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日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の映画祭として誕生した「東京国際映画祭」は、1985年から今年で30回という節目の年を迎える。10月25日(水)から11月3日(金・祝)の10日間開催され、世界から東京に映画作品や映画人が集うだけでなく、大人から子どもまで映画を愛する人たちが参加交流できる祝祭感あふれる映画祭。今年の見どころは何か。今年から新たにフェスティバル・ディレクターに就任した久松猛朗氏に聞いた。

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「東京国際映画祭」10月25日~11月3日開催、フェスティバル・ディレクター 久松猛朗氏


【特集】「東京国際映画祭」(Yahoo!映画)>>

【予告編映像】『三度目の殺人』是枝裕和監督作品(Japan Now 部門)>>


■話題作で華やかな幕開け

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蜷川実花の写真で、祝祭観あふれるキービジュアル


――今回は第30回という節目ですが、どのような映画祭になりそうでしょうか?

久松: 記念開催を迎えるにあたり、「Expansive ― 映画を観る喜びの共有」「Empowering ― 映画人たちの交流の促進」「Enlightening ― 映画の未来の開拓」という三つのEから始まるビジョンを掲げました。まずは、佐々木宏さん(クリエイティブ・ディレクター)、浜辺明弘さん(アート・ディレクター)をお迎えし、映画監督でもあり写真家の蜷川実花さんの写真で、祝祭観あふれるキービジュアルが実現しました。

――オープニング作品は、荒川弘氏の人気漫画を「Hey! Say! JUMP」山田涼介主演で実写映画化した『鋼の錬金術師』。そしてオープニングスペシャルは、日中共同製作映画史上最大のビッグプロジェクトとして注目される、巨匠 チェン・カイコー監督の『空海―KU-KAI―』のフッテージ上映が行われます。

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オープニング作品は『鋼の錬金術師』(2017年12月1日公開)


久松: 話題作の『鋼の錬金術師』は華やかな幕開けとなりそうです。『空海―KU-KAI―』はフッテージ上映だけですが、チェン・カイコー監督や染谷将太さんたちにも来ていただくことになっています。去年に制作報告会見を行い、合作でやりますと発表した流れで「1年後にこういう形になりました」とご報告できるのは嬉しいです。

――そしてクロージングは、元アメリカ合衆国副大統領が主演を務め、アカデミー賞2部門を受賞した1の続編、『不都合な真実2:放置された地球』が選ばれました。

久松: アル・ゴアさんの来日も決まり、登壇していただくことになりました。環境問題というのは意識して議論すべき問題だと思いますが、多様な意見があるということも承知しています。映画祭で政治的なスタンスを打ち出すつもりはありませんが、カンヌ国際映画祭でアル・ゴアさんにお会いした際、戦い続けている男の魅力を彼から感じました。大統領になりかけたところでブッシュさんに敗れたり、今回のパリ議定書も一生懸命やったところでアメリカが離脱してしまったり。挫折を乗り越えてそれでも戦うゴアさんという人間にフォーカスするのも面白いと思っています。

【予告編映像】『不都合な真実2:放置された地球』(Japan Now 部門)>>


■審査員やゲストの豪華な顔ぶれ、さらなるサプライズ発表も

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(C)2016 TIFF


――今年はコンペティション部門でハリウッド俳優のトミー・リー・ジョーンズさんが審査員長を務めることになりました。これは広く注目を集めそうですね。

久松: そうですね。永瀬正敏さん、中国の女優さん ヴィッキー・チャオさんも審査員を務めることが決定したので、豪華な顔ぶれになったと思います。

――その他、来日ゲストで決まっているのは?

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『オーシャンズ11』などを手がけたスティーブン・ソダーバーグ監督作品


久松: このたび監督復帰を果たしたスティーブン・ソダーバーグ監督ですね。『ローガン・ラッキー』を特別招待作品として上映するので、それに合わせてソダーバーグ監督の過去作3本(『セックスと嘘とビデオテープ』『オーシャンズ11』『エージェント・マロリー』)を上映します。他にもいろいろな方にゲスト交渉をしている最中なので、まだまだサプライズゲストがあるかもしれませんね。

■安藤サクラ、蒼井優、満島ひかり、宮崎あおいもレッドカーペットに

――そして安藤サクラさん、蒼井優さん、満島ひかりさん、宮崎あおいさん(※宮崎の「大」は「立」表記)という同世代の女優4名を特集した「Japan Now 銀幕のミューズたち」と題した特集も華やかになりそうですね。

