「若いころからいつかは参加したいと思っていた」と滝田洋二郎監督作品への出演を熱望したという俳優・西島秀俊。念願かない、映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』(11/3公開)で滝田組を経験した西島が演じるのは、絶対味覚を持つ天才料理人。現場での撮影秘話や、共演者の印象などを語った。
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■調理のシーンは、ほぼ吹き替えなしでの撮影

――西島さんが演じた山形直太朗という役柄についてどんなアプローチをしたのでしょうか?
西島:当時の満州という土地に夢と希望を持っている日本人がたくさんいて、直太朗も自分の才能を開花するチャンスを与えられた一人だと自覚していたと思います。でも、その素晴らしい場所が、多くの犠牲のもとに成り立っていることを知り、苦悩する。ある意味で満州編は、いろいろな障害がありつつも、夢に向かって進んでいく青春物語のような側面もあると思ったので、そういった部分を意識しました。
――1930年代の人物を演じるうえで、意識されたことはありますか?
西島:セットや美術が素晴らしく、衣装もすてきだったので、そういったものにたくさん力をお借りして時代を感じとりました。

―― 一流シェフという役柄でしたが、調理シーンも素晴らしい手さばきでした。
西島:僕は料理をまったくしないので、調理の先生には本当にお世話になりました。「シンプルなフレンチのソースを作ります」と言われて、自分でも作ってみたのですが「こんなに手間がかかるんだ」って驚きました。それでも、僕は調理しやすい洋包丁だったのですが、(満州パートで共演した)西畑(大吾)くんや兼松(若人)くんは中華包丁や和包丁を使っての演技だったので、大変だったと思います。相当練習して臨んだようです。
――調理のシーンは、ほぼ吹き替えなしとお聞きしました。
西島:そうですね。最初は吹き替えも結構入る予定だったようなのですが、現場で「本人でいこう」というシーンがほとんどでした。ただきれいにさばこうというよりは、丁寧に調理しようというキャラクター設定をしていただいていたので、その部分ではやりやすかったです。
■「いつかご一緒できれば」と熱望した滝田組

――滝田監督からは直太朗という人物を演じるうえで、どんな演出があったのでしょうか?
西島:人とぶつかったり悩んだりすることがあっても、直太朗の本質は、料理が好きでおいしいものが好きで、料理に携わるよろこびだけは失わない人だというところを手放さないで演じて欲しいと言われました。
――滝田組でのお仕事を熱望していたとお聞きしましたが、きっかけはあったのでしょうか?
西島:リアルタイムではなかったですが、『コミック雑誌なんかいらない!』(1986)を見たとき「なんだ、この映画は」という衝撃があり、その後も『僕らはみんな生きている』(1993)や『眠らない街 新宿鮫』(1993)は本当におもしろくて、いつかご一緒できたらと思っていたんです。『新宿鮫』の鮫島とかやってみたいです。
――念願の滝田組はいかがでしたか?
西島:スタッフがまず盤石なので、安心感がありました。多少とっぴなことをしてもまったく動じずに受け止めてくれるんですね。あと感じたのは、滝田監督は映画に対して素直な方だなと。過去や慣習に縛られず、おもしろいと思ったものを撮るという感覚はすてきだなと感じました。スタッフの方々は、僕が20代でご一緒した方も多く、久々にお会いしたので、ちょっとでも進化したところを見せたかったのですが、ぜんぜんダメでした(笑)。
■二宮和也は、現代的かつ古風な感覚を持つ俳優

――二宮和也さんや綾野剛さん演じる現代パートとは、撮影時期も含め、ほぼご一緒することがなかったとお聞きしましたが、出来上がった作品をご覧になってどんな印象を受けましたか?
西島:(満州編で)僕らが演じた過去の気持ちが、現代にちゃんとつながっていてほしいという思いがありました。出来上がりをみて、二宮くんが見事に過去と現在をつなげてくれる演技をしていたので、すごくうれしかったです。それは二宮くんという俳優が持っている、すごく現代的な感覚と、どこか古風なところが、うまくマッチしていたのかなと感じました。
■宮崎あおいは「ケタ違いに役の心情を理解する人」

――満州パートでは、宮崎あおいさんや竹野内豊さんとの共演もありました。
西島:宮崎さんが20代前半とかで共演して以来だったのですが、当時からケタ違いに役の心情を理解する人で、より大人になってその部分が深くなっていると感じました。夫婦役だったのですが、彼女が絶妙な距離感でいてくれるので、僕は引っ張っていただいたという感じです。心地よい位置、心地よいタイミングでセリフを言ってくれるので、とても助かりました。山形家の空気を作ってくれたのは宮崎さんですね。竹野内さんも、直太朗の一番の対立軸としていてくださったおかげで、関係性が成立することができました。またぜひご一緒したいです。(※文中の宮崎の「大」は「立」が正式表記。)

――この作品に出演して"食"に対する考え方などは変わりましたか?
西島:変わりましたね。とにかくすごくこだわりを持たれているなと。同じフレンチでも、フランスにあるレシピをそのまま持ってくることが正しいと思っている方もいれば、新しい発想で料理を考えるという方もいる。日本の食材に合わせてアレンジするんだという考えの方もいました。料理の奥深さを感じましたし、普段お店で食べている料理なども「もっとお金を払わないといけないんじゃないか」と思ってしまいました。
―― 一度食べた味は絶対忘れないという"麒麟の舌"を持つ人物を演じましたが、西島さんにとって再現してほしい料理はありますか?
西島:祖母がよくおはぎを作ってくれていたのですが、お店で買うものとはぜんぜん違う食感や味だったので、もう一度食べたいです。祖母のおはぎのことを考えると、平屋の家の感じとか、時計の「コチコチ」という音が嫌だったなとか、いろいろなことを思い出します。
――最後に座右の銘をお聞かせください。
西島:「回り道を恐れない」。もともと不器用なタイプで、一足飛びに行けるタイプではないのですが、すっ飛ばして進むよりも、一歩一歩進んでいきたいです。

1930年代の満州で、天皇の料理番が考案した、幻のフルコース。歴史に消えたレシピの謎を追うのは、どんな味でも再現できる、絶対味覚=麒麟の舌を持つ料理人。天才的な味覚を持つ男が料理によって過去を辿っていくという、斬新な発想のミステリー。最後の一皿に隠された、壮大な愛とは?
『母と暮せば』(2015)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した二宮和也。その最新主演映画で初タッグを組むのは、『おくりびと』(2008)でアメリカのアカデミー賞外国語映画賞受賞という日本映画史上初の快挙を成し遂げた名匠・滝田洋二郎監督。共演は、西島秀俊、綾野剛、宮崎あおい、竹野内豊など豪華俳優陣。企画は秋元康。
映画『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』は2017年11月3日(金・祝)公開。
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(取材・文・写真:磯部正和)
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西島秀俊(にしじまひでとし)
1971年3月29日生まれ、東京都出身。1994年に映画デビュー、2002年には北野武監督の『Dolls ドールズ』に主演。その後も『サヨナライツカ』(2010)『劇場版 MOZU』(2015)と、数々の映画作品に出演し、存在感を示している。待機作に、木村大作監督の『散り椿』(2018年公開予定)がある。座右の銘は「回り道を恐れない」。
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