不尽・非効率を排除し、より良い社会を作り上げたい」という、"動機の純粋性"を備えていることだ。それを可能にしているのがITだが、山口氏はそのITに頼ることなく、いわば信念を貫くことでビジネスの成功を勝ち取っている。

成功の原点は、工業高校に進学した辺りだろうか。
小学生のころにいじめにあったこともあり、強くなりたいと思い、柔道に魅せられた。その強豪校にということで、あえて工業高校に進んだ。そして高3で柔道部を引退した後、一念発起して猛勉強し、慶応義塾大学に合格している。工業高校開校以来初の快挙だった。
そして大学4年の時、インターンとして2週間、アジアの最貧国バングラデシュに滞在した。そこの極端な状況から、現地の大学院を受験し、さらに2年間バングラデシュ生活することを決意。現地を正しく知りたい、どうすれば状況が良くなるかを把握したいという純粋な思いからだった。

■マザーハウスの展開

実はこの国は世界のジュートの9割を産出している。
そのジュートを使ったバッグを独学でデザインし、現地工場で160個作ってもらったところ、みごとに日本で完売した。これがきっかけで2006年にマザーハウスを設立。ところが当初は挫折の連続だった。

まずは焼肉店や量販店のアルバイトで資金を作り、バングラデシュに戻ってバッグの発注をした。ところが製造代金の前金をだまし取られたり、不良品を大量に送り付けられたりと、失敗続きだった。
そこで2008年、自分で工場を作ることに方針を転換し、現地で2人雇い上げ製品を作り始めた。
「いつか大勢の人を雇える工場にしたい」「バングラデシュのために何かしたい」が当時の思いだった。

今その工場は200人の大所帯となっている。労働者の賃金は、バングラデシュの相場の1.5倍。さらに医療保険や社員向けローンも導入している。
「いいモノ」を作るには、働く環境を整えることが第一と山口氏はいう。そして現地製造へのこだわりには、「その国にあった素材・生産方法を最大限尊重したモノ作り」を行い、「最貧国でも世界に通用するブランドが作れることを証明したい」からだという。

それにしてもこうした信念を、貧しい現地で何度も挫折を味わいながら諦めずにやり遂げるのは、並大抵のことではない。それを山口氏は、ネパールでのシルク、インドネシアでのジュエリーなど、いくつかの国で実現させるところまで来ている。

番組の最後で紹介される、村上龍の編集後記「マザー・テレサへと続く道」。
山口さんは、いじめ、非行、柔道、そして途上国における起業と、非常にユニークな人物に見える。
だが実は、「アンフェアに立ち向かう」という、オーソドックスな価値観に貫かれている。
マザー・テレサやチェ・ゲバラと同じだ。
「根性」という言葉が苦手らしい。根性でサバイバルできるような安易な時代状況ではない。
現場に行き、目標を発見し、その実現に必要なことは全部やる。
その過程でさらに多くの重要なことに気づき、信頼に支えられたネットワークが作られていく。
ユニークでもなんでもない。経営者の王道を歩んでいる。
      
やはり「最貧国でも世界に通用するブランドが作れることを証明したい」「最貧国のために何かしたい」という"動機の純粋性"と"現場主義"が成功の秘訣(ひけつ)のようだ。
それにしても、何度もあった挫折を乗り越えて、それをやり遂げるのは並大抵ではない。それを一見か弱い、普通の女性がやり遂げてしまった点が驚きだ。どんな"柔らかさ""強かさ"そして"強靭(きょうじん)な信念"が成し遂げたのか、ぜひ山口氏の実存を見て感じていただきたい。

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文責:次世代メディア研究所 鈴木祐司

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