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 競技かるたに没頭する少女と、その仲間たちの青春を描いた末次由紀の大人気コミックを映画化した『ちはやふる』シリーズ最新作にて完結編となる『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開を迎える。『上の句』『下の句』合わせて観客動員数200万人を突破するなど大ヒットを記録したシリーズでメガホンをとった小泉徳宏監督と北島直明プロデューサーが、作品について余すところなく語った。

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『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開(小泉徳宏監督&北島直明プロデューサー)


【予告編映像】「ちはやふる-結び-」>>


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■実写化ではなく映画化!

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広瀬すず主演映画『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開


――シリーズ完結編を迎えましたが、3作を通して人気コミックを実写化するうえでこだわった部分を教えていただけますか?

【ダイジェスト映像】『ちはやふる-上の句-』『ちはやふる-下の句-』>>


北島:小泉監督が脚本を書いているのですが、いい意味でこだわっているのが"原作に囚われ過ぎない"ということです。原作に書かれていることを冷静にとらえ、ぜったい外してはいけない芯の部分を話し合い、原作の持っている幅を超えないことを意識しました。マンガ原作の映画は、"原作の再現率"を求められてしまうのですが、再現にこだわって製作すると、原作のダイジェストやコスプレ祭り的なものになってしまう恐れがあります。ですので、原作のなかにあるコアな部分を抽出して、2時間のなかで映画として再構成する作業をしました。

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『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開(小泉徳宏監督&北島直明プロデューサー)


小泉:最近感じているのですが、"実写化"という言葉って呪いだなと思うのです。実写化というと、マンガの絵を立体にするようなイメージがあって、この作品は、そのままの話を再現しているのではないので、言葉としては"実写化"ではなくて"映画化"なんですよね。

北島:僕も最近"実写化"という言葉には違和感があって、マンガを読んでいない人からみれば、オリジナルも原作がある作品も同じなのですよね。映画は自由なものだと思うので、オリジナル、とか、マンガ原作とか、カテゴライズ自体が呪いの言葉になってしまっているような気がします。

――ぜったい外してはいけない芯の部分というのは、どのようにとらえたのでしょうか?

小泉:うまく言えないのですが、原作そのものの表現がどうかというより、僕は原作を書いた人の気持ちの方をいつも考えている気がします。どうしてこういう展開にしたのだろう、どういう気持ちでこれを描いたのだろうとか。『読む』だけではわからない事が、いざそれを元に別の何かを『作る』モードになった途端に、作者の声が聞こえてくる気がする。わかりやすい例で言うと、下の句で千早と詩暢が対戦した時、いっそ千早が勝った方が映画単体としてはカタルシスがあるんですよ。でもそれをやると、急に『ちはやふる』じゃなくなる。そういうトンマナが、わかるようになってくるんです。ちはやふるで言うと、原作における『情熱』『青春』は末次さんの大きなテーマだと思いました。『運命』『絆』はどちらかと言うとサブで、僕が勝手に膨らませたものです。

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『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開(小泉徳宏監督&北島直明プロデューサー)


北島:監督と話をしていて"時間"というのは一つあったのかなと。百人一首というのは、1000年前のベストアルバムという意味合いがあると思うのですが、一方で、競技かるたの世界では1秒未満の勝負が繰り広げられる。このある種の矛盾を、高校3年間という限られた時間のなかで行うからこそ、光り輝くものがあるのかなというのは、一つのテーマのような気がしていました。

■好き勝手やらせてもらえた作品

【ミュージックビデオ】Perfume「無限未来」(映画ver.)>>


――原作にこだわり過ぎないというアプローチ方法によって、登場人物がとても魅力的に映し出されているように感じられます。

北島:いま考えれば、体制的にも好き勝手やらせてもらえた作品でしたね。小泉監督へのオファーもそうですが、若い人でやりたいというのも、こちらのわがままでしたから。

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広瀬すず主演映画『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開


小泉:当時の広瀬すずはまだ『海街diary』に出演する前ですし、知名度的にも主役に抜擢(ばってき)することは、なかなか考えられないことでした。

北島:代表作がない10代の女の子を主演に起用することもそうですが、キャストみなオーディションで選ぼうというのも、普通ならありえないことですね。

小泉:よくいろいろな人たちが納得してくれました。

北島:監督を含めて僕らの、この映画界のなかで「おもしろいものを作ってやろう!」というむき出しの感情に興味を持ってくれた人がいたのでしょうね。

■奇跡的なキャストたち

――オーディションで選んだキャストたちは2年間でみな大きく出世しました。

小泉:幸せな形ですよね。ここまで歯車がうまくかみ合うとは思っていなかったです。

北島:下積みが長い子が多いんですよね。野村周平も、(西田優征役の)矢本悠馬も、(駒野勉役の)森永悠希も、(若宮詩暢役の)松岡茉優も、みんな6~7番手あたりを経験している。残酷なもので、スポットライトが当たるのはメインキャストのみなことが多い。でも、この作品では、小泉監督が全キャストにしっかりスポットを当てた。彼らからすれば、芝居の喜びや演出されることへの快感はあったと思います。そういったことも自信につながったのかもしれませんね。

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野村周平 出演映画『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開


――キャラクターへの作り手の愛が、スクリーンを通して伝わってきますが、そんななか、小泉監督は広瀬さんには主役として真ん中にしっかり立ってほしいと話をしたと聞きました。

小泉:自分が主役であることは理解していたと思うのですが、『上の句』『下の句』のときはまだキャリアも浅く、自分の役をまっとうすることで精一杯だったんです。まあ、16歳の女の子だったので、当たり前なのですが......。でも2年たって、彼女も経験を積んで、人間としても大人になりました。もともと頭のいい子で芝居はうまかったのですが、今作は、主役としては当然ですが、後輩も入ってくるので、座長として周りを支えるように意識してほしいという話をしたんです。

――育てるという意味でしょうか?

