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ライブ視聴率・タイムシフト視聴率・満足度のいずれも、秋ドラマの中で毎回ベスト5に入り続けた『コウノドリ』。
綾野剛と星野源が異なるタイプの産婦人科医を演じているが、実は二人の存在は現実に起こる難しい選択肢を象徴している。ドラマはその答えを求めるプロセスを丁寧に描き、視聴者の感動を呼んでいる。

サムネイル

『コウノドリ』の視聴率と満足度


"究極の選択"出生前診断を受けた2組の夫婦の決断>>


■番組の実績

視聴率は初回12.9%の後、11.8→11.9→13.6→10.6→11.0→11.7→12.9→12.3→11.1%と推移してきた。ここまでの平均12.0%は、秋ドラマの中で4位となっている。
視聴率はライブ視聴の量を示すが、自分の都合にあわせてじっくり見る傾向が強いのは録画再生などによる視聴だ。それを示すタイムシフト視聴率は、初回10.2%の後、10.8→11.1→10.8→10.8→10.0→9.4→9.6→9.5%となった。平均10.2%は、やはり4位の成績だ。
以上の量的評価を上回るのが質的評価だ。データニュース社「テレビウォッチャー」のモニター2400人が評価した満足度でみると、初回4.05%の後、3.90→3.89→3.84→4.19→3.96→3.83→3.88→4.05→4.08と続いた。10話までの平均は3.97。量的評価では届かなかった『ドクターX』や『奥様は、取り扱い注意』を凌駕(りょうが)するほどの好成績となった。

■好成績の背景

好成績の背景には、ドラマで提示される妊婦や医療関係者の迷いが、多くの視聴者にとっても"自分事"として共感できる点にある。
しかもそれらの迷いは、"究極の選択"というか"二律背反"というか、簡単に答えが出せない問題が大半だ。視聴者はドラマの登場人物たちと一緒に考えさせられ、そして何らかの答えに辿(たど)り着くまでに、より大きな共感・感動となっているストーリー展開が勝因と言えそうだ。

例えば初回では、キャリアウーマンが「障害を持った子の出産・育児」か「仕事優先」かで悩む。今や働く多くの女性にとって、切実な問題だ。
第2話では、子宮頸(けい)部腺がんの妊婦が厳しい選択を迫られた。赤ちゃんが十分育つまでおなかに留めるか、早く出産させて母親の治療をいち早く始めるのか。
第3話では心臓病を抱えた妊婦が、負担を軽減するため無痛分娩か自然分娩かで悩んだ。
他にも"帝王切開か、自分の産道を通して産むか"、"筋腫のために子宮を全摘するか否か"など、難しい判断が次々に出てくる。

納得できる出産とは何か。実際に妊婦経験のある女性も、これから出産を控える女性にとっても、とても切実な問題だ。
ドラマでは、完全無欠の理想論が出て来たわけではないが、毎回毎話、具体的なプロセスの中に回答を求める展開になっている。これが多くの共感を呼び、量的・質的に高評価へとつながってきた。

■出生前診断

"究極の選択"の中でも、第10話は最も難しい判断が視聴者に突き付けられた。妊娠中に胎児の状態を検査し、染色体異常などを出産前に知る出生前診断の問題だ。

別のクリニックで出生前診断を受け、21トリソミー陽性と検査結果が出た妊婦の高山透子(初音映莉子)と夫・光弘(石田卓也)がサクラ(綾野剛)の元を訪れた。
二人に確定検査である羊水検査について説明するサクラは、おなかの中の赤ちゃんについて「二人で向き合い、決めていくことになる」と告げるが、動揺する透子と光弘に「これからのことを一緒に考えよう」と寄り添い支える。
一方で、サクラと今橋(大森南朋)は、出生前診断を受けたもう一組の夫婦、明代(りょう)と夫・信英(近藤公園)のカウンセリングを行う。こちらの夫婦は羊水検査でダウン症候群との診断を受けていたのだ。サクラと今橋を前に明代は"ある決意"を告げる。
2組の夫婦の選択に、ペルソナメンバーたちはどう向き合い、寄り添っていくのか。

ここで秀逸なのは、カンファレンスでのやり取りだ。

研修医の赤西吾郎(宮沢氷魚)が疑問を投げかける。
「どうして命の選別をするんだろう。このまま出生前診断がメジャーになっていって、それが当たり前になった時、医師としてどう向き合えば良いのでしょうか」

サクラ(綾野剛)が応える。
「その質問の答えは、僕には分からない。(中略)平等であるはずの命を選別してはいけない。その通りだ」「けど命の選別。その言葉に皆がとらわれてしまっていて、お母さん、お父さん、家族、その事情には目が向けられていない。それぞれの事情の上に命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ」
「検査を受けた人、受けなかった人。赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人......どの選択も間違ってない。いや、間違ってなかったと思えるように、産科医として家族と一緒に命に向き合っていく。それが僕に、僕たちに出来ることなんだと、そう信じて僕はここにいる」

出産は当たり前の営みと思っている人は多いだろう。ところがドラマは、「赤ちゃんが生まれてくることは奇跡」という。またわれわれは、「平等であるはずの命を選別してはいけない」と考えがちだ。ところが現実には、命を育てる家族にさまざまな事情があり、単純に正論だけを言っていられない。
一見、当たり前のことの中に、実は難しい選択や判断が潜んでいる。
"私たちはどこから来て、どこに行くのか"。
日常の忙しさにかまけ、人生の根本的な問題に思考停止になりがちな私たちだが、一度立ち止まって考えるには最適のドラマが『コウノドリ』と言えそうだ。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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