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アニメ監督で放送作家の安達譲は、昭和アニメの金字塔である『妖怪人間ベム』を現代によみがえらせた。ダークな世界観の同作をショートギャグアニメとして大胆にリブートしているが、作品の根幹には、「一番好きなアニメは『妖怪人間ベム』」と語る安達のリスペクトがある。

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(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 アニメ監督で放送作家の安達譲)


■イメージをぶっ壊す"乳首チラッ"

安達は、『妖怪人間ベム』放送50周年プロジェクトの一環として制作されたアニメ『俺たちゃ妖怪人間』で監督を務めている。『妖怪人間ベム』とはかなり異なる明るい作風になっているが、"不条理さ"は共通させているそう。

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「『妖怪人間ベム』は、10代のときに再放送で見ていました。当時は今より放送規制が緩かったんですが、普通アニメで描かれないような"不条理さ"に踏み込んでいる印象でした。たとえば、ベロが女の子を敵から助けて、翌日デートすることになるんです。ベロはウキウキして女の子を待っていたのに、彼女のお父さんに反対され、結局デートはできないという一幕があります。親に『あの子とは遊んじゃいけません』と言われることって、現実にありますよね。そんなふうな不条理さは、今回のアニメに反映させています」

ベロがホストになるなど、かなりぶっ飛んだ展開も繰り出される『俺たちゃ妖怪人間』。『妖怪人間ベム』のイメージをあえて壊してほしいというのは、オファー段階から伝えられていた。

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「50周年だからこそ『妖怪人間ベム』のイメージを壊してくれと依頼されました。制作を始めたのが去年だったんですが、そのとき俳優の斎藤工さんが乳首を出すと視聴率が上がるといううわさがありました。だから、この作品も乳首を見せていこうと、ベロが乳首をチラ見せするギャグ"乳首チラッ"などを仕込んでいます(笑)。不条理なギャグをぶち込んでいますが、さすがに茶化しすぎだと叱られたこともあります(笑)」

誰もが知るアニメのリブートをオファーされた心境はどのようなものだったのか?

「すごくうれしかったです。実は、一番好きなアニメが『妖怪人間ベム』なんです。ベム、ベラ、ベロの3人は、人間からも妖怪からも嫌われているマイノリティ。それでも正しくて善良であり続ければ、必ずちゃんとした人間になれると信じているんです。普通ならグレちゃうような状況でも、けなげに人間のいいところを見つけて、踏まれても立ち上がる姿に勇気をもらっていました。なので、『妖怪人間ベム』という作品のリブートに携われることを純粋に喜んでいます」

■「1人も選ばなかった」オーディション!?

『俺たちゃ妖怪人間』は、ベム役に声優の杉田智和、ベラ役に女優の倉科カナ、そしてベロ役に俳優の須賀健太と、豪華キャストも魅力。声優はどのように選んだのだろうか?

「ギャグは間合いが大事なので、まず杉田さんにオファーを出しました。売れっ子で忙しい方だから、普通のオファーでは受けてくれないだろうと、ダメもとで台本をお送りさせていただきました。そしたら、面白いと引き受けてくださいました。そこから布陣を組んでいったんですが......。実は、声優のオーディションもしていたんです。会話劇の間合いをとるのは俳優さん、女優さんの方が向いているのではないかと判断した結果、俳優の方から選ばせていただきました」

それだけキャスティングにこだわるのは、安達本人が毎回苦労してネタ作りをしているからこそだ。

「ネタは作家2人と作っていますが、僕がネタの方向性を決めて、そのあとは2人に任せています。ただ、『俺たちゃ妖怪人間』は50話と長いので、スランプに陥ることもあります。スランプになると、僕が好きな社会風刺のギャグに偏ってきちゃうんです。そのたびネタをチェックしている方から注意を受けて、人を集めてブレスト会議をします。みんなで悩んで、ようやくギャグが思いつく。アニメ監督の大変さを実感しています」

■コウメ太夫の「チキショー!」のネタ考案

安達が手掛けたアニメ『変形少女』は、7月より不定期でネット公開されている。第5弾には、元モーニング娘。メンバーの道重さゆみが声優として出演した。

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「道重さんのキャラクターとバラエティ能力、そしてアイドルとしてのきらびやかさを見て、彼女しかいないと思ってオファーしました。道重さん自身も声優の仕事に興味があったようで、喜んで受けてくれました」

安達は、もともと放送作家として業界入りした。これまでバラエティ番組を手掛けてきたが、特に日本テレビ系『エンタの神様』に思い入れがあるという。

「お笑いが好きで放送作家を目指していて、芸人さんのライブで演出やコントを書いていた経験があったため、若手芸人をたくさん知っていました。なので、『エンタの神様』では最初、芸人を発掘する仕事をしていたんです。そのときに見つけたのがコウメ太夫さんで、ほぼ毎週ネタを書かせていただきました。このネタが成功したことで番組の演出家に目をかけてもらえるようになり、『エンタの神様』の放送作家となることができました。これが地上波での放送作家デビューです」

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・人気放送作家が就職活動して入った会社


アニメ監督としてだけでなく、放送作家としても活動している安達に、今後どんな活動をしていきたいか聞いてみた。

「アニメ監督としては、ショートアニメを極めたいと思っています。僕が勝てると思っているのは、ギャグの数や突拍子もない発想だったりする。その特性を生かして、自分が納得できるところまでやってみたいんです。といっても、アニメ監督に絞って活動するわけではなくて、とにかくいろいろなことをやっていきたい。アニメでも、テレビでも、雑誌でも、音楽でも、どんな媒体でもいいから、自分が大事にしている"一生懸命に生きる人間の滑稽さ、美しさ"を描き続けていきたいです」

◆安達譲(あだち・ゆずる)
アニメ監督兼放送作家。これまでに日本テレビ系『エンタの神様』やテレビ朝日系『林修の今でしょ!講座』など、バラエティ番組で放送作家を務める。34歳のときに株式会社ディー・エル・イー(DLE Inc.)へ入社。アニメ監督としてはインターネット番組『俺たちゃ妖怪人間』のほか、『変形少女』も手掛けている。座右の銘は「諸行無常」。

(取材・文/上西幸江@HEW

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