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初回9.2%・第2話7.2%と、過去5年の水曜10時枠で最低となってしまった『anone』。
それでもSNS上では、「めっちゃ感動する」「期待通り」「心に沁みます」など、絶賛のつぶやきがたくさん投稿された。
テイストが独特のため途中脱落した人もいたようだが、序盤からハマってしまった人も少なくない。その勝因の一つは、場面にマッチした名セリフだった。ここを中心に序盤を振り返ってみたい。

サムネイル

Hirose Suzu The Third Murder photocall, 74th Venice Film Festival(写真:Splash/アフロ)


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■初回の名セリフ!

『anone』では初回冒頭で登場する医師が、そもそも患者に名言を交えて病状を説明する。
「止まない雨はありませんよ。夜明け前が一番暗いんです......ま、余命的にはあと半年ほどになりますかね」
言葉の使い方がやや疑問だが、名言っぽく聞こえるセリフだ。他にもこうしたセリフが次々と出てくる。

「雨はやんでもまた降る」「努力は裏切りますけど、諦めは裏切りませんから」
医師から余命半年と宣告されたカレー屋店長・持本舵(阿部サダヲ)が、客の青羽るい子(小林聡美)に話した言葉だ。"努力は裏切らない"はよく言われるが、"諦めは裏切らない"だと絶望の深さが伝わる。医師の冒頭の"やまない雨はない"を、"雨はやんでもまた降る"とひっくり返すのも、絶望感がリアリティをもって伝わる。

二人の会話には、他にも注目すべき言葉がある。
「死にたい、死にたいって言ってないと、生きられないからですよね」
ここ半年ずっと死にたいと思っていたというるい子に対し、持本がかけた言葉だ。
「生きたいから言うんですよね」
直後にこう続けた。本人も気づいていない本音を、持本には掬(すく)い上げる繊細さがある。

「大丈夫って2回言ったら大丈夫じゃない」
主人公・ハリカ(広瀬すず)は、友人二人と大金を探す。一人の「大丈夫大丈夫」に対して返した言葉だが、お金で三人の友情が崩壊する予兆となった。

「大切な思い出って、支えになるし、お守りになるし、居場所になるんだなぁ」
ハリカが8歳から12歳まで暮らしていた、絵本から出てきたようなすてきな家での思い出だ。しかし実際には、全寮制の更生施設で、親から見放された子などが治療をする場所だった。そこで虐待を受けていたが、つらすぎる現実をすてきな記憶へと作り変えることで、ハリカは自らを守っていた。

「誰だって、過去に置いてきたい自分っています。今さらもう、過去の自分は助けてあげられない。せめて今を......」
ハリカと出会った亜乃音(田中裕子)はそう言って、石を握らせた。ハリカはその石をツリーハウスめがけて投げ、窓ガラスが音を立てて割れた。ハリカが過去の呪縛から一歩踏み出した瞬間だった。

■第2話の名セリフ

第2話にも印象的なセリフがいろいろ出てくる。

「社会からひどい目に遭わされた人は、死ぬ前にすることがあるでしょ。怒るんですよ。シャケだって時には熊を襲うんでしょ」
小中高の同級生だった男に店を取られそうになっている舵に対して、るい子が行動を起こさせるために言った言葉だ。物語の前提説明が多かった初回に対して第2話からはがぜんストーリーが動き出す。それを象徴するようなセリフだった。

「愛されてたって、愛してくれなかった人のほうが心に残るもんね。人は手に入ったものじゃなくて、手に入らなかったもので出来てる」
亜乃音が長年育てて来た娘・玲(江口のりこ)が、突然現れた実の母親によって失踪してしまったことを絶望して絞り出した言葉だ。凝視していたのは、失踪した玲と孫の写真である。
これに対してハリカは、かつて「親から愛された記憶がない子って、人を愛することができない」と言われた言葉をひっくり返し、亜乃音に優しく話しかける。
「愛された記憶があるから愛せる。亜乃音さんの愛情、ちゃんと玲ちゃんに届いたから、自分の子供も愛せてる」

翌朝、亜乃音はしぶとく起きないハリカを叱りつける。
「あのね、私が布団から手を離さないんじゃなくて、布団が私を離さない」
この言い訳は、長い間ふとんで寝ていなかったハリカの心の底からの喜びの声だ。既に二人の間には、親子のような思いが醸成されつつある。

『anone』は設定が極端で、伏線もちりばめられているので、"ながら見"では筋を見失ってしまう。それでも"明示されていない要素"を結び付けていくと、実に丹念に描かれた物語であることがわかる。
番組の次屋尚プロデューサーは、「ただ視聴率をとるためだけの仕事はしたくない。こういう作品が今後必ず必要にはなってくるという信念は持っています」と取材に答えている。
リアルタイム視聴率だけでは測れない、番組の深さや感動の大きさなどに挑戦しているドラマであることは間違いない。その内実をじっくり味わうためにも、落ち着いてみられる時間と環境下で、反芻(はんすう)するように見ることをお勧めしたい。

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文責:次世代メディア研究所

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