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 今年で第30回を迎える東京国際映画祭(10月25日から11月3日の10日間開催)。そんな記念すべきメモリアルイヤーに、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員を務めるなど、世界で活躍する映画監督・河瀬直美が参戦する。(※河瀬直美さんの「瀬」の字は旧字体。)
今年公開された『光』が、いま一番海外に発信したい監督にスポットを当てる「Japan Now」部門の一作品として上映されるほか、次世代を担う映画人に向けたマスタークラスを開催。"国際化"という意味では、映画祭にとって大きな存在となるであろう河瀬監督が、東京国際映画祭参加への思いや、いま日本映画界が直面している課題などについて語った。

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河瀬直美 監督作品『光』を「Japan Now」部門で上映


【特集】「東京国際映画祭」(Yahoo!映画)>>

バックナンバー:【インタビュー】東京国際映画祭、今年のみどころ......大人から子どもまで参加交流できる一大フェスティバル

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河瀬直美 監督作品『光』を「Japan Now」部門で上映
(c)2017"RADIANCE"FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE


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■外からみた東京国際映画祭

――カンヌを始め、世界各国の映画祭で受賞されたり、審査員を務めたりされています。東京国際映画祭にはどんな印象をお持ちだったのでしょうか?

河瀬:初期のころは日本の映画会社さんの新作発表会みたいと言われていましたよね。そこから本当の意味でのインターナショナルになっていくには、いま世界でどういう映画が作られていて、どこの国の映画産業が熱いかということもプログラムをみるだけでわかるようになるべきではと思っていました。それがここ10年ぐらいで、国際化に向かって舵(かじ)を切り始めたという印象を受けています。

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東京国際映画祭(10月25日から11月3日の10日間開催)
(c)2017 TIFF


――今年、自身の作品が上映されることについてはどう思われたのでしょうか?

河瀬:声を掛けていただいた(プログラミング・アドバイザーの)安藤(紘平)さんは、私が20年ぐらい前にインディペンデントでドキュメンタリー映画を作っていたときに
精力的に作品制作をされている作家さんでした。作り手の目利きというのは信用ができます。国際映画祭って、普段観ることができないような映画を上映したり、過去にヒットした作品を再度上映する場合は、監督がティーチインして作品の理解を深めたりすることに意義があると思うんです。その意味では「Japan Now」という部門で上映されるのは意味があることだと思います。

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左から、安藤紘平(「JAPAN NOW」部門プログラミングアドバイザー)、河瀬直美監督、久松猛朗(東京国際映画祭 フェスティバルディレクター)
(c)2017 TIFF


 でも、本当だったら「Japan Now」は新人監督の作品を紹介する場だったら一番いいんでしょうけれど、見つけられないんでしょうね。私も「なら国際映画祭」のコンペで新人監督を日本で見つけようと思っても見つけられない。みんな才能を見つけようとお金を出し始めているのですが、現状は難しい。お金があって脚本が書けても、映画を撮ることってある種のカリスマ性、形としてできあがるまであきらめない信念が必要なんです。そこまでできる人材が少ない。アジアでも韓国や中国は若手監督のハングリー精神は日本人のそれを越えています。日本はもっと信念のあるハングリーな若手を求めています。

■若い映画人を育成するために

――その意味では今年、河瀬監督はマスタークラスを開催しますよね。

河瀬: 私がどういう作品を作ってきたかを話すところから始めなければいけないのですが、長くても1~2時間ぐらいしかできない。それだけではどうにもならないですよね。本当に若い人を育てるつもりなら、もう少し長い時間セッションして、近い距離で若者たちから熱いトークを仕掛けてもらう仕組みが必要かなと思います。

――今回マスタークラスを開催することによって、またいろいろな提案ができるかもしれませんね。

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東京国際映画祭(10月25日から11月3日の10日間開催)
(c)2016 TIFF


