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スポーツ・演劇・音楽・学術などの各分野で活躍する人物にスポットを当て、その人物の魅力・素顔に迫る人間密着ドキュメンタリー番組『情熱大陸』。
10月1日(日)の放送は、ピアニストであり作曲家・俳優の清塚信也。クラシックだけに留まらない、マルチな幅を利かせ、コンサートでは観客の笑いを誘うエンターテインメント性のあるパフォーマンスで聴衆を沸かす。
気品のある容姿で、ファンからは"貴公子"や"王子"と呼ばれ、女性たちを魅了している。

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提供:アフロ


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■卓越した演奏の腕前

大ヒットドラマ『のだめカンタービレ』では玉木宏、映画『神童』では松山ケンイチのピアノ演奏の吹き替えを担当した。
さらに映画『さよならドビュッシー』では、ピアノ教師役で役者デビューを果たし、卓越した演奏と演技を披露した。
最近では、ピアニストや音楽家を演じる俳優は、短期間で猛練習し、プロ監修のもと、プロに見える座り方から弾き方まで見事に体得し、見ごたえのある演技を見せてくれることが増えた。
しかし清塚信也ほどの演奏を、演技の中で見られることはまずない。本物の迫力と、一瞬にして見るものを惹(ひ)きつけるシーンの力は、"ピアニストを演じる役者"ではなく、"ピアニストが演じる役者"ならでは。強烈なオリジナリティと求心力があると言えよう。

亡き恩師・中村紘子が認める清塚のショパンの舟歌。その演奏はほんとうに繊細で優しく美しい。
「ピアノを弾いている」というより、日本語の代わりに"ピアノ"という言葉を使って、詩を語りかけているようだ。流れる空気には温度があり、香りやテクスチャーの質感まで、肌で感じられるのではないかと思うほど、彼の奏でる音の中には風や風景が存在する。
確実に女ウケが良い作曲家ショパンのようでもあるが、だからと言って彼の演奏は弱々しいわけではない。包み込む大地のような力強さと、超越技巧も簡単そうに弾くテクニックは、男性的でボードレールの詩のようだ。

■知られざる素顔と家族

小さい頃から、母と姉と3人で暮らしてきた。
「女性に囲まれて暮らしてきたから、男の部活のノリは苦手」と笑いながら話す。
母の勧めで、清塚はピアノを習い、姉はバイオリンを習った。桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後、2年間モスクワ音楽院に留学している。

情熱的で意志の強い母と、父親のような中村紘子に、清塚の才能は鍛え上げられた。
「少年時代は、野球をしたかった、いいなぁ」と野球少年を横目に、今は笑顔でバッティングセンターに行く。ガンガン打ちまくるが、バットを握る手を見ると、ファンは気が気ではないだろう。
「子供の頃、もっと父親と遊んでおきたかった」そもそも番組は彼のこの言葉で始まっていた。
ところが母に言われるがままに、ピアノのレッスンに通い、練習に励み、ピアノに人生を捧(ささ)げてきた。
「勝て、勝て、勝て、勝て・負けちゃいけない、負けちゃいけない」これが母の口癖だった。
不満を口にすると、「ピアニストになれなかったら、生きていかなくて良いよ」とまで言われていたそうだ。
正直、「よくグレなかったなぁ」と言いたくなる。

過去に、イップスという、アスリートに見られる原因不明の運動障害を患っている。
それについては多くを語らないが、「今があるのは妻のおかげ」と言うくらいだから、精神的な苦悩がなかったわけではないだろう。
清塚の言葉には、裏表が一切なく、「心からただこぼれただけ」とでも言うように、飾ることもなく自然で、嫌な感じが全くない。
きっと清塚の母の性格も、意志は強いが、実直で愛情深い人なのだろうと窺(うかが)える。
恵まれた才能と努力の裏には、寂しかった少年時代の思いが詰まっているのだろう。すべて受け止めた繊細な感性で、音楽を生きているように見える。
だから彼のピアノの音には、喜びも寂しさもただ感情をぶつけるだけの演奏ではなく、その思いを作品として語れる語彙(ごい)がたくさん詰まっている。それを"表現力"と呼ぶのだろうか。

一方、魅力的で美しい演奏に比べ、自作曲のメロディは無難で、インパクトは残念ながら希薄だ。というより、ピアノ科の学生が、作曲もやってみた、というあたりのよくある和音進行とメロディだ。でも、伸び代がまだまだありそうな予感もある。
しかも清塚の演奏と人柄が強みだ。心に説得力があるため、決して卓越した作品となっていなくても、心にすっと入ってくる不思議な力を持つ。料理で言うなら、「味付けと風味づけがウマい!」そんな感じだ。

番組では、深く染み入る言葉がたくさん出てくる。
恩師・中村紘子は「うまい下手みたいな所でおさまるな」と指導したそうだ。3800回のステージをこなしたピアニストならではの言葉である。
「人を感動させることだけがピアニストの正義」これが清塚の心と体に刻み込まれている。
人を幸せにするピアニスト・清塚信也。
その演奏と半生の実存が実にうまく編み込まれているのが、今回の『情熱大陸』だ。言葉・音・表情・映像の組み合わせの中で、清塚のポエティックなピアノの世界を感じ取っていただければ幸いである。

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執筆:コラムニスト・はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所

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