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残すところ、2017年もあとわずか。1年の締めくくりと言える「NHK紅白歌合戦」の放送も迫ってきた。年々、さまざまな趣向を凝らしている紅白だが、第68回を数える今年はどういった見どころがあるのだろう? そこで、前年に引き続き番組の制作統括を務める矢島良チーフプロデューサー(以下、CP)に取材を行い、主に三つのテーマについて語ってもらった。その3では、紅白だからこそできることは何かを検証することで、裏番組との対比を浮き彫りに。そして、矢島CPにとっての紅白とは何かを問う。

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(C)NHK


【特集】「第68回NHK紅白歌合戦」(Yahoo!テレビ)>>

──ズバリおうかがいしますが、紅白の裏番組を意識していらっしゃるのでしょうか?

「そうですね......これは"意識しています"と言った方が記事的には面白くなるのでしょうけれども(笑)。正直なことを申しますと、僕も含めた現場レベルでは、"今年の紅白をいかに面白くするか"という自分たちが直面していることに腐心していて、その状態が12月31日の本番まで続くので、同じ時間帯に他局でどのような番組が放送されるのかと目配せまでする余裕がない、というのが本当のところです。敬意を込めて申し上げれば、いずれの局の方々も、まずは『面白い番組を』という姿勢で取り組んでいらっしゃると思うんですね。そういった番組づくりに対するモチベーションはわれわれも一緒ですし、その上で『より多くの方により長い時間見ていただくにはどうすればいいか』を意識しています。チャンネルを紅白に合わせていただけたなら、その時点からグイグイと視聴者を引き込んで、結果的に最後まで釘(くぎ)づけにしてしまう企画や演出、構成上のことを工夫していきたいなというのが、偽らざる思いです」

──では、チャンネルを固定してもらうために、どういった工夫をなさっているのでしょう?

「ここ何年かで実感しているのが、『視聴者は番組で何が行われるのか知らないと触れてくれない』ということなんです。たとえば、あるアーティストが珍しい曲を歌って話題になったとしても、『そうなんだ、知らなかった』といった感じで、受け流されてしまうことも少なくないんですね。それが僕らとしても忸怩(じくじ)たる思いであって。やはり、素晴らしいパフォーマンスを多くの方に届けたいですし、そのためにも『これは見ておくべきですよ!』と事前にどれだけ幅広くお伝えできるかが課題かなと。そもそも知らなければ、期待も高まらないじゃないですか。なので、いろいろなアプローチで情報を発信して、視聴者の心に引っかかるようなPRをしていこう、と。この記事も、その一環なんですけれども(笑)」

──つまるところ、裏番組うんぬんではなく、まずはいかに紅白そのものを魅力的な音楽番組として成立させるかが大事であるということですね。

「おっしゃる通りです。僕らがバラエティー番組をつくったところで、たかが知れていますし、何より真摯(しんし)に、そして懸命に良質な歌番組をつくることが自分たちのなすべきことだと考えています。ちなみにこれは余談ですが、毎年生放送を終えてしばらくは、オンエア中に失敗する夢ばかりを見るんですよ。おそらく、緊張状態が続いているんでしょうね。今年の正月も盛大なミスをする夢を見て、うなされてガバッと起きたら、すでに年が明けて数日目だった......なんていうことがありました(笑)」

──やはり見えざるプレッシャーもあるんですね。そこを踏まえての質問なのですが、NHKだからこそできること、もしくは強みといったものは何なのでしょうか?

「何でしょうね......ちょっと真面目といいますか、かためのお話をしますと、昨年『夢を歌おう』というテーマを掲げた時に、日本を代表する音楽コンテンツにして海外発信もしている番組でもあることを考慮して......世界に通用するというと口幅ったいですけど、グラミー賞などにも見劣りしないコンテンツと評価してもらえるような音楽番組にしたいと思っていて。そのためには、たとえば4Kや8Kといった最新のテクノロジーを取り込んだ映像演出をしてみたり、昨年の例でいえば、東京都庁からの大規模な中継などがNHKの強みかな、と。もう一つは、68回もの長き歴史がわれわれにとっての大きなアドバンテージといいますか、毎年大みそかに放送してきたという積み重ねがあるので、"今年の紅白はどうなるんだろう?"という期待感をもっていただけるところも強みかなと感じています。その強みを逆手にとって、いい意味で期待を裏切りながら、新しいものを見せていくことが、僕らにできることにして、やるべきことなのだと捉えています」

──昨年はポール・マッカートニーがVTR出演をして、来日公演の予告をしたことも話題になりましたね。

「"紅白はこういう音楽番組なんです"と説明をすると、ポール・マッカートニーのような海外のビッグネームも興味を示してくださるのも、それこそ強みかもしれませんね。欲をいえば、出演していただけたら、もっとうれしかったんですが(笑)。先ほども申し上げたように世界に通用するコンテンツに近づくことができたのかな、という手応えは感じました」

──といったところで、最後の質問なのですが......矢島CPにとって紅白とは、何でしょうか? 幼少の頃にご覧になった思い出などを踏まえつつ、語っていただければと思います。

「これが正直なことを申しますと、子どもの頃に見た紅白の印象が、あまり残っていないんですよ(笑)。というのは、僕が子どものころの紅白は午後9時からのスタートで、当時は7時からの『輝く!日本レコード大賞』を見てから紅白という流れがあったんですけど、じっくりと『レコ大』を見た後の紅白は、おなかもいっぱいになっている時間帯で、こたつでうたた寝していたような状態だったからなんですね。ただ、それこそ家族そろってこたつに入って、テレビを見ながら年を越すという恒例行事にはすでになっていた記憶はあります。両親が晩酌をしながら、『この歌い手さんは歌がうまいなぁ』なんて言うのを聞いていた覚えがありますし、できれば最後まで起きていて、どちらが勝ったのかをリアルタイムで見届けたいなと思いつつ......寝ていたというのが思い出なんですよね。ただ、そのようにして家族や大切な人と過ごしていただく時間に寄り添える番組になれたらいいな、という思いは今もあるんです。そういった"あったかい時間"といいますか......その時間に働いていらっしゃって録画をご覧になる方も含めて、皆さんの心に寄り添うものをつくりたいという思いが年々強まっているので、少しでもご期待に応えられるような番組を、と気を引き締めている次第です。12月31日が暮れゆく夜の4時間半という、やはり1年の中で特別な時間にお付き合いいただくわけですから、視聴者の皆さんと真摯(しんし)に向き合って番組づくりに取り組んでいかねばという思いです。今年も大みそかに向けてスタッフ一同頑張っておりますので、どうぞご期待ください」

──もう一つ追加の質問を。作り手側になってから、印象的な紅白のワンシーンはありますか?

「初めて白組のスタッフでチーフを任された年の大トリが、SMAPだったんですよ。初めてのことが多くてドタバタしつつも、番組が終盤に差し掛かり、フロントからSMAPが歌う姿を見ていたら、感動してしまいまして......。『このシーンはテレビで見たかったな』と思ったことを、今でもよく覚えていますね。もちろん、目の前で見られる方がぜいたくなんですけど、この素晴らしい歌がテレビからどう伝わってくるのか体感してみたかった。まぁ、できれば家のテレビで見たいのは毎年のことなんですけれどね(笑)」

【ミュージックビデオ】紅白出場アーティストの映像を配信中>>

取材・文=平田真人

【番組情報】「第68回 NHK紅白歌合戦」 NHK総合 12月31日 午後7:15~11:45(中断ニュースあり)

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