久松: 蜷川実花さんによる4人での写真撮影のときも、別々の個性が輝いて壮観でしたね。レッドカーペットにも4人そろう予定ですし、上映時にはトークをお願いしています。

■無料野外上映や歌舞伎座と連携したプログラム、期間中はイベントがめじろ押し

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今年のアニメ大型特集は原恵一監督


――庵野秀明、ガンダム、細田守と続き、今年のアニメ大型特集は原恵一監督となりました。

久松: 今年は日本のアニメーションが公開されて100周年。原さんの作家性を海外に紹介していくというのは、映画祭として大事なミッションのひとつではないかと思うんです。特に『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』(01)、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』(02)の2本は、大人が泣ける映画として、作品としての評価も非常に高い。『カラフル』(10)も傑作ですし、『河童のクゥと夏休み』(07)、『百日紅~Miss HOKUSAI~ 』(15)も本当に素晴らしい映画。いい企画になったなと思います。

――イベント企画としては何がありますか?

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無料野外上映などイベント企画がめじろ押し


久松: 六本木ヒルズアリーナでは「Cinema Arena 30」(10月26日~11月3日、雨天荒天中止)と題して、過去の上映作品6000本の中から28本の映画を野外上映します。入場料もいらないですし、予約も必要ありません。一般の方がふらっとやって来て映画を見ることができます。ラインナップも『タイタニック』や『アルマゲドン』など強力な作品が上映されますので、これはぜひ楽しみにしてもらいたいですね。そして映画祭が厳選したおいしいフード&ドリンクもありますし、TSUTAYAさんにも出店してもらって、テントの中でDVD、本、グッズなどを販売してもらいます。映画のチケットを買わなくても楽しめるようになっているので、気軽に参加してもらいたいですね。

――期間中はイベントがめじろ押しですね。

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WOWOW映画工房300回&「君の名は。」初放送記念 新海誠オールナイト in 東京国際映画祭


久松: 25日の開幕に合わせてレッドカーペットイベントが行われ、豪華なゲストが多数、来場する予定となっています。そして26日には「写真甲子園」のイベントとして、大黒摩季さんのライブも予定されています。そして27日はプレミアムフライデーということで、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』のMovieNEX 発売記念イベントも行われ、ハロウィーンコスプレで来場された方にはオリジナルプレゼントを用意しています。28日はWOWOWさんとGYAOさんと連携した声優トークイベントも行われますし、深夜には新海誠さんや、ジョージ・A・ロメロ監督追悼など、6スクリーンで同時にオールナイト上映を行います。それから29日にはポケモン20周年を記念した特別ステージも予定しています。

――歌舞伎座と連携したプログラムもありますね。

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市川海老蔵さんによる「男伊達花廓」の上演


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『地獄門』の4Kデジタル復元版を上映


久松: これも好評で、歌舞伎舞踊と日本映画の名作上映を歌舞伎座で楽しむという贅沢な一夜(10月26日)です。今年は市川海老蔵さんによる「男伊達花廓」の上演と、第7回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した『地獄門』の4Kデジタル復元版を上映します。この映画は色が非常に鮮やかで、色彩でうっとりしてしまうような映画です。歌舞伎ともいいコンビネーションじゃないかと思っています。

――それから『ゴジラ』のシネマコンサートも見どころのひとつですね。

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特別企画 第一作『ゴジラ』(1954年)をフルオーケストラによる演奏とともに全編上映


久松: これはフルオーケストラの生音とともに、1954年の『ゴジラ』を見てもらう趣旨で行います。最近はやりのシネマコンサートですが、やはり生の音がバーンと鳴り響くと感動しますよね。映画にとって音楽というのは大きな要素なので、その音楽が感動を増幅するようなところがあるので、新しい映画体験になると思います。

――30回ということもあり、本当に盛りだくさんですね。

久松: そうですね。盛りだくさんなのに、予算は去年と同じ(笑)。いろんなところでいろいろとやりくりをしながらやっています。

■東京国際映画祭のトップ、フェスティバル・ディレクターとしての役目とは

――ディレクター・ジェネラルを務めていた前任の椎名保氏からトップを引き継ぎ、新たにフェスティバル・ディレクターという肩書で心機一転。スタートを果たしたわけですが、この意気込みを聞かせてください。

久松: チェアマンとかディレクター・ジェネラルという肩書は、どこか俯瞰(ふかん)して見ているような印象がありましたが、僕は朝から晩まで常勤してスタッフの皆さんと一緒にやっているので、現場に近い感じですね。このフェスティバル・ディレクターという肩書は僕が決めたわけではないですが、ピッタリな呼び名だと思っています。

――久松さんはどちらかといえば現場主義?

