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日本の米消費量は1962年がピークだった。年間1人当たり120キロほど、月間10キロほど食べていた。ところが今や、月間5キロ弱と半分以下に減っている。
影響は当然、農家、農業関連団体、コメ卸、小売りなど、各方面に減収という形で現れる。ところが創業115年のコメ卸最大手(株)神明は、2013年度の売上1442億円を16年度には1824億円と126%成長をしてみせた。成長の秘訣(ひけつ)は、コメの消費量を増やそうと、あらゆるコメビジネスに乗り出して来たことだった。

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イメージ画像(写真:アフロ)


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■ビジネス展開

"コメ卸がそこまでやるか?"と最も驚く取り組みは、「わずか10分で炊ける炊飯器」を開発したこと。去年2月、高速・小型を極めた「poddi(ポッディー)」を発売している。業界最速の"10分炊飯"を可能にした秘密は、特許技術を駆使した特殊なコメの開発にあった。白米・玄米・もち玄米の3種類がラインアップされている。甘みとうまみが豊富な上に、最速という便利さ。一人暮らしの若者に受けている。また海外に長期に出張する人も重宝しているとのことだ。

パックご飯の開発・販売は当然着手済み。09年から富山県産こしひかりを北アルプスの天然水仕立てで作った。コメ農家自身が「毎日食べたい」と絶賛するほどである。業界最大手ならではのこだわり技術を詰め込み、「炊いたご飯と変わらない」味を実現している。差別化をしっかり行っている。

飲食店経営にも乗り出している。まさに自慢のコメを消費する場の拡大だ。サバ料理専門店の「サバープラス」では、玄米と白米を黄金比率でブレンドした特殊なコメを提供。寿司(すし)チェーン「魚べい」では、独自ブレンドのコメを使い、客から「シャリがおいしい」と評判を集めている。
さらに直近では、今年9月におにぎり店「五穀豊穣米処 穂(みのり)」を神戸市内に開店した。少々高いが、毎朝精米した3~4種類のコメから好みのものを選べるのが特徴で、手作りを中心に5~10種類の具材を用意している。
このように、単にコメを販売するだけでなく、より便利に、よりおいしくすることで、より多く食べてもらおうと努力してきた。直接消費者の口元に届ける事業を拡大させることで、400億円近い売上増を果たしてきたのである。

こうした経営は、藤尾益雄社長(52歳)の「コメの消費拡大で 日本の農業を守る」という信念に基づく。前提には、祖父の代から続く革新経営の精神があった。

■「あかふじ米」から続く革新的"米屋"

戦中戦後、長く政府の管理下に置かれてきたコメ業界。しかし、神明は業界を驚かす革新的な取り組みを続けてきた。過去には、いち早くブレンド米を一般消費者向けに販売し、ヒットさせた。「あかふじ米」の商品名で親しまれ、関西では知らない人はいない。
さらに、コメは米屋で買うのが当たり前だった時代に、業界に先駆けてスーパーでの販売に道を開き、驚かせた。こうしたベンチャースピリットを受け継ぎ、パン食やヘルシー志向でコメの消費量が減少する中、藤尾は数々の新規事業に乗り出し業績を拡大してきた。「直営おにぎり店」をオープンさせるなど"日本のファストフード"おにぎり市場を拡大させようとしているのだ。まさにコメ卸最大手のプライドをかけた"殴り込み"だ。

■業界最大手として、ニッポンの農業を守る

コメを守るため、川上の農業への支援にも注力している。病気に強いコメの新品種を見つけて、農家に推奨。収穫したコメは全量買い取り、ローソンへ販売している。生産者と大手小売りを結びつけ、農家の収益アップにつなげる取り組みだ。
さらに、耕作放棄地も何とかしたいと、画期的な活用方法を考え出した。なんとバナナの栽培で、誰も思いつかなかった方向だが、今や多くの農家が期待を寄せている。
コメに関するビジネスを川上から川下まで全面展開しているが、このドキュメントに対して作家の村上龍(むらかみ・りゅう)は、番組の最後に次のような文章を寄せている。

コメとパンの消費はトレードオフの関係にある。
パンの需要が増えれば、コメは減る。
それを明確に指摘したのは、藤尾さんが初めてだった。
「神明」はコメ卸のトップだが、ずっとアウトサイダーで、挑戦者だった。
だから、パンを、競合食品と意識することができた。
パンの豊富なバリエーションは、職人、メーカーの努力の結果だ。
パンとご飯、1つ選べと強要されたら、たぶん日本人の多くはご飯に傾く、そう思いたい。
「もし世の中からご飯が消えてしまったら」
日本人全員にとって必須の問いではないだろうか。

「日本人の主食を守ろう」と、あの手この手で保守的だったコメのビジネスに革新を起こしている神明のサバイバル革命は、他のビジネスに携わる誰にとっても一見の価値がある。

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文責:次世代メディア研究所

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