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 数々のテレビドラマの演出家として活躍し、映画でも『愛の流刑地』や『後妻業の女』などシニカルかつコミカルで独特なキャラクター造形とストーリー展開をみせる名匠・鶴橋康夫監督。そんな鶴橋監督の最新作は、小松重男の短編小説「蚤とり侍」を題材にした愛と笑いの痛快人間喜劇『のみとり侍』(5月18日公開)だ。主演を務めた阿部寛をはじめ、豊川悦司、寺島しのぶ、大竹しのぶら、名優たちから絶大なる愛を受ける鶴橋監督に、映像を撮るうえでのポリシーや哲学を聞いた。

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名匠・鶴橋康夫監督が、小松重男の短編小説「蚤とり侍」をモチーフに描いた『のみとり侍』(5月18日公開)


【特報】映画『のみとり侍』>>


■映画作りに大切なのは信頼関係

 1962年に読売テレビに入社以来、50年以上に渡り、数々のテレビドラマや映画作りに携わってきた鶴橋監督。「200~300人は出演してもらっているんじゃないですかね」とこれまで携わってきた俳優たちの数を明かすが、本作にも、豊川や寺島、大竹や風間杜夫など、いわゆる鶴橋組常連と呼ばれる俳優たちが多数出演している。そしてその多くが「鶴橋組は最高だ」と絶賛する。

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阿部 寛 主演映画『のみとり侍』(5月18日公開)


 こうした声に鶴橋監督は「うれしいですね」と笑顔をみせると「映画もドラマも一人では撮れない。僕は起点として企画や脚本を担当し、顔は役者さん、そしてスタッフは、ささやかな表現の自由を持っていると思っている。そういった人たちが集まって作品はできる。やっぱり信頼関係は大切なんです」と物づくりへの基本的な考え方を述べる。

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撮影現場での鶴橋康夫監督『のみとり侍』(5月18日公開)


 さらに鶴橋組の現場は、コンテ表が何度も変わるという。「現場において、リアリティを持って撮った方がいいのか、それとも大らかに撮った方がいいのか......みんなが納得する方法で撮るのが一番いい。だからこそ信頼関係は重要なんです」と語ると、本作でも現場でコンテ表は何度も書き換えられたという。

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寺島しのぶ、亡き妻・千鶴に瓜二つの女 おみね役『のみとり侍』(5月18日公開)


 「今回は濡(ぬ)れ場も多かったのですが、最初は僕と助監督で絵コンテ通りやる。それを阿部さんや寺島さんがずっと見ている。すると寺島さんが『私こんな感じで撮られるの?』と言っているのや、阿部さんが『もっとうまくやった方がいいんじゃないかな』なんて言うのも聞こえてくるわけです。そうすると僕が考えたプランより、はるかにいいものを出してくる。素晴らしい演者の想像力と演技の引き出しですよね」と役者という職業のすごさをしみじみと語る。

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猫の"蚤とり"とは、女性に"愛"をご奉仕する裏稼業だった......『のみとり侍』(5月18日公開)


■鶴橋組の新メンバー、斎藤工&前田敦子を絶賛

 確かに、鶴橋組の常連俳優は、日本でも有数の演技派が顔をそろえる。「僕は社会派じゃなく生活派、日常派の監督。普段の生活にある、怖さや痛快さを撮るためには、薄っぺらな俳優さんだとダメ」と好みの俳優のタイプをあげるが「でも薄っぺらだと思っていたら、そうじゃない人もいるので難しいですよね」と苦笑いを浮かべる。その逆もあるそうだが「やっぱり心底、心を語り合える人がいい。僕が長くお付き合いいただいている役者さんはみんな素晴らしい人たちばかりです」と鶴橋監督にはなくてはならない役者たちだという。

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斎藤工、貧しい子供たちに読み書きを教える友之介役『のみとり侍』(5月18日公開)


 そんな鶴橋組に斎藤工と前田敦子という新しいメンバーが参加している。「斎藤工さんはWOWOWの司会をされていたところを拝見して、出演交渉をしてみたんです。髪