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 『警視庁物語』シリーズや『実録』シリーズの東映が、白石和彌監督を要して製作した映画『孤狼の血』(5月12日公開)。暴力団対策法成立直前、昭和63年の広島県を舞台に繰り広げられる、暴力団と警察との関係を描いた本作は、近年の若年層向けのキラキラ、胸キュンとは真逆のハードな作品に仕上がっている。まさに日本ノワールの復活ともいえる力作のメガホンをとった白石監督が熱い胸の内を語った。

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白石和彌監督/映画『孤狼の血』(5月12日公開)
(c)2018「孤狼の血」製作委員会


【特報】映画『孤狼の血』>>


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■出てくる男たちがとにかく格好いい!

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役所広司、松坂桃李、真木よう子 出演映画『孤狼の血』(5月12日公開)
(c)2018「孤狼の血」製作委員会


――役所広司さんをはじめ、ハードな男たちの生きざまが描かれている作品ですね。

白石: 群れずに自分の意思を貫く強さや武骨な感じが、見ている人に伝わればいいなという思いで挑みました。露悪的なシーンが強調されがちなので「男が見る作品」と思われるかもしれませんが、単純なエンターテインメント作品という側面も大いにあるので、ぜひ女性の人にも見ていただきたいです。本当に、役所さんや(松坂)桃李くんをはじめ、出てくる男たちがとにかく格好いい。

――おっしゃるとおり、役所さんは圧倒的な存在感と沸き立つような匂いを感じる演技をされていますね。

白石: 企画を投げて本を読んでいただいたとき「すぐにやります」と言ってくださったと記憶しています。衣装合わせのときに芝居のトーンをどこに置くかという話はしました。僕は(役所が主演の)『シャブ極道』が好きだったので「あの感じで刑事になってシャブを打っていない感じ」みたいな(笑)。

■松坂桃李がトップ俳優になっていく足掛かりとなる作品になったのでは

―― 大上の相棒となる松坂さんの演技も高い評価を受けています。白石監督は過去にも松坂さんとご一緒していますが、本作の松坂さんはいかがでしたか?

白石: もともと知名度のある役者が、なにかのタイミングで「すげーな」と改めて感じることってあるんです。桃李くんも数々の作品に出演して、すでに評価されていますが、これまで積み上げてきたものが、爆発してさらに一段上がるような感じがしました。彼が今後トップ俳優になっていくきっかけの作品になったのではと、僕としては思っています。

――現場で松坂さんには、なにか特別な演出はしたのでしょうか?

白石: 物語後半である出来事が起きてから、彼がしっかり立たないと、作品自体が大変なことになってしまうと感じていたので、どう演じてもらうかは真剣に考えました。

――男臭い作品ですが、真木よう子さんや阿部純子さんら女性キャストも輝きを放っていました。

白石: やくざと警察という男社会のなかで生き抜いている女性という視点でみれば、殴り合いで勝てるわけはないので、それに勝るしたたかさや頭の良さを持っているはずなんです。そういった生き方のすべを知っているという見え方は意識しました。真木さんはもちろんですが、阿部純子さんはストーリー展開のなかで、非常にキーを握る存在だったので、彼女がこけてしまったらすべてが失敗してしまう......というぐらい重要でした。でもとても頭のいい子で、若いけれどすごく大変な経験をしているので、そういったものが内からにじみ出ていた。すごく良かったですね。

■映画を2時間に収めるということ

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白石和彌監督/映画『孤狼の血』(5月12日公開)
(c)2018「孤狼の血」製作委員会


――骨太の映画ですが、ユーモアがあり笑える場面も多い。白石監督作品の特徴だと思うのですが。

白石: 綿密に計算しているわけではなく、動物的な感覚でそういうものは入っていると思います。笑える場面があると、よりシビアな部分が強調されますから。脚本に沿って撮影はしますが、編集段階ではそのとおり
つなげないので、撮ってみていろいろなアイデアが浮かぶことは多いです。

――編集作業は大変ですか?

