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「本マグロの大トロ」 600円
「大盛り甘エビ」   300円
「上トロとうにの軍艦」400円

一般的に回転寿司というと、「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」「元気寿司」など、100円を中心とした"安さ"で勝負する大手チェーンを想像される方が多いかもしれない。しかし、冒頭に紹介したお寿司(すし)のように、少し値は張るものの、"ネタの良さ"で勝負するお店がある。
11月16日放送の『カンブリア宮殿』(テレビ東京系列:毎週木曜夜10時~)では、そんな"グルメ回転寿司"のお店「がってん寿司」が主役だった。海のない埼玉県を中心に、関東で135店舗を展開している。お寿司(すし)の業界では、先述の上位5社の大手チェーンに次ぐ第6位の売上を誇っている。

サムネイル

【世界の街角から】都民の「台所」築地魚市場(2000年10月)(写真:Fujifotos/アフロ)


「がってん寿司」が5社の大手チェーンに次ぐ第6位の売上を誇る理由>>


■「安さ」と「食空間」と「味」

"手の届くぜいたく"をコンセプトとする「がってん寿司」は、質の高いネタをできるだけ安く仕入れることを重要なテーマにしている。
それを実現するために行っている"特徴的な行動"がある。築地でセリがほぼ終わってしまった時間に市場に向かい、"売れ残っている高級魚を安く買う"というスタイルである。仲卸業者の本音は、できるだけ高く売るということだが、「売れ残ってしまうぐらいであれば、値段を下げてでも売り切りたい」と考えるため、その最後の判断の瞬間を狙って買い付けを行っているという。こうすることによって、セリで取引される価格より、2割ほど下げて仕入れることができるというのだ。

一般的に飲食店では、料理そのものだけでなく、おしゃれな内装やプライベートな個室を用意するなど、ぜいたくな"食空間"を提供することで価値を高めようとしているお店も多い。しかし「がってん寿司」では、"食空間"よりも"味"へのこだわりをみせ、また前述の仕入れの工夫などを行うことにより、"可能な限りでの低価格"を実現しているように見受けられた。その結果、より多くの方に"手の届くぜいたく"を提供することができているのだ。

「がってん寿司」のグループ全体の売上は、2011年・235億円から2016年・373億円と、約1.5倍にジャンプアップしている。このようなお店が成長を遂げる背景としては、一般消費者の方で"味"にこだわる人が増えてきたことが一つの要因と言えるのではないだろうか。
筆者は一般社団法人日本味覚協会 に所属しており、「味覚診断」と称してお客様の味覚が良いか、悪いかをチェックさせていただく機会があるが、中には「味覚って別に悪くていいよね。安いものでもおいしく感じられるんだから」とおっしゃる方もいる。厳密には味覚感度の良さと嗜好性(しこうせい)の話は別問題ではあるものの、そのように考える方が増えていってしまうことに懸念と寂しさを感じていた。しかし「がってん寿司」のように、"味"にこだわるお店が急成長している状況を見ると、"安さ"や"食空間"よりも"味"を評価する方が着実に増えていっているのだと改めて感じることができた。

■従業員を「頼る」ことの重要性

「がってん寿司」では、2011年に最大の危機が訪れる。東日本大震災だ。
計画停電などの影響で営業できない日々が続き、また東北の漁港や物流網の被害で仕入れに影響も受け、店の売上が極端に減少した。
そんなさなか、さらに追い打ちをかける出来事として、当時社長であった兄が急逝。そこで急遽(きゅうきょ)、当時経理を担当していた妹の久志本京子氏が後継者となったのである。

カリスマ社長を失い、頼りにしていた従業員が次々と退職してしまっていく状況で、「なんとか社員の心をひとつにまとめなければ」と始めたのが、"全員参加の従業員総会"だ。店舗ごとの早握りコンテストを行うなどして、少しずつ社員のモチベーションの復活を図ることができた。
さらに、従業員感謝祭も実施している。従業員とその家族を、エリアごとの店舗に招待して「がってん寿司」を振る舞うことで、昔からあった"家族ぐるみでの付き合い"という原点を見直したのだという。

中でも久志本氏の「社員を頼る」という発言が特徴的であった。
経営者や上司の立場にいる方の中には、この"頼る"ということが非常に難しく感じる方も多いように思う。自身が優秀な方ほど、「部下に頼るよりも自分でやった方が早いし正確だ」と感じてしまうことがあるのではないだろうか。
久志本氏は会長として、生前に兄が作成した「10の種まき」をビジョンとして掲げているが、この経営理念についても、あくまで「経営者が種をまき、みんなが考えて咲かせる」と発言している。従業員を心から"頼っている"という姿勢が言葉の節々から見て取れた。

「がってん寿司」のグループでは、回転寿司のほかに新業態のお店も多く出店している。
とんかつを提供する店舗もあるが、人気メニューは「特上 三元豚のロースカツ定食 2203円」と、味にこだわり"手の届くぜいたく"をコンセプトとするのは同様だ。また韓国料理の店舗は、社内ベンチャーとして女性スタッフがやりたいと手を挙げて始めた事業だという。

コンセプトにはトコトンこだわるが、実施する上での内容については従業員を頼り、部下に任せる。
この姿勢はどんな業種・業態においても、非常に重要なことではないだろうか。ビジネスにおけるヒント満載の当番組、仕事で成功したいと考えている方にはぜひご覧になっていただきたい。

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文責:一般社団法人日本味覚協会 代表 水野考貴
著者ブログ:『味覚ステーション~世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト』
監修:次世代メディア研究所

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