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2014年春『マルホの女~保険犯罪調査員~』以来、久々に名取裕子と麻生祐未がコンビを組んだ『特命刑事 カクホの女』。
定年間近の警視庁人事畑キャリアから、通常ありえない異動で現場刑事となった北条百合子(名取裕子)。そして"うそを見破る勘"に優れる現場叩(たた)き上げの刑事・三浦亜矢(麻生祐未)。この二人が凸凹コンビを組む。価値観も得意分野も真逆の二人の組み合わせもユニークだが、全話を通して展開される事件解決のプロセスと、1話完結で毎回起きる事件の犯人確保までの展開は、切り口の独自性と筆力を感ずる面白い物語となっている。

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(C)テレビ東京


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■第1話

最有力容疑者は妻を寮で殺された現職刑事という、神奈川県警を揺るがす大事件が初回から展開された。しかも彼には説明できない「空白の1時間」があった。さらに相棒刑事の妻も行方不明と来た。
この難事件を、百合子(名取裕子)は人事畑の経験を生かして、通院履歴などから真犯人を割り出してしまった。設定といい、事件解決法といい、これまでにない刑事ドラマの面白さに満ちていることが伝わってくる初回だった。

シリーズ全体を見たくなる仕掛けにも工夫が凝らされている。
初回オープニングで響き渡る二発の銃声。倒れているスーツ姿の男。近くで拳銃を持ったまま立っている三浦亜矢(麻生祐未)。冷やかに見下ろし、男の手に拳銃を持たせる......。
死んでいたのは、百合子のフィアンセ・刈谷晋作(鶴見辰吾)。百合子は事件の真相を探るために、内勤から現場に志願したようだ。
「定年前に一度現場に出て犯人確保ってやってみたいなって」と柔らかく言う裏に、不屈の信念が燃えている。果たして真相は何なのか。大いに興味をそそる設定である。

■第2話

第2話の事件は、女子高生誘拐事件。
"うそを見破る勘"に優れる亜矢(麻生祐未)は、脅迫電話を受けた姉が何かを隠していると気づき、問い詰める。実はこの勘が正しいのだが、捜査班は容易に解決に至らない。しかも亜矢は張り込み中に、3年前の事件(刈谷晋作殺人事件)を思い出して動揺し、失敗し自宅待機を命ぜられてしまう。
結局、百合子(名取裕子)がカレンダーのメモから真犯人を突き止め、処分中の亜矢と犯人を確保する。やはり第2話でも内勤の経験がものを言った。
しかも事件の真相は、姉妹のお互いを思いやる気持ちがすれ違ったための不幸な結末だった。見る者の情緒を存分に刺激してくれる、いわゆる"面白い"物語となっていた。

ビデオリサーチ社のリアルタイム視聴率は、初回7.7%から第2話は7.0%とやや下がってしまっていた。ところがデータニュース社「テレビウォッチャー」では、ライブで見た人と録画再生で見た人の合計は、48人から57人と増えていた(モニター2400人)。
しかも実際に見た人の満足度は、3.58から3.65と上昇していた。質量ともに初回より第2話で上がっていたのである。

「ふたりのコンビが面白く先が楽しみ」男69歳
「見応えがあった」女65歳
「お姉さんと妹の行き違いが悲しかった」女27歳
「名取裕子の語りは聞き取りやすくて、感情豊かで楽しい」男28歳

視聴者の声にあるように、ベテランの安定した名演技と、ストーリーの面白さが、世代や性別を超えて高く支持されていた。

■第3話

川崎のアパートで刺し傷のある遺体が発見された。所持品から遺体は住人の平松絵美だと判明。絵美はSNSで人気のセレブ「パトラ」を名乗り、セレブメイクで優雅な写真をいくつも載せていた。ところが百合子(名取裕子)は、部屋に化粧品がなくなっていることが気にかかる。やがて行方不明となっていた凶器が、田浦貴音のアパートで発見される。被害者と容疑者の関係を洗う捜査が進められた。
一方、亜矢(麻生祐未)は、百合子から「晋作を殺したのはあなたですか?」と聞かれる。

容疑者と被害者の関係が、経歴ゆえに歪(ゆが)んでしまったという展開は、居たたまれない悲しさが伴う。しかも、そうなってしまうには世間の偏見も加担している。番組は大きな声では主張しないが、控えめな提示と抑制しているだけに、制作陣の志がズシリと重く伝わる。

また殺害現場に化粧品セットがないところから事件解決を導く百合子の考え方は、やはり内勤経験ゆえの普通の現場刑事と異なる見方で、意外性がある。
さらにシリーズを通して決着に向かう3年前の事件(刈谷晋作殺人事件)も、過不足なく第3話にちりばめられていた。視聴者の関心は、巧妙につなぎとめられていると言えよう。

ドラマを見るか否かを決める時、トレンドの人気俳優の存在などで決める視聴者が世の中には多い。あるいは派手な設定に惹(ひ)かれることもあろう。
ところが、そうでないために見過ごした番組に、キラリと光る面白さがあったりする。当ドラマはベテランのうまさ、よく練られた本、安定した演出で、重厚な味わいを目指している。そんな本物指向のドラマ通に、ぜひお勧めしたい一作である。

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文責:次世代メディア研究所

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