小泉:僕は若い人と一緒にやるとき、映画というものを通じて、役者としてだけでなく人としても成長してほしいと思っています。それはキャストに限らず、スタッフも同じなのですが、今までやりたくてもやって来られなかった事に、小泉組ではチャレンジして欲しいんです。主演というのは、言い換えれば彼女のための映画でもある。他の役者に、「彼女のために力を尽くそう」と思わせるだけのなにかが必要なのです。彼女はこれからも主役として映画界を引っ張っていく存在ですが、性格的にはあまり先頭に立って......というタイプじゃない。だったら、自分の背中を見せて引っ張るというやり方もある。「主役がここまでやっているのだ」という空気は、現場を引っ張っていけるのです。

■広瀬すずの成長

――『ちはやふる-結び-』では見事に実践した?

北島:今回の作品の設定を2年後にしたというのも、成長するというのが前提という部分もありました。もともと最初から続編を考えていたわけではなかったのですが、たまたま若い役者で編成することができたので、リアルに2年後が描けた。そのなかでもすずの成長はすごかった。この2年間で高校を卒業し19歳になったのですが、前回はみんなで楽しくワイワイという感じだったのが、今回は背中でみんなを引っ張っていました。なかでも後輩たちの面倒をすごく良くみていました。

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新田真剣佑 出演映画『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開


――「みんなで回転寿司に行こう」と提案したみたいですね。

北島:そうなんです。急にすずが言い出したんです。でも、さすがに2年前と状況が違って、みんな顔が売れてきているので「大勢で回転寿司いったら大変だろ」って言ったんですけれどね(笑)。でも昔は、率先してそういうことを言う子ではなかった。

小泉:どちらかというと後ろからついていく子でしたよね。

――後輩たちの面倒を良くみていたという意味では、新キャラクターたちが現場になじむことは、作品を成功させるうえで重要なことですよね。

北島:(周防久志役の)賀来(賢人)くんは相当悩んでいましたね。

小泉:賀来くんに限らず、全員キャラクター付けには悩んでいました。どう演じたらいいのか、みんな探り探り現場で調整していった感じですね。

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松岡茉優 出演映画『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開


北島:完全に出来上がっているチームに入るのは思っている以上に大変です。特に(清原果耶演じる)伊織は映画オリジナルキャラクターなので、参考にするものがなかったから、悩んでいました。しかも松岡茉優や広瀬すずと対峙(たいじ)する役で、シーンも少ないなかで、どうやってインパクトを残すかに苦心していました。

■小泉監督は主役の輝かせ方が特殊

――新キャラクターにも見せ場がすごくありました。小泉監督の作品は総じて、登場人物への愛を強く感じます。

小泉:特別意識しているわけではないのですが、自然とそうなってしまいます。無駄な登場人物を描きたくないんです。無駄ならいっそいない方がいい。映画に登場するということは、その人が描かれる必然性があるわけで、それを映画のなかでなじませて、どうカタルシスに持っていくかは常に考えてます。


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賀来賢人 出演映画『ちはやふる-結び-』が3月17日に公開


――北島プロデューサーからみた、小泉監督の魅力とは?

北島:主役の輝かせ方が特殊ですね。『カノジョは嘘を愛しすぎてる』もそうですが、主役に多くを語らせないのですが、主役が際立っている。『上の句』は真島太一の話で、途中まで冷や冷やしていたんです。『結び』も言ってみれば太一の話なんですよね。ところが彼が千早のために頑張れば頑張るほど、主人公が輝いていくのです。脇役も輝いているのは、彼らの行動理念が主役に結びついているからなんですよね。

――最後に座右の銘を教えてください。

北島:「One Chance One Make」という言葉は大切にしています。一回のチャンスで絶対に形を作る。人との出会いにも通じていていると思うんです。

小泉:昔から気に入っている言葉は「気宇壮大(きうそうだい)」です。まずはスケールを大きく考える。そこにどう向かっていくか、現実的な方法を考えていきます。

(取材・文・撮影:磯部正和)

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小泉徳宏(こいずみ・のりひろ)
1980年8月20日生まれ、東京都出身。2006年映画『タイヨウのうた』で長編デビューを飾ると、2008年には佐藤隆太主演の『ガチ☆ボーイ』を手掛け、国内外で高い評価を得る。その後も『FLOWERS -フラワーズ-』(10年)、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(13年)など話題作の監督を務めている。座右の銘は「気宇壮大」。

北島直明(きたじま・なおあき)
1980年4月25日生まれ、徳島県出身。2004年に日本テレビ・事業局 映画プロデューサー。『ちはやふる』シリーズのほか、『藁の楯』(13年)、『オオカミ少女と黒王子』(16年)『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(17年)などを手掛ける。公開待機作として『ママレード・ボーイ』(18年)『50回目のファーストキス』(18年)がある。現在はハリウッドでリメイク版『藁の楯』を製作中。座右の銘は「One Chance One Make」。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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