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TBS日曜劇場『陸王』は、『半沢直樹』以降の『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』『小さな巨人』など、小さく弱いものが大きく強いものに立ち向かっていくパターンのヒットドラマだ。"男社会の戦う男""不撓不屈(ふとうふくつ)の男"たちの熱い物語である。
今回の『陸王』も、倒産しかけの老舗足袋屋の社長が主人公で、時代の流れの中で大企業とどう戦っていくかが描かれる。しかも今回は、「人とのかかわり」を重視している。その意味で、老若男女問わず幅広い視聴者に訴求しそうな内容になっている。

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第74回ヴェネチア国際映画祭(写真:Splash/アフロ)


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■高い評価

初回の視聴率は14.7%。今期では『ドクターX』に次ぐ高視聴率でのスタートとなった。量的評価も十分といえよう。
特筆すべきは、内容に対する視聴者の評価。データニュース社「テレビウォッチャー」の満足度で見ると、TBS日曜劇場の一連の人気ドラマは初回から高満足度のものが多い。
『半沢直樹』(2013年夏)は、初回から4.16と異様に高かった。しかし、これは例外中の例外。『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年春)初回は3.64。『下町ロケット』(2015年秋)初回は3.95。そして今春『小さな巨人』の初回は3.72だった。
これらと比べると、今回の『陸王』初回の3.97は、『半沢直樹』には及ばないものの、他と比べるとかなり高く、平均視聴率18.5%となった『下町ロケット』をも上回った。質的評価は非常に高く、第2話以降の健闘が期待される。

■条件を整え、用意周到!

TBS日曜9時でヒットした作品は、用意周到に条件を整えた結果として成功したケースが多い。その意味で今回も可能性はかなり高い。

まず今回の主演は役所広司。
役所広司といえば、今や世界的な大俳優だ。NHKの大河ドラマには『獅子の時代』以降5本に出演。いずれも1990年代までの作品だ。
TBSでも『武田信玄』など、大型時代劇に3本出演している。これらも1990年代のドラマだ。
以後は映画での活躍が目立つ。『Shall we ダンス?』『失楽園』『うなぎ』などでは国際的にも高く評価された。『突入せよ! あさま山荘事件』『THE 有頂天ホテル』『それでもボクはやってない』『象の背中』『十三人の刺客』『最後の忠臣蔵』『日本のいちばん長い日』などは、大きな話題となった映画で、主要な役割を果たしている。今や押しも押されもせぬスーパースターだ。

次に脚本の池井戸潤。直木賞など数々の受賞歴を持つ小説家だ。しかも『空飛ぶタイヤ』『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』『花咲舞が黙ってない』『下町ロケット』など、作品が映画やテレビドラマとして大ヒットしている。

共演する出演者も興味深い。
ダイワ食品陸上部員を演ずるのは、いま人気上昇中の竹内涼真。役のため、実際に青山学院大学陸上部に半年間も練習参加するほど、ストイックな役作りに努めてきた。『ひよっこ』『過保護のカホコ』で今年大ブレークした若手俳優だ。
同じく人気上昇中の若手俳優・山崎賢人(※「山崎」の「大」は「立」が正式表記)。『デスノート』『好きな人がいること』などでブレークした。役所広司に体当たりの演技でぶつかり好評だ。今後の展開が楽しみな一人である。他にも風間俊介、阿川佐和子、志賀廣太郎、檀ふみ、など個性豊かな演技派たちが脇を固めている。

■初回の概要

埼玉県行田市にある足袋のメーカー「こはぜ屋」は、100年続く歴史ある会社だ。今は4代目宮沢紘一(役所広司)が引き継いでいる。
行田市は足袋製造産業が盛んな地で、かつては日本の足袋の8割をこの地で生産していた。ところが時代の流れの中、足袋の売れ行きは落ちる一方で、足袋の製造を続ける会社は数える程までに減っていた。
この厳しい現実の中、社長の宮沢はメインバンクの埼玉中央銀行に追加の資金融資の相談していた。なんとか受け付けてもらえたものの、担当の坂本太郎(風間俊介)から「将来のためにも新事業に踏み出さないか」と提案される。
たまたま娘に頼まれて訪れたスニーカー売り場で、あるきっかけをつかむ。それは、"裸足感覚"で走れる足袋のランニングシューズだった。
坂本に相談した結果、有村融(光石研)を紹介される。スポーツ用品店の店主で、ランニングインストラクターの資格も持つ。
有村からランニング走法とシューズの関係を教えられ、息子の大地(山崎賢人)を連れて愛知国際マラソンを観戦しに行くことになる。
大学の箱根駅伝時代にライバルだった茂木裕人(竹内涼真)と毛塚直之(佐野岳)は、実業団の選手になっていた。その両雄の対決とあり会場は賑(にぎ)わっていた。
しかし実際には、スポンサーからの強い要望に応えるため茂木は無理をして走っていた。その姿と衝撃のラストランを目の当たりにし、宮沢は決意を固める。それが「こはぜ屋」の存続を賭けた闘いの始まりだった。

■見どころ

とにかく主演・役所広司の演技が圧巻だ。
細かい心情の描写や微妙な表情の作り方など、細部まで繊細に演じられ、一つ言葉を発すれば全てが深い意味を持ち、セリフが心に突き刺さってくる。『小さな巨人』での香川照之の顔芸と白熱した演技もスゴかったが、「こはぜ屋」の役所広司は「誰もが宮沢を愛してしまう」ような魅力を振りまいている。
こはぜ屋の縫製課のリーダー・正岡あけみ(阿川佐和子)も特筆すべき存在だ。責任感・寛大さ・「こはぜ屋」愛、そして元気を振りまく演技も、実にすがすがしくて気持ちが良い。

音楽演出は、シンセオーケストラをベースに至ってスタンダードな演出だが、この控えめな感じが、役者たちの演技と美しい行田の街を引き立てている。

小が大に挑戦するパターンは、この枠で今まで何度も放送されたが、今回は「新しいことをするための一歩を踏み出す勇気」「人との関わりを大切にするあたたかさ」「古き良きものの大切さ」が前提になっている。
強烈なメッセージを押し付けてくるタイプではなく、多くのことを感じ取れる奥ゆかしさがある。年齢、性別問わずに、たくさんの人にぜひお勧めしたい。

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文責・次世代メディア研究所

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