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『コウノドリ』は『モーニング』(講談社)連載中の漫画を原作としたTVドラマ。
医師でジャズピアニストでもある、鴻鳥サクラが主人公。「ペルソナ総合医療センター」を舞台に、「命」に向き合う医師たちと、妊婦および家族をめぐるヒューマン医療ドラマとなっている。

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『コウノドリ』(15年秋)の視聴率比と満足度


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前回の第1シリーズは2015年秋の放送。
決して大げさではないリアルな産科医療の現場を描き、大きな話題となった。今回も綾野剛が、真摯(しんし)に「命」に向き合う産婦人科医の2年後を演じ、松岡茉優(まつおかまゆ)・吉田羊・坂口健太郎・星野源・大森南朋ら豪華な共演者がドラマを盛り上げる。新たに古畑星夏・宮沢氷魚など、フレッシュな俳優も加わりパワーアップしている。

■前回の実績

第1シリーズ初回の視聴率は12.4%。途中一桁となることもあったが、第5話以降は11~12%と安定し、平均視聴率で11.5%とまずまずの数字を残した。

実は視聴率より、実際に見た人の満足度で好記録を残している。
データニュース社「テレビウォッチャー」が測定する指数で、初回の満足度が3.94。
ドラマの平均は3.6~3.7。しかもドラマの初回は、一般論として舞台設定の説明があるなど展開がモタモタしがちで、満足度は低めに出ることが多い。それからすると、同ドラマの3.94は驚異的に高い。

過去の例で言えば、視聴率でドラマの歴代2位を記録した『半沢直樹』は、初回から4.16と異様に高かった。しかし、これは例外中の例外。
『ドクターX』(2016年秋)初回は、『コウノドリ』と同じ3.94。2015年秋の『下町ロケット』初回は3.95と、そうそうたるドラマと肩を並べている。
ちなみに去年秋に大ブレークした『逃げるは恥だが役に立つ』初回は3.74だった。『コウノドリ』が当初から、いかに視聴者に支持されていたかが分かる。
しかも満足度は右肩上がりで、第4話で4.18、第9話では4.36という驚異的な数字を叩(たた)き出していた。

「毎回感動します」女性25歳(満足度5)
「小さな命に真摯に対する医師たちに頭が下がる」男性70歳(満足度5)
「命の大切さ、妊娠出産の大変さが本当に良く伝わるドラマ」女性36歳(満足度5)
「涙が止まらなかった」女性37歳(満足度5)

多くの視聴者が感動し、立ち止まって何かを考えていた様子が伝わる。
今回の第2シリーズ初回の満足度はまだ出ていないが、視聴率は12.9%と前回を上回った。大いに期待できる船出になっていた。

■初回の始まり方

第1シリーズから今回は2年の時間が経過している。
鴻鳥サクラ(綾野剛)は産婦人科医としての経験を積み、オープニングはかつての恩師・萩島勝秀(佐々木蔵之介)が勤める離島の小さな病院を訪れるシーンから始まった。
島の人の誕生から人生の終焉(えん)までを見届ける医師として、離島で医師を続ける萩島を見て、サクラの心に何かが宿り始める。

かつて研修医だった下屋加江(松岡茉優)は、産婦人科の専門医になっている。白川領(坂口健太郎)も新生児科の専門医になり、ともに「ペルソナ」で働いていた。
離島から戻り、サクラは助産師長の小松留美子(吉田羊)と、耳の聞こえない妊婦の出産を担当する。夫婦ともに耳が不自由なため、不安をできるだけ取り除けるよう、筆談や丁寧な応対で診察する。
一方サクラとは対照的に、冷静で現実をきちんと患者に伝える産婦人科医・四宮春樹(星野源)は、キャリアウーマンの妊婦を担当。クールで丹念に診察をし、生まれてくる赤ちゃんに心臓疾患があることを夫婦にありのままに伝える。
この振る舞いは、妊婦には一見冷たく見える。しかも夫が「大丈夫。俺も手伝うから」と言った瞬間、「手伝うじゃないだろ。あんたの子供だよ」ときっぱり夫をたしなめる。
必ずしも派手な作りではないが、一筋縄ではいかない現場の雰囲気がかえって確実に伝わってくる。

■変わるべき日本の現実

原作は鈴ノ木ユウの漫画『コウノドリ』。
興味深いことに、この作品は週刊「モーニング」に掲載されている。モーニングは男性向けの週刊漫画本。ここでヒットしたことは、とても意味深いと言えよう。

出産は"病気"ではないと位置付けられ、日本では保険が利かない。
無事に産んで当然、母は子供に献身的に愛情をたっぷり注ぐのが当たり前とされている。しかも不妊治療・妊娠・出産・子育てなどは、女性だけの問題というのが大半の日本人の意識だ。

それでも出産に立ち会い、育休を取る男性は増えている。保育園へ送り迎えをする父親の姿も当たり前になりつつある。
ところが子育てをしている父親は「イクメン」と呼ばれ、特別な存在になってしまう。欧米のパパ事情と比べ、大きな遅れをとっているのが日本の現状だ。

だからと言って、日本の男性が全て悪いわけではない。この国全体に蔓延(まんえん)する働き方や意識を変えるのは容易ではない。企業によっては、育休制度はありながら、とても取得できる雰囲気でない会社も少なくない。
女性にも大きなプレッシャーが存在する。
母親になった途端に、「よき母」を求められる。"妊娠ライフは楽しい"と思うのが当然。どんなに大変な時でも、"赤ちゃんに癒やされます"的な発言をしなければいけない雰囲気に満ち満ちている。

しかし実際には、置かれた状況は個人個人異なる。周産期という一定の期間に限っても、予期せぬさまざまな問題が起こる。それら全てを自己責任として、母親一人の頑張りで突破することが期待されているが、時には弱音を吐いたり「つらい!」と言ったりしてはいけないのだろうか。これでは本当に楽しんで出産・子育てはできない。個別の事情を包含する多様な体制が、社会にはもっともっと求められる。

■進化するテーマと表現

ドラマのホームページには、「命が生まれるという奇跡とは・・・その命を育て、生きることとは・・・」という記述がある。
どうやら制作陣は今回、「生まれること、生きることは奇跡なのだ」と美しく語るのではなく、「現実には苦しみを伴うこと」「人によっては想像を絶する不安が伴うこと」「小さな命がいかにはかないか」など、厳然とある事実を具体的に描こうとしている。
こうした積み重ねにより女性の現実を知り、男性もパートナーや生まれてくる子供のためにできることがたくさんあることを、理解してもらおうと意図しているようだ。
単なる美しい命の物語ではなく、すべての人が「命」についてもう一度考える機会になればと考えているようだ。

この路線の中で、表現の部分にもさまざまな工夫がみられる。
まず台本は、数々の名フレーズが提示され、ダイレクトに視聴者の心に響くシーンが多い。そしてその感動は、アコースティックな音楽と卓越したオーケストラのアレンジ力のある音楽が支えている場合が多い。
また綾野剛のピアノ演奏もとても自然だ。
"吹き替え"と音楽監修を担当した清塚信也の美しいピアノの音色、さらにヴァイオリンとチェロとのトリオは、その素晴らしさだけで視聴者を癒やしてくれる。

以上のように前作に続く新シリーズは、確実にパワーアップしている。
視聴者の心を揺さぶり、日本の社会を変える一歩となる可能性を予感する。

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文責:次世代メディア研究所

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