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このところ深夜ドラマで話題作を連発するテレビ東京。
『モテキ』『マジすか学園』『勇者ヨシヒコ』『孤独のグルメ』『バイプレイヤーズ』など話題作が続いたが、今期の『デッドストック~未知への挑戦~』も、一級のホラー仕立てで視聴者の心臓をわしづかみにしている。

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早見あかり/Dec 01, 2015 : テレビ東京のシチュエーションコメディー 「ウレロ☆無限大少女」の会見(写真:MANTAN/アフロ)


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特に7話までは、一話完結で上質なホラーを並べてきたが、終盤になってにわかにストーリーが動き出していた。そして第10話で一つの決着となったが、これがまた核とミサイルで世界を敵にまわす北朝鮮にどう対峙(たいじ)すべきかを考えさせるような着地だ。偶然とはいえ、フィクションが世界情勢にシンクロし過ぎ、世界的なホラーに進化してしまったようだ。

■第7話まで

主人公・常田大陸を演ずるのは村上虹郎。独特の雰囲気で、多くの女性ファンを魅了している。
テレ東の新人AD役で、去年テレ東が社屋を移転した際に発掘された大量の番組素材を整理する"未確認素材センター"に配属された。
そこには同僚の二階堂早織(早見あかり)とベテランの佐山暁(田中哲司)がいる。7話まではVTR整理の中で、怪奇現象が記録されたテープを発見することで物語が展開して来た。

初回はトンネル内での怪奇現象がテーマだった。
2話は突然動き出す市松人形。
3話は丑(うし)の刻参りの呪いの話。
4話はこっくりさん。
5話は落ち武者の怨念。
6話は老いないホステスの謎。
7話は富士山麓の樹海で消えた自殺者の遺体の話。

■8話から動き出した物語

7話までは独立した一話完結型だったが8話から物語は動き出す。
大陸(村上虹郎)が偶然見た1本のテープ。そこには母・忍(中村優子)の最後が映っていた。
翌朝、そのことを知った佐山(田中哲司)は顔色を変え、早織(早見あかり)に真相を告げる。美濃部知世(我妻三輪子)の特殊能力で、大陸の母は殺されていたのである。

その時はまだ幼かった大陸は、仕事で出掛けたきり帰ることのなかった母の幻影と、成長した今も自宅で会話していた。それまでの回でも、母と電話したり、自宅で会話するシーンがあった。違和感のあるゴツゴツしたシーンだったが、それら全ては大陸の幻影だったとこの回で氷解する。
そしてその時で止まってしまった大陸の時間は、心配して訪ねて来た早織により動き出す。大陸はようやく母の死を現実として受け止められるようになったのである。

■母の死の真実

母・忍は精神科医だった。「特殊能力者」達の集会を開き、彼らは互いの不思議な力を認め、時に慰め合っていた。ひとり美濃部を除いて......。
母・忍の態度を欺瞞(ぎまん)と感じた美濃部は、ついに母を殺害してしまった。しかもその場面を撮影していたのは、若き日の佐山だった。大陸は、一人美濃部が収容されている病室を訪れた。

佐山・早織らも、そこへ駆け込んだ。
そこには生命維持装置をつけた美濃部と、彼女を見下ろす大陸の姿があった。母を殺した人物を目の前に、どう出るか葛藤に引き裂かれる大陸。そして意識不明のはずの美濃部と異次元の中で対話することになるが、そこで大陸は初めて真相を知る。母・忍も死の間際、美濃部がそれ以上暴走しないよう、反撃を加えていた。生命維持装置付きとなっていたのは、そんな経緯の末だった。

全て知った大陸が、葛藤の末に下した決断は何か。母を殺されたことへの報復なのか、寛容なのか。
前者はかつて母・忍と美濃部が対峙(たいじ)した際の、美濃部の考え方を象徴する。そして後者は、母が幼い頃から大陸に教えて来た姿勢であり、最期まで貫き通そうとしていた信念である。

■報復か寛容か

同ドラマの放送が始まったこの夏、朝鮮半島情勢はみるみる緊迫の度を深めた。
核とミサイルを使って世界を恫喝(どうかつ)する北朝鮮。圧力か対話か、意見が真っ二つに分かれる世界情勢。報復か寛容かというドラマのテーマは、偶然とはいえ、あまりに世界情勢にシンクロしてしまった。
さらに初回から7話まで一見独立していた物語も、伏線として終盤で回収される。

ドラマとしては、十分緻密に積み上げられた物語だった。娯楽としても、ホラーの演出は一級品だった。それらが世界情勢の急変で、より大きな意味を持ち始めてしまったのがこの3カ月だった。
テレビ番組の名作とは、こうした偶然が関与するものだ。ぜひテレビドラマ史と実際の国際関係史の重大局面の証人になってみてはいかがだろうか。
いずれにしても、報復か寛容か、答えを出さなければならないのは、われわれ一人一人である。

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文責:鈴木祐司 次世代メディア研究所

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