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10年ほど前、織田裕二主演『県庁の星』という映画がヒットした。
県庁のキャリアである主人公が、人事交流研修でデパートに出向した。ところがそこは惨憺(さんたん)たる状況で、主人公は立て直しに奮闘するが、当初は全く相手にされず、状況はどん底に落ちる。それでも努力する内に次第に市場の実態を理解し、ついにデパートの経営を改善し、最高の形で研修を終えることになる。県庁に戻った主人公は、自らの希望で生活福祉課に異動し、自身の出世より県民の生活を重視した提案をするようになるというストーリーだ。

サムネイル

熱海の街並み(ペイレスイメージズ/アフロ)


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当時は小説や映画の中で"お役所ヒーロー"が言われたが、今や時代は大きく変わった。
小さなお役所ながら、知恵と努力でじり貧の地域を救う市町村で働く公務員が各地に出て来ている。まさに"お役所ヒーロー"の時代なのである。
11月19日(日)放送の『応援!日本経済 がっちりマンデー!!~日曜に勉強! 月曜から実践!~』は、孤軍奮闘で"おらが町"をガッチリさせる英雄の特集だった。

■一番貧しい村がよみがえった!

番組最初のコーナーは、岐阜県で一番貧しい村をよみがえらせた最強のお役所ヒーロー、地域振興課の桂川憲生課長だった。
名古屋から車で2時間かかる岐阜県加茂郡東白川村は、人口2336人の小さな自治体。そこで桂川課長は、公務員なのに地元企業のアドバイザーとして、住宅の販売窓口を役場で始めてしまった。つまり役所が住宅を販売する仕組みを作り、大繁盛させたヒーローなのである。

村は総面積の90%が森林で占められている。
産出している「東濃ひのき」というブランドの木材は、名古屋城にも使われている高級木材だ。「木肌がピンク色で、非常に粘りがあって、強度が高い木材」と評判が高い。
そのひのきをふんだんに使った住宅が今、桂川課長の仕掛けによりドンドン売れ始めている。

そもそも課長は07年に、役場が経営するCATV「ほっと茶んねる」の担当になった。自らも出演して、地域の情報化に努めていた。同時にそこで立ち上げたCATVのインターネットサイトで、地元の山で育った葉っぱや木を載せたら、名古屋の高級料亭でたくさん売れるようになった。
これを見た工務店組合から「家も売れないか?」と相談を持ち掛けられ、木造住宅の販売サイト「Forestyle」を立ち上げたのである。

実は地元の工務店は、全国規模の大手ハウスメ―カーに押され、仕事が激減していた
「絶対に行きつく所が来る」
「じり貧になってしまうとうすうす感じていた」
10社ある社長たちは、危機感を募らせていた。最盛期には村全体で年間70軒の木造住宅を建てていた。ところが09年は年間14軒までに減っていたのである。その結果、東白川村は岐阜県の所得番付で最下位となり、「貧しい村」という不名誉なレッテルを張られてしまったのである。

この危機を何とか打開しようと、桂川課長はサイトに家を木で建てるシミュレーションを設けた。
さらに、庶民にとって"一生に一度の家"を、安心・納得して買うための秘策を導入した。「入札制」である。
まずサイトでは、幾ら位のどんな家が欲しいのか、客の要望を聞く。その内容を役所が10の工務店へ開示する。各店は自らの知恵・工夫・努力で設計図と価格を提示する。客が納得する店が受注できる仕組みだ。かくして"よりリーズナブルで良質な家"の販売システムが動き出し、中には予算より800万円も安く買えたというケースも出て来た。
そして年々、評判が広まった。この取り組みが始まる前の09年には14軒しか売れていなかった木造住宅が、16年には倍以上の30軒に増えたのである。

■ふるさと納税のヒーロー

番組が紹介した2人目の"お役所ヒーロー"は、山形県天童市・ふるさと納税推進室の沼澤賢次氏。 
ふるさと納税とは、応援したい自治体へ寄付することで、税の控除を受けることができる仕組み。寄付をした自治体から魅力的なお礼の品をもらえることが魅力になっている。

天童市の場合、ポイントは名産品の将棋の駒のストラップ。
ふるさと納税のお礼の品のおまけとして付いてくるが、駒の裏側に好きな文字を彫ってくれるのがミソ。名字や家族の名前を次々に集めたくなり、しかも伝統工芸を支援しているという"寄付の実感"がわくため、これを始めてから天童市のふるさと納税額は急伸した。
スタート前は10万円程度だったが、16年には33億5800万円と驚くほど増え、天童市の財政に大きく貢献するようになった。
同時に地元伝統工芸の現場も仕事が急増し、市全体の生産額も13年の1億円が15年には3億円と3倍になった。市の財政だけでなく、地場産業も一挙に盛り上がったのである。

■テレビ業界の"困ったら熱海"

静岡県熱海市には、TV業界が神とあがめるお役所ヒーローがいる。観光経済課の山田久貴氏である。
テレビ番組のロケ先の調整や紹介をしてくれる方で、年間100を超えるバラエティ番組が、熱海市でロケされている。

日本では今世紀に入って、フィルムコミッションという映画・テレビドラマ・CFなどのロケーション撮影を誘致し、屋外撮影がスムーズに行われるように支援する非営利組織が全国各地にできている。
しかし熱海の場合、バラエティ番組など他の地域が手を出していない番組の誘致に積極的。しかも役人が直接やってくれるため、普通では手間暇かかる案件もスムーズに了解が取れる。人間関係と信頼感の違いだという。

これによる熱海市への経済効果は、直接的にはロケスタッフやタレントの宿泊・食事で、地元にお金が落ちる点だ。さらに番組を見た人が町を訪れる、つまり観光客の増加が大きい。山田氏の調整前は年間250万人いなかった観光客が、16年には301万人と20%増となった。
「"困ったら熱海"というキーワードを、制作者の皆さんには申し上げている」と山田氏は言うが、今やバラエティ番組の現場では、まさにいざという時の熱海が定着しているという。

役所は法令をきちんと守って公平にやることが求められる。しかも個人がポーンと突っ走ると、「あいつ何やってんだ」という話になり易い。そんな状況をかい潜って、結果として地域の活性化に貢献する役人が出て来た。彼らの発想や仕事の仕方には、一般企業でも通じる"仕事の仕方のコツ"が詰まっている。
仕事で大きく飛躍したいと考えている方には、必見の番組と言えよう。

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文責・次世代メディア研究所

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