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テレビ東京が今春から新設したドラマ枠「ドラマBiz」。「経済・ビジネス」と「ドラマ」の2つを掛け合わせた、テレ東らしい番組枠だ。
その第一弾は『ヘッドハンター』。多くのサラリーマンにとって、心ざわめくテーマだ。
「あなたの値段、いくらですか-?」「転職。それは人生のサスペンス」というキャッチコピーも、いかにもテレ東らしい。経済ドラマの本質を突く、魅力的な宣伝文句だ。

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江口洋介/Eguchi Yosuke in Taipei September 25, 2006.(写真: ロイター/アフロ)


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■テレ東らしい出演者

出演する3人の俳優が、これまたテレ東らしい。
主人公は『日経スペシャル ガイアの夜明け』の案内人を務める江口洋介。2人目は、同番組でナレーションを務める杉本哲太。そして3人目が、『日経スペシャル カンブリア宮殿』でインタビュアーを務める小池栄子。ドラマでありながら、テレ東らしい夜10時台の経済ドキュメンタリーも、しっかり宣伝するコスパの良い戦略だ。

江口洋介は言うまでもなく日本を代表する俳優で、正統派の正義感の強い役柄が多い。近いところでは、2016年の『はじめまして、愛しています。』で、子供を養子縁組する難しさと血縁関係のない大人と子供が親子になっていく姿を描き、尾野真千子とともに感動的な演技を披露した。その翌年の『黒革の手帖』では、政治家の役を演じた。さらに今年の『BG~身辺警護人~』では、エリート刑事役を演じた。
いつも正義の匂いがつきまとう役だが、今回の『ヘッドハンター』では、やり手人材斡旋会社"SAGASU"の社長・黒澤和樹役で、悪の顔も併せ持つ、複雑な役を演じている。

和樹の右腕となる灰谷哲也役が杉本哲太。
前クールの『FINAL CUT』では、テレビ局の報道番組プロデューサー役を演じた。実は小心者でありながら、部下の手柄を横取りして評価を得る、という姑息な男の役をまるで杉本自身がそうであるかのようなリアルな演技で、ドラマに強烈な色を発していた。
高いPCスキルを持つ若手社員、舘林美憂は徳永えり。普通の若者に見えて、優れた洞察力を持つ変わり者という内面的に単純ではない役に体当たりしていく。
黒澤の最強のライバル会社で、業界最大手"ブリッジ"の女社長・赤城響子は小池栄子。彼女のパワフルなイメージが、男社会のビジネス界で強烈な存在感を示している。

■テレ東らしい題材

転職の際の"ヘッドハンティング"は、転職エージェントや登録型の転職活動とは異なる。
重役ポストで一般に求人をかけられない人材を会社が求める時、会社が求めるタレントをヘッドハンターに依頼をし、その仲介で買い取るという仕組みだ。スポーツ界などで、スカウトマンがいて良い選手を引き抜いてくるのに似ている。

今や、終身雇用の時代は終わり、転職をする人は年々増えており、能力の高い人が外へ出てしまうと、会社側の人材不足も増し、そこへヘッドハンターの需要が生まれる。
「会社に尽くすために仕事をするのではなく、自分を生かすために仕事をする」という人は増えており、冒険を好まず、安定や持続性の安心を好む人には不向きだ。また転職しようと思っていても、時間がない、会社にバレたくないなど、さまざまな理由で躊躇(ちゅうちょ)する人も少なくないだろう。

■テレ東らしい映画的世界

ヘッドハンターを合理的にうまく使えばメリットはあるが、企業側とヘッドハンティングされる側の、各々の弱みに付け込んだ仕事にもなり得るから、使い方を間違えれば人生を台無しにする爆弾にもなりかねない。
江口洋介演じる黒澤は、冷たいほどに冷静で合理的。時に強引なやり方でハンティングもするが、その理由は彼の過去にあるようだ。
和樹に手をかす元新聞記者・眞城昭(平山浩行)は、アングラな情報通で、『SAGASU』の裏の汚れ仕事を請け負っている。
このドラマでは、ヘッドハンティングに伴う裏の世界ものぞけるのも面白い。

最近のテレビドラマは映像のクオリティの高さに驚かされるが、この『ヘッドハンター』での撮影、光の加減、映像シーンのこだわり抜かれたカットは、星護監督の偉業と言っても過言ではない。
映画監督としての映画作品より、テレビドラマを手掛けた数の方が圧倒的に多いが、自身は映画監督であることを誇りに、シーンを撮り続けているのではないかと思われる。
その厳しくも熱い信念が、俳優陣を盛り上げ、凛(りん)とした芯のある演技を生み出している。

音楽は、エッジの効いたエレクトロ系で、都会的に仕上がっている。ただしボリュームがやや大きいので迫力は出るが、演技とシーンのバランスを見るとややデコボコした印象も受ける。
それでもスタイリッシュな音楽がカッコイイので、今後も魅せて聴かせてくれるだろう。

引き続き名優たちの演技とスタッフの匠の技を、映画鑑賞するように楽しみたい。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修・次世代メディア研究所

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