久松: 自分で話を聞いて、ディスカッションするのが好きなんです。これまでも第1回の時のチケット部会や、途中で運営委員会に入ったりしたこともありましたけど、中に入って映画祭を指揮するのは初めてなので、分からないことも多い。だからスタッフの皆さんにいろいろと教えてもらいながら、自分のやりたい方向性を目指しているという感じですね。

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「東京国際映画祭」10月25日~11月3日開催、フェスティバル・ディレクター 久松猛朗氏


――若年層の開拓というのも大きなミッションのひとつではないでしょうか?

久松: 映画祭のビジョンのひとつとして「Enlightening ― 映画の未来の開拓」と掲げていますが、若手のクリエーターや将来の映画ファンをどう育てるのか、は大切なミッションのひとつですね。その一環として「TIFF マスタークラス」を実施します。今回、講師として坂本龍一さん、河瀬直美監督、『鋼の錬金術師』の曽利文彦監督、そしてカンヌ国際映画祭で監督賞を取っているフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督という4名を招いてお話をしていただこうと思っています。

――この夏休みには「TIFFティーンズ映画教室2017」も開催されたそうですが。

久松: 公募して集まった中学生23人を、4班にグループ分けをして。そこからディスカッションを重ねてもらい、実際にイチから映画を作るプロセスを体験してもらいました。最初はおずおずとしていた子たちもだんだんとああじゃない、こうじゃないというぶつかり合いのディスカッションを始めるんです。そのプロセスが本当に面白くて。これはきっと一生忘れられない経験となったんじゃないかと思っています。これは来年以降もぜひやりたいなと思っています。

――これをきっかけに映画に興味を持つ子どもたちも増えるのでは?

久松: ティーンズ映画教室に参加した23人に「将来、プロになりたい?」と聞いたところ、おずおずと手を挙げたのが10人くらい。何らかの形でその世界に行きたいと言ってくれていましたね。そうやって映画に興味を持ってもらうというのはすごく大きいかなと思っていて。
それからミュージカル映画特集を企画しました。いつ見ても感動できるような作品を、大きなスクリーンと大音響で、他の人たちと一緒に見るという体験を定期的にやっていくことが大切だと思うんです。お父さんやお母さんが子どもを連れくるとか、奥さんが旦那さんを連れてくるとか。その喜びを共有しあうことができる。一度の上映だけではなく、何度でも繰り返し上映する機会を設けることで、次の世代にバトンタッチされるはずです。優れた絵画や音楽は何度見ても楽しめるように、面白い映画は何度見ても面白いですから。

――最後に座右の銘を教えてください。

久松: いつも仕事をしている時には三つのPを頭に考えています。まずはプロアクティブ(能動的)。人がどうやったからではなく、まず自分がどうしたいのか。受け身にならないように考えたい。そしてプロダクティブ(生産的)。いろいろやっているとトラブルもたくさんあって、投げ出したくなることもあるんですが、生産的にトラブルを解決するためにはどうしたらいいのかを考えたいということ。そして最後はプロフェッショナル。成果物に対して責任を持って、そのために最大限の努力をしたいと思っています。自分ができているということではなく、自分に対する戒めとして、そうありたいと思っています。

【特集】「東京国際映画祭」(Yahoo!映画)>>

久松猛朗(ひさまつ・たけお)
1954年山口県下関市生まれ。78年松竹株式会社に入社。宣伝プロデューサー、映画興行部・番組編成担当等の勤務を経て86年にアメリカ松竹「リトル東京シネマ」の支配人となる。89年に東京へ戻り、興行部次長に就任。94年タイムワーナーエンターティメントジャパン株式会社に入社し、ワーナーブラザース映画の営業本部長となる。その後、松竹株式会社に再入社し、2001年取締役映画部門&映像企画部門を担当。03年に常務取締役に就任する。06年株式会社衛星劇場代表取締役社長を経て、10年ワーナーエンターティメント・ジャパン株式会社に再入社。ワーナーブラザース映画副代表となる。現在はマイウェイムービーズ合同会社代表。
座右の銘:3つのP(プロアクティブ、プロダクティブ、プロフェッショナル)

(取材・文/壬生智裕)

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