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2011年にアメリカ『TIME誌』が選ぶ「世界の発明50」に選ばれた研究がある。
Possessed Hand(ポゼストハンド)と呼ばれる、コンピュータで人の手を動かす技術だ。電気信号で、指の動きを自在に操ることができるシステム。発明したのは東京大学工学部大学院在学中だった玉城絵美(33歳)だ。27歳の時の快挙で、"未来のノーベル賞候補"として注目されている。

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タッチパネルを操作する日本人女性 (写真:アフロ)


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■プロフィール

1984年・沖縄生まれの玉城は、大学卒業まで沖縄に留まり、その後筑波大学で修士課程、米国ピッツバーグのディズニー研究所でインターンを経て、東京大学で博士課程を修了した。東大では成績優秀者などに与えられる"総長賞"を受賞し、総代も務めたほどの才女である。

大学院在学中に彼女が開発した「ポゼストハンド」は、人の手をロボットにしてしまう革新的なツール。「世界の発明50」に選出されたが、さらにノーベル賞を受賞した天野浩や山中伸弥と同じように、国立の研究機関が選定する「ナイスステップな研究者」にも選ばれ"未来のノーベル賞候補"として期待を集めるようになった。

2012年にH2L株式会社(H2L Inc.)を創業。社名は「Happy Hacking Life」の略で、Body Sharing(身体の体験共有)の実現に向け、工学・認知心理学・脳科学など多方面から研究を行っている。
2013年、早稲田大学人間科学学術院の助教授に就任。
2015年には、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」準大賞を受賞した。今は大学での教育と研究、内閣の専門調査会への出席、創業メンバーでもあるベンチャー企業での研究開発などで、多忙な毎日を送っている。

■活動内容

彼女が力を入れ、取り組んできたのはHCI(Human-Computer Interaction)という分野。
人とコンピュータの関わり合いや相互作用を意味するが、「人の心理的身体的特性」「コンピュータ技術」「社会環境」などの関係を総合的・複合的に扱い、人がコンピュータをより良く利用するためには、どのようなデザインや考え方が必要かを研究するものだ。
その研究成果の1つポゼストハンドは、コンピュータから電気信号を手の筋肉に送ることで指先の動きを自由にコントロールできるというものだ。168パターンくらいのパラメーターを調整すると、自分が動かそうとしなくてもコンピュータからの指示で、手指の16関節が自在に動くようになる。手にある関節は、手首を含めないと18関節で、これで実際の手の動きをほとんど制御できるようになる。

これにより扱ったことのない楽器でも、初見で演奏することが可能となる。楽譜を意識しなくても、勝手に指が動くので、簡単な曲だったら初心者でもだいたい弾けるようになる。
さらにその技術を生かして、2015年に発表したのがUnlimited Hand(アンリミテッドハンド)。ポゼストハンド同様に、コンピュータで手の動きを制御するだけでなく、逆に手からコンピュータへ動きを入力し、仮想現実(VR)の中の手を自由にコントロールできるようになる。
この研究は既に製品になっている。「あなたの手が世界を動かす。」をキャッチコピーとした「FIRSTVR」だ。世界初の筋変異センサーを内蔵したコントローラーで、VRのアプリをコントロールして楽しむものだ。
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)での没入感と、腕にまいたコントローラーが触覚を生み出し、実際にその場でやっているような臨場感が生み出されるという。

■セブンルール1~3

大学・内閣の専門調査会・ベンチャー企業と、とにかく玉城の毎日は忙しい。そんな多忙を極める才女が決めている日常の決まり(セブンルール)は興味深い。
ルール1は「1日の仕事を数値化する」。
彼女が独自に編み出したHWV(ハッピーワーキングバリュー)という計算式。1日の仕事の件数×所要時間×重要度×緊急度で総合指数を出す。これを毎日割り出すと、仕事の効率の良い日と悪い日の傾向が見えてくる。
「本当にやるべきことを精査して、どのくらいのパフォーマンスが出せているかっていう評価もできる」という。なるほど、天才"リケジョ"ならではのユニークな発想である。

ルール2は「わからないことは人に頼まない」。
研究の性質上、さまざまな分野にまたがる共同研究が多い。ただし、ものを依頼する際に「どのくらいのタスク量なのか、全くわからないのは失礼にあたる」と考えているそうだ。「多少なりとも勉強するようにしている」というが、これではますます多忙になってしまいそうだ。

ルール3は、「ボロボロのときは明るい服を着る」。
夕方まで早稲田で准教授としての仕事に追われたある日、そこからベンチャーのH2Lに移動して打ち合わせをしている時、彼女は白のシャツからカラフルなワンピースに着替えていた。
「つらい」と弱音を吐く代わりに、明るい服に着替える。研究者として、女としての意地だという。

彼女を研究へと書き立てる原動力は、幼少期の闘病体験にある。
沖縄県北谷町に生まれ、小さい頃から数学や理科が大好きだった玉城。実は幼い頃から青春時代にかけて、病に悩まされていた。
「先天的な心疾患のため長期入院をして、つらい時もあった」という。外の社会と直接関与できなかった経験から、「実際の体験を共有したい」と思うようになった。他者と作用し合ってインプット・アウトプットがあり、フィードバックが返ってくることは、生物が得られる初期の快楽。まずは手の動きを伝達するものを作ろうと考えたのである。

■セブンルール4~7

ルール4は「文鳥の匂いを嗅いでリラックスする」。
ルール5は「寝る前に最低1冊本を読む」。
ルール6は「血糖値を上げるために甘いものを配る」。
ルール7は「できるだけ引きこもる」。

どれもこれもユニークなルールばかりだが、最後の"引きこもり"が最大のキーワードのようだ。
10代までの入院経験から、"引きこもり"の良い面とつらい面を知った玉城。そのプラスの側面を拡張させ、マイナス面を最小化する。これが本人にとっても、多くの人々にとっても幸せな未来につながると確信しているようだ。
そして、それを実現するために自らに課している「セブンルール」。史上初の日本人女性ノーベル賞受賞者となる可能性の高い彼女のドキュメントは、研究者ではなくとも何かを実現したいと考えている人には、一見の価値がある番組である。

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文責・次世代メディア研究所

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