河瀬:そうですね。例えばカンヌ国際映画祭もレッドカーペットという印象しか日本には伝わっていないかもしれませんが、学生映画部門や短編部門・シネフォンダシオンでは若手育成を積極的にやっているんです。そこのディレクターや関わっているスタッフの人たちが世界の優秀な人材を集めてパリのレジデンスで映画を作ることにいろいろアクセスできる形をとっています。こういう試みを東京国際映画祭でもやれば、東京の映画祭で育ててもらったという若手監督が世界中に生まれる。これは少人数でもできます。10年、20年のサイクルで人材が育っていけば、その人たちの作品が映画祭に帰ってきます。

 東京国際映画祭が、日本の地方でがんばっている映画祭とパートナーシップを結び、どちらが優劣じゃなく、オールジャパンとして世界に発信できるようなプロジェクトを作ってもいいかもしれません。カンヌのレジデンスのような話を、東京を中心の事務局として、奈良や福岡、北海道などの地方都市で受け入れて一本の映画を作るみたいな。莫大(ばくだい)な労力はかかりますが、とても意義があることだと思います。

■"女性"というキーワードは世界のトレンド

――今年は「Japan Now」で蒼井優さん、安藤サクラさん、満島ひかりさん、宮崎あおいさん(宮崎の「崎」は正式には「たつさき」)を「銀幕のミューズ」として取り上げるなど"女性"というキーワードも浮かびあがってきます。

河瀬:普段あまり男とか女とかを意識していないのですが、カンヌでも女性の映画人を育てようという動きがあります。3年ぐらい前からトップスポンサーにケリングが入って、女性の映画人のための部門を設けたり、参加女優さんも「女性の映画人」という発言をあえてされています。シンガポール国際映画祭やドーハ国際映画祭のトップも女性であり、女性の映画人にスポットを当てようという国際的な空気を、安藤さんは感じとってプログラミングしたのかなと思いました。うちの現場は女性が多く、ジュリエット・ビノシュは「直美の現場は女性の映画人を育てている。すごく好感が持てる」って言ってくれたりもしています。

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河瀬直美 監督作品『光』を「Japan Now」部門で上映


――ビノシュと言えば、河瀬監督はビノシュと永瀬正敏さん主演で『Vision』(2018年公開予定)という映画を撮られるという報道がありましたが、こういった魅力的な座組も、商業ベースの映画作りだと困難は多いのではないでしょうか?

河瀬:私も枕を涙で濡(ぬ)らしながら「日本じゃ映画は撮れない」と思うことも多々あります。「お金は出します。でもこういう俳優さんを使ってね」という話を脚本の良し悪しより先にされると「まず脚本を読んでください」と強く思ってしまう。オリジナル脚本で勝負できないという土壌は、言い換えればプロデューサーが育っていないということなんです。大きな得を狙うだけではなく「損をしない、得をしない。でも良質な映画を作る」というプロデューサーが何人か出てくれば成立する映画監督はいるはずなんです。もう少し時間はかかると思いますが、未開のジャングルを切り開くように、自分なりにはチャレンジしていきたいと思っています。

【特集】「東京国際映画祭」(Yahoo!映画)>>

(取材・文・写真:磯部正和)
※河瀬直美さんの「瀬」の字は旧字体。
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河瀬直美(かわせなおみ)
奈良県出身。1997年に発表した『萌の朱雀』が第50回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞。その後も2007年には、『殯の森』がカンヌ国際映画祭にてグランプリを受賞。2013年には、日本の映画監督として初となる、カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員に選出されるなど、国際的に高い評価を受ける日本を代表する映画監督として活躍している。2017年『光』がカンヌ国際映画祭にてエキュメニカル賞を受賞、Blu-ray&DVDを12月6日発売。故郷奈良では「なら国際映画祭」をオーガナイズし次世代の育成に力を入れ、Narativeプロジェクトのプロデューサーを務める。今秋オペラ『トスカ』を初演出。来年11月23日よりパリ・ポンピドゥセンターにて、大々的な河瀬直美展が開催される。最新作『Vision』(ジュリエット・ビノシュ主演)を現在制作中。来年公開予定。
公式サイト www.kawasenaomi.com 公式ツイッターアカウント @KawaseNAOMI

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トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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