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"職業ヌードモデル"である兎丸愛美のファンは、意外にも大半が女性だ。昨年に写真展を開催した際は、感動のあまり泣きだす来場者もいたという。悩みを抱える女性たちにそっと光を与える彼女は、かつて自身も深い闇に囚われていた。

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(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 ヌードモデル・兎丸愛美)


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■自分にしかないものを残したかった

「ずっと、20歳までに死にたいと思っていたんですよね」

友達にも家族にも、どこか本当の自分を隠しているような気がしていた。兎丸は6人兄弟の末っ子として生まれる。優秀な兄弟を近くで見ながら生きていた彼女は、幼い頃から、兄弟に近づきたい、追い越したいという気持ちを抱いていた。しかし何を頑張っても、すでに兄弟たちがこなしてきたことでしかなかった。同じような人生を歩んでも、きっと兄弟たちを越えることはない、自分にしかできないことは何もない。そんなことを考えるようになってから、兎丸は頑張ることを諦めて、ただ「絶対的な理想の家族」の中で、自分の存在をさげすむことしかできなくなった。そして彼女は19歳のとき、"遺影"を撮ることを決めた。

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「私にとって家族はとても大きな存在ですし、家族仲はいいんです。ただ、自分だけその輪に入れなくて置いてけぼりにされている感覚がありました。子供の私にとって、それは死にたくなるほどつらいものでした。だからといって裸で遺影を撮るというのは、今から思うと、理解できないですけど(笑)。でもそのときは、どうしようもなくなっちゃっていたんでしょうね。最後に自分のありのままの姿、私にしかないものを残したくて、遺影は裸で撮ろうと思ったんです」

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当時流行していたSNSを通じて、アマチュアのカメラマンに撮影を依頼した。完成した写真を見て、容姿ではなく、そこに写った自分の生きざまのようなものに触れて――兎丸は、初めて自分のことを美しく感じられたという。それは彼女が、自分の存在を少しだけ肯定できた瞬間だった。とくに写真に関心があったわけではない兎丸だったが、被写体になったことをきっかけに、どんどん写真の魅力にとりつかれていく。

「写真を撮られることによって、今まで知らなかった自分に出会えるんです。そして自分を知っていくうちに、『意外と私ってそんなに悪くないんじゃない?』というか、『もっと自分を大切にしてもいいんじゃない?』という気持ちが芽生えていきました」

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ヌード写真が増えていっても、いざ職業として"ヌードモデル"を名乗ることに葛藤がなかったわけではない。しかし、「自分らしく生きてみたい。一生写真を撮りたい、撮られたい」という思いが勝った。兎丸は、ありのままの心や生きざまを表現するためにヌードになっている。だからこそ、彼女の写真は、本音を出せず悩み苦しんでいる女性たちに響くものとなっているのだろう。ファンからは、「兎丸さんが笑っていると私もうれしい」「兎丸さんが悲しいと私も悲しくなる」といった感想が多く寄せられているそうだ。

■「きっとぜんぶ大丈夫になる」は魔法の言葉

ヌード写真をSNSに投稿するようになると、どんどん話題をよび、撮影依頼が舞い込むようになった。昨年4月には、初の写真集『きっとぜんぶ大丈夫になる』を玄光社より発売。発売を記念して、東京と大阪で写真展も開催した。


兎丸は被写体となるとき、あまりカメラを意識しない。たとえカメラマンが主導権を握ろうとしても、自分の思うままに動く。兎丸は、「撮影とかではなくて、カメラマンと1人の人間として向き合う感じ」と撮影について語る。

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「人によって見せる顔って少しずつ違うじゃないですか。そのカメラマンさんに見せる表情を切り取ってもらうイメージです。だから初めての撮影現場だと、カメラマンさんといかに打ち解けるかが重要ですね。相手から悪い印象を受け取ると撮影が難しくなってしまうので、きちんと話し合います」

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(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 ヌードモデル・兎丸愛美)


写真集のタイトルになっている「きっとぜんぶ大丈夫になる」とは、兎丸いわく、「魔法の言葉」。ふと心がざわめいたとき、彼女は自分にそう言い聞かせるのだ。写真集『きっとぜんぶ大丈夫になる』は、ヌードモデルを始めたばかりの21歳の頃と、25歳の今の写真とで構成されている。かつては毎日泣いていたが、今は朝が来るたび喜びを感じているという。SNSに投稿する内容も随分明るくなった。では、兎丸はもう「ぜんぶ大丈夫」になったのか?

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「うーん......。『兎丸さんはもう大丈夫になった』と思われがちなんですが、全然そんなことはなくて。きっとこれからも『大丈夫になる』って自分に言い聞かせて生きていくんだと思います。私にとって、おまじないみたいな言葉ですね」

■今後は"撮る側"にまわりたい

「20歳で死にたいと思っていたのに、写真のおかげで25歳まで生き延びた。死ぬために写真を撮ったのに、写真によって生き延びています。写真って本当にすごいな」

兎丸は、そう言って明るく笑う。どんなに重い話題でも、軽やかな口調で話すのが印象的な女性だ。昔と比べて守りたいものが増えた今だって、別に長生きしたいわけではない。しかし、「いつ死んでもいいように生きよう」と前向きな方向へと考えが変わったそうだ。今後のことはそれほど考えていないが、"写真を撮る側"になってみたいと考えており、昨年12月に発売されたサニーデイ・サービスのシングル『クリスマス』のジャケット写真でカメラマンデビューを果たした。

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(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 ヌードモデル・兎丸愛美)


「正直なところ、最近は自分の写真を見ても、新しい自分と出会う感覚はあまり感じられていないんです。これからは撮る側にまわって、相手を通して、いろんな自分を見つけたい。誰を撮ってみたいかな? 男の人を、......好きな人を撮りたいです(笑)」

「これから私は、どうなっていくんでしょうかねぇ」とのんびり語る兎丸。それでも「本当に私のことを必要としてくれる人に、小さな光みたいなものを与えられたらいい」と考えている。

「自分のことがすごく嫌いで、わざわざ幸せから遠ざかってしまう女の子っていると思うんです。そんな女の子に、私の作品を見てもらえたらうれしいです。私も昔はそういう人間でしたが、裸になったことによって、ありのままの自分を受け入れることができるようになりました。昔の私みたいな女の子がちょっとだけ未来に希望を抱けるように、自分のことを少しでも大切にできるようになってほしいです」

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(GYAO! トークバラエティ「ぶるぺん」出演 ヌードモデル・兎丸愛美)


◆兎丸愛美(うさまる・まなみ)
2014年に写真誌などでヌードモデルとしてデビュー。昨年4月に初の写真集『きっとぜんぶ大丈夫になる』(撮影:塩原洋)を玄光社より発売。同年12月発売のサニーデイ・サービスのシングル「クリスマス」のジャケット写真でカメラマンデビューを果たす。
座右の銘は、「きっとぜんぶ大丈夫になる」

(取材・文/原田イチボ@HEW

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