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"SF×不倫"で話題となっている漫画『あげくの果てのカノン』。
描いたのは、自身は恋愛経験のないオクテの漫画家・米代恭(よねしろきょう・25歳)。
舞台は異星人が地上を侵略しつつある近未来の東京。物語の主人公のいちずな思いが不倫へと暴走していく、"狂気と純愛"の物語だ。
「スピリッツ」で連載されると瞬く間に話題作となった。読む人を没頭させ、単行本は売り切れ続出。重版を繰り返すほどのベストセラーだ。

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イメージ画像(写真:アフロ)


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■物語の舞台

主人公かのんが幼い頃、異星人の最初の"襲来"があり、国会議事堂は壊滅した。以来、東京の都心部は常に"雨"が降っており、不定期に異星人が"襲来"を繰り返している。
その影響で東京都心は廃虚と化し、一部の住民は地下を生活拠点としている。ただし比較的安全な地域で暮らす多くの住民は地上での生活を続けており、"襲来"時のみ地下へ避難している。

異星人の俗称は、その形状から「ゼリー」。詳しい生態は解明されていないが、雨により活性化している。彼らの心臓を破壊することで、地上は一時的な"晴れ"を得られる。また、ごく一部の限られた人間に対してのみ有効だが、人体にゼリーを移植する"修繕"技術を施すことで、通常であれば死亡するような肉体的損傷からも回復できる。
ただし漫画の中では、現在の"修繕"技術は不完全で、肉体的な損傷が回復する代償として、「心変わり」と呼ばれる急激かつ大幅な精神変化が起きるようになっている。この「心変わり」により、"修繕"された人物の食や恋愛などの好みが大きく変化するので、周囲とのトラブルを引き起こすケースも少なからず見られる。

■物語の概要

物語の主人公・高月かのんは地上民。
パティスリーで働く23歳で、高校時代のバスケ部で先輩だった宗介に思いを寄せていた。ところが既に妻となる初穂と付き合っていたために、振られるという経験を持つ。

その宗介は、地球を異星人から守る"ヒーロー"。ところが「心変わり」でかのんに好意を示すようになってしまった。ただし宗介の妻・初穂は「心変わり」を防止する研究をしている。つまり夫・宗介が好意を示し始めた主人公・かのんには敵意を抱いている。
ちなみにかのん自身はといえば、不倫や略奪愛を望んではおらず、大いに戸惑っている。

そう、物語は複雑骨折をした男女の三角関係のお話で、しかもSFラブ・ストーリーとなっている。
芥川(あくたがわ)賞作家らは絶賛の言葉を寄せている。
「ド天才だと思った」(村田沙耶香)
「意外性と面白さを兼ね備えた物語設定とハイセンスな表現。はっきり言って凄い才能」(中村文則)
「相手の中にいる自分の存在が変わっただけで、自分はずっと自分なんじゃないか。きっとそうだ。ずっと感じていた疑問を晴らしてくれたこの作品に感謝と嫉妬と敬意を」(尾崎世界観)

■番組の前半

『セブンルール』今回の主人公は、その『あげくの果てのカノン』の作者・米代恭。
不倫する女性を主人公にした異色かつ衝撃的なSF恋愛漫画を描きながら、米代自身は実は恋愛に"全くのオクテ"。「本当に私、何でこんなに恋愛から遠いのに、恋愛漫画描いているんだろう」
それでも、真っ白な紙の上に衝撃の恋を描き出す異才である。

そんな彼女に密着したカメラは、彼女の創作活動や日常生活をとらえた。
普段は祖母の家で二人暮らし。漫画の執筆をするのは築43年のアパートの一室。その質素な部屋で、考えに詰まると雨にもかかわらず、近所中を徘徊(はいかい)する。「歩いて、もうちょっとイメージを固めるみたいな感じです」月に1回、1話30ページ以上の連載を、約10日間缶詰め状態で書き上げるが、10時には寝て夜明け前の4時には動き出している(ルール1「早寝早起き」)。作業効率を保つためだという。食事や衣服も極めて質素で、今どきの女子らしさは全く見られない。

■漫画家になるまで

小学生の時は友達がいなかったが、絵を描いていると同級生たちが寄ってきた。
高校はオタクが多い学校らしく、友人とオリジナルストーリーを作っては漫画を描くようになっていた。周りの友達から「続きはどうなるの?」と聞かれるのがうれしかったという。
高校3年生の時に漫画家になりたいと思うようになった。その後、大学受験をして美大に入学した。ところが応募した新人賞で最終選考まで残り、担当編集者がつくようになった。大学を辞めて漫画家として歩き出したのである。

漫画家としての足跡は、2012年にアフタヌーン四季賞佳作を『いつかのあの子』で受賞し、短編デビュー。そしてウェブで連載した『ふぞろいの空の下』で長編デビュー。続く2013年に『おとこのことおんなのこ』と改題して単行本を発売。14年にも『僕は犬』を発売。そして15年に『あげくの果てのカノン』の連載を始め、現在に至っている。

■仕事の仕方

そんな彼女を仕事上でサポートするのが担当編集者の金城小百合。『あげくの果てのカノン』も彼女の提案で生まれた作品で、自身の恋愛体験を語るなどして、恋愛が苦手な米代にヒントを与えている。つまり二人三脚により作品は出来上がっている。お互いに「友達じゃなくて仕事上の付き合い。作品が売れているから仲よくいられる」と認め合う。そんな漫画家と編集者の微妙な関係性にもカメラは迫る。現実には恋愛にオクテな漫画家が、ハードな恋愛漫画を描けるのは、こうした仕事のやり方にある
(ルール2「他人の恋愛を漫画に生かす」)。
それにしても、米代は自身が恋愛と無縁なのに、なぜ恋愛漫画を描き続けるのか。かなり変わった漫画家としての成功を支えるのは、日常生活の送り方かもしれない。
ルール3「お昼ごはんはファミチキと納豆巻」・ルール4「靴は1足しか持たない」・ルール5「遊びの約束は月3回まで」などは、やれと言われてもなかなかできないが、漫画家生活としてはかなり合理的だ。

そして、"狂気と純愛"の物語でベストセラーとなったのには、ルール6とルール7あたりに秘密がある。相当な変わり者を取り上げて、表現の実に深いテーマに届いている『セブンルール』。この世界に興味を持つ方には必見の一作と言えよう。

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文責・次世代メディア研究所

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