白石: 苦しいけれど楽しいですね。いまはシネコンで映画を上映するには、2時間15分という時間が目安になってくる。それを超えると上映回数が減ってしまうのです。そのために結構、尺はシビアにみられる。20巻以上とかある漫画原作を2時間に収めるのなんて、本当に大変だと思いますよ。2時間の映画にするには、2時間のプロットが必要。だからみんな苦労して膨大な原作漫画を切っていくんです。それなのに、原作者やファンからいろいろ言われるわけでツライですね(笑)。

――やはり尺の制限は大変なのですね。

白石: でも僕は2時間という尺は悪くないと思っています。2時間あれば十分語れる。ただこの映画も2時間を切れないのは理由があるのです。それは過去があるから。日本人って「過去にこんなことがありました」というところを見せてから物語が始まるという展開が好きなのかもしれませんね。でも一番強いものって"いま"であって、そういう映画を作らなければいけないのだろうなという思いはあります。そこは課題です。

――プロットを含め、本作は素晴らしい2時間6分だと思います。

白石: ミステリーで登場人物が多い作品。語弊を恐れずに言うと『仁義なき戦い』のような、けんかが始まってしまい、抗争の話に終始すれば、人が多いというのは武器になるのですが、謎を含ませながら展開しなければならないことにより、情報量が格段に多いんです。それを整理して見せることはある程度必要なので(脚本の)池上(純哉)さんは苦労されていました。

――脚本という意味では、キャラクターがみなどこかかわいらしいというか愛すべきところを持つような人たちでした。それも白石監督作品の特徴のような気がします。

白石: どす黒いところがありつつも、本当に嫌なやつなんていないという部分は描きたかった。ちょっとしたしぐさや行動でも、そういった部分がにじみ出たらいいなというのはどの作品でもあります。

■白石監督にとって魅力的な俳優とは

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白石和彌監督/映画『孤狼の血』(5月12日公開)
(c)2018「孤狼の血」製作委員会


――本作も"白石組"常連の俳優さんが多数登場していますが、監督にとって好きな俳優というのはどういった方なのでしょうか?

白石: 顔力のある人かな。イケメンということではなく、顔に色気があるというか......。あとはその人がどんな人生を歩んできているか、仕事をどういうふうに思っているか、しっかり考えている人が好きですね。物事をあまり考えていない人は俳優に限らず魅力的に感じません。例えば、リリー(・フランキー)さんや(ピエール)瀧さん、音尾(琢真)くんと飲みに行っても、仕事以外の話をすることが多い。ちゃんと世の中を自分の目で見て、自分の言葉でしゃべって、自分の解釈を持っている人は魅力的です。

――白石監督とご一緒した方は、白石組でまたお仕事することを熱望される方が多い印象があります。

白石: そういってくださるのは監督冥利(みょうり)に尽きますね。僕もまたみなさんとやりたいと思っています。でも僕は役者のために映画を作っているのではなく、物語ありきなんです。納得いく本を作って、そのうえで「この役だったら誰かな」という当てはめ方をします。音尾くんやリリーさん、瀧さんぐらいかな、「特別枠で役を作ろう」という俳優さんは......。リリーさんや瀧さん、山田孝之くんは僕を(映画『凶悪』で)メジャーシーンに押し上げてくれた人たち。もちろん孝之くんも常に一緒にやっていきたい人なのですが、彼と仕事をするなら、こっちもそれ相応のものを用意しなければならないですからね。

■アイデアを出せる環境を作るのが僕の仕事

――監督からみた白石組の魅力とは?

白石: アイデアを出してくれる人たちがいるということ。そのために僕はアイデアを出しやすい環境を作ることを心がけています。一番残念なのは、せっかくいいアイデアを出しても、しっかり考えずに何も考えずに却下しちゃうこと。それは仕事をするうえで魅力的じゃないので、なるべく風通しをよくしています。

――東映さんとのタッグはいかがでしたか?

白石: 古き良き映画の気持ちが残っている会社ですね。今回、すごく気合が入って興奮している感じのまま「大ざっぱで空回りしているかな」と思う部分も多々ありますが、それを含めていいなと感じます。ただやっぱりやるからには勝ちたい。勝つためには成功体験は絶対必要なので、この映画がその起点になってほしいと思っています。

(取材・文・撮影:磯部正和)
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白石和彌(しらいしかずや)
1974年12月17日生まれ、北海道出身。若松孝二監督や行定勲監督、犬童一心監督などの助監督を経て、2010年公開の映画『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編映画デビュー。2013年公開の『凶悪』では、第37回日本アカデミー賞・優秀監督賞および優秀脚本賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。その後も『日本で一番悪い奴ら』(16年)、『牝猫たち』(17年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)、『サニー/32』(18年)など次々に話題作を世に送り出している。座右の銘は「失敗は成功のもと」。

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