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男子生徒・吉岡圭吾(遠藤健慎)自殺の謎を主演の井上真央が追う『明日の約束』。
夫が雇用主で妻は従業員という割り切った契約結婚の物語だった『逃げるは恥だが役に立つ』とは、一見似ても似つかぬドラマだったが、実は両ドラマには共通点が散見される。
後者はカワイイ新垣結衣がエンディングで「恋ダンス」を踊って大ヒットするなど、ポップな要素が随所にあった。ところが前者は、"毒親""いじめ"などが随所にちりばめられ、重いテーマで視聴率も振るわなかった。なのに何が似ていたのかを考えてみたい。

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ドラマ「明日の約束」(カンテレ・フジテレビ系列)


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■「明日の約束」ノート

『明日の約束』では、主人公・井上真央とその母・手塚理美との間でやりとりされた「明日の約束」ノートが大きな意味を持っていた。

例えば1冊目の「8歳の日向へ」。
「今日も日向はママの言うことの聞けない悪い子でしたね。明日はちゃんと、いい子になりましょう」
そして明日の約束が続く。
その1「ママが良いと言ったお友達以外とは遊ばない」
その2「ママに口答えしない」
その3「ママをイライラさせない」~「必ず守りましょう。ママは日向が大好きです」

「9歳の日向へ」。
「日向はこれから、ママの言うとおりに生きなさい。日向の読む本も、遊ぶおもちゃも、食べるおやつも、お友達も、全部ママが選んであげます。日向にとって、それが一番正しいんだから」
明日の約束は、「ママの言うことは疑わない。必ず守るように。ママは日向が大好きです」

「10歳の日向へ」。
「ランドセルの中にしまってあったラブレターは破って捨てておきました。日向がこんなにいやらしい子だったなんて、ママはショックです。二度とママを裏切らないでね」
明日の約束「ママに無断で男の子を好きになったりしない。必ず守るように。ママは日向が大好きです」

「11歳の日向へ」。
「ママが怒った時、まず自分が悪いんだと反省しなさい。理由なんて考えなくていい。口答えもしては駄目。じゃないとちゃんと反省できないからね。」
明日の約束「ママが怒った時はすぐにごめんなさいと言う。必ず守るように。ママは日向が大好きです」

以上のように母はことあるごとに、日向のやり方を否定し、母が信じる正しい方向を示し、最後に「ママは日向が大好きです」と締めくくっていた。小学5年生までの日向はそれを受け入れ、「これからも好きでいてください。私もママが大好きです」などと返していた。

ところが「12歳の日向へ」。
「日向も今日から12歳。小学校も今年が最後ですね。でも大きくなっても、あなたはママの娘です。これからもずっと、ママの日向でいてね」
明日の約束「日向はママを一生、愛し続ける。必ず守るように。ママは日向が大好きです」
......これに対して日向は、これまでと異なり返事を書かずにノートを床に投げ捨ててしまった。

以上は『明日の約束』第9話後に配信されたチェインストーリー#9.5『藍沢日向-記憶-』での母娘の日記の内容だ。最終回への助走として、井上真央演ずる日向の内面が見事に表現された秀逸なミニドラマだった。

母娘の日記......最終回への助走として重要なチェインストーリー#9.5『藍沢日向-記憶-』>>


■最終回

学校でのいじめ、母・真紀子(仲間由紀恵)による精神的虐待......ちまたでさまざまな臆測が飛び交った圭吾(遠藤健慎)の自殺。しかし結局、真相は誰にも分からず、クラスメイトや教師、残された家族は日常を取り戻せずにいた。
日向(井上真央)も、スクールカウンセラーとしてそんな人々の心をケアする一方で、死の前日に圭吾から告白されたことがずっと胸に引っ掛かっていた。

「あれは、彼なりのSOSだったのかもしれない。答えが違っていれば何かが変わっていたのかも」
圭吾を苦しみから救えなかったことを悔やんでいた日向だったが、前に進むためにも、自分にケジメをつけようと決める。そして、圭吾がクラスで孤立する原因を作った霧島(及川光博)の行為を学校に報告し、さらにこれまで学校や日向を敵視し続けてきた真紀子にもすべてを話そうと自宅を訪ねた。
するとそこには亡き息子の気持ちが分からないと絶望する真紀子の姿があった。圭吾と真紀子に、自分と母・尚子(手塚理美)の関係を重ね合わせた日向は、自分も幼いころから親の愛情に苦しんできたと告白。そして「高校生の時、母にいなくなってほしいと思った」と、尚子との関係を話し始める。長年にわたり"毒親"に支配されてきた日向の告白は、真紀子の心にどう響いたのか。

さらに日向が学校を去るに際してのあいさつ。
「私がこの出来事の中で、いま1番許せないと思っている人がいます」と切り出した......。
そして母と自身との歪(いびつ)な親子関係に対しては、最後の最後である決断を下した。

■両ドラマの共通点

『逃げ恥』では、リストラされた星野源が契約結婚していた新垣結衣にプロポーズする。ところが「リストラされたからプロポーズ? 結婚すれば給料を払わず、私をタダで使えるから合理的?」と問われ、あろうことか星野は「そういう......ことになっています!」と答えてしまった。
さらに「結婚はしたくないということなのか?」と星野は問うが、「それは......好きの搾取です! 好きならば愛があればなんだってできるだろうって、そんなんでいいのでしょうか。私、森山みくりは愛情の搾取に断固として反対します」と返されてしまった。

この"愛情の搾取"こそ、『明日の約束』での「ママは日向が大好きです」だ。

こうと言い続けることで、子供は縛られて行き自立の道が見えなくなる(明日が見えなくなる)。愛情ゆえに最もやっかいな"しがらみ"となるのである。
母娘の「明日の約束」ノートは、明日の約束「日向はママを一生、愛し続ける。必ず守るように。ママは日向が大好きです」で終わっていた。
日向は17年ぶりに、それへの返事を書く。明日の約束「私は、私のために生きていきます」

ちなみに日向が学校を去るに際してのあいさつにもこんな一節がある。

「(吉岡くんには)生きて逃げる勇気を持って欲しかった」
「生きていれば人はやり直せるから」
「たとえ幸せが約束された明日でなかったとしても、それでも明日も生きているということが何より大切なんだということを信じてください」

これこそ『逃げるは恥だが役に立つ』のタイトルの意味と同じ意味合いだ。
片方はポップでキュートな包み紙でくるんだために、過去四半世紀で2度目となる視聴率上昇し続けドラマとなった。ところが『明日の約束』は、重苦しく難解な要素が多かったために、視聴率こそ振るわなかった。それでも見た人の心にどれだけ深く刺さったのかでは、決して『明日の約束』は『逃げ恥』に引けを取らない。

同ドラマは、チェインストーリーといって放送と放送の合間に、両者をつなぐミニドラマが配信されていた。今もこれらミニドラマは9話全てがアップされている。これらを見た上で最終回を見直すだけでも、同ドラマがいかに深く優れた物語だったかが理解できる。
親子関係や人間関係に悩みを持つ方々には、ぜひ一読をお勧めしたい良作である。

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テレビ放送では描くことが出来なかった短編ドラマ「チェインストーリー」>>

文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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