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『下北沢ダイハード』の舞台は全話が下北沢。
しかも最終話は、下北沢のシンボル「本多劇場」を再開発のために取り壊すのか存続させるのかというお話。
小劇場で活躍する11人の人気劇作家が書きおろす、個性豊かで自由な1話完結のシリーズだが、最終回はそのすべてを包含していた。

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古田新太, Sep 13, 2017 : ソフトバンクの新サービス記者発表会(写真:MANTAN/アフロ)


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バーのママ(小池栄子)と行きつけの客・ジョン幕練(古田新太)が案内役を務め、下北沢で起きた11人11様の"人生最悪の一日"が毎回紹介されてきた。それらのラストを飾る"人生最悪の一日"は、何とこれまで面白そうに他人の悲劇を語ってきたジョン幕練自身の悲劇。
ラストのセリフに「人生はクローズアップだと悲劇だが、ロングショットだと喜劇」というチャップリンの言葉が出てくるが、まさに毎回毎回は悲劇だが、最後にその語り手が悲劇の主人公になるという11話全体をロングで見ると、みごとな喜劇だったことがわかる。

■初回から"あり得ない設定"&"どんでん返しの連続"

よくできたシリーズだったが、初回から思いっきり"あり得ない設定"&"どんでん返しの連続"だったのには脱帽した。

第1話「裸で誘拐された男」は、選挙を間近に控えた国会議員が、SMプレイで全裸になりスーツケースに入れられたが、間違って誘拐事件の現場に連れていかれてしまった話。
まさに"あり得ない"にも程がある設定だが、"どんでん返しの連続"もすごい。誘拐犯は自分の息子、と思いきや、それは息子の演劇の舞台。そうとは知らずに息子のために本音を激白したがゆえに、悲劇的な現実がハッピーエンドに一挙に好転する。現実と演劇の虚実皮膜の中で、ストーリーは次々にひっくり返ったのである。

■虚実皮膜の妙

他にも、虚実皮膜の妙が何度も見られた楽しいシリーズだった。

第2話「違法風俗店の男」の主役は、違法風俗店で警察の摘発に遭遇した役者。アドリブの演技で脱出寸前まで行きながら、最後は仲間の役者に出し抜かれて、一人取り残されてしまうというオチは笑えた。

第3話「夫が女装する女」では、女装癖のある夫がママ友と一緒のところにやってきてしまい、バレないかヒヤヒヤものの主婦。最後は、夫だけでなく息子も同じだったという"どんでん返し"だった。

第5話「最高のSEXをする女」では、バンドマンの彼がようやく売れ始めたと思ったら彼の浮気が発覚し、後悔させるために女のプライドをかけ最高のSEXをしかけようとする女。1分間に12回も"SEX"が連呼されるシーンは圧巻。ゲス男にキックをお見舞いし、颯爽(さっそう)と立ち去ることで、モテるようになるというラストも爽やかだった。

第6話「未来から来た男」では、下北沢のサブカルチャーを根絶するミッションで未来から来た男・シーモキーターが登場。サブカルゲリラの女を改心させるのに失敗し、一切の無駄を排除した合理的な"2037年の世界"を支配するスーパーコンピューター「mamazon」に叱責(しっせき)される。ところが最後の最後に成功するが、それは男がどや顔で勧めてきたものには決してハマらない彼女の"面倒臭い習性"のおかげだった。下北沢の存在価値を、みごとに反語的に表現した。

第8話「彼女が風俗嬢になった男」の主人公は、同棲(どうせい)するカノジョが風俗嬢であることが発覚し、辞めさせるためにパチンコでその日のうちに50万円を稼ごうとするヒモ。すったもんだの末に目標額を手に入れるが、当の風俗嬢とは別れ、パチンコで応援してくれた女店員とカップルになってしまう。しかも、あろうことかテレ東のバラエティ番組に出演する。誰も思いつかない着地には、開いた口がふさがらない。

■期待を凌駕(りょうが)する最終回

最終回は、これまでのお話をいくつか収れんさせている。

下北沢を再開発するため、本多劇場が取り壊されることになる。そんな中、開発推進派の区議の娘と、反対派の役者の結婚パーティーが開かれるが、なんと新郎の父親がパーティーをボイコット。今まで語り部だったジョン幕練(古田新太)が、代役を頼まれ"なりすましの演技"をすることに。
ところが新婦の実の父は、演劇のために家族を捨てていた。養父の区議が開発推進派だった理由でもある。しかもその父が実は......というお決まりの"どんでん返しの連続"が続く。
しかも"なりすましの演技"は、想定外のハプニングでバレてしまう。ところが人間万事塞翁が馬。怪我の功名で事態は丸く収まるという逆転劇。
何が演技で何が事実か。虚実皮膜の妙で瓢箪(ひょうたん)から駒が出まくる展開。「人生はクローズアップだと悲劇だが、ロングショットだと喜劇」を、シリーズ全体で体現するとともに、最終話の中でもギュッと凝縮して表現していた。

『下北沢ダイハード』は深夜放送とあって、「地上波テレビでもここまでできるのか」と思わず目を疑ってしまうほど自由な作風だった。
そして"あり得ない設定"と"どんでん返しの連続"で、瞬く間に40分が終わるという優れモノのドラマシリーズ。しかもオチは見る者の予想・期待を毎回見事に裏切ってくれる。
シリーズ全体が優れていることはいうまでもないが、最終回はシリーズ全体を凝縮したような出来である。この下北沢ワールド、ぜひ心に留めておきたいものだ。

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文責:鈴木祐司 次世代メディア研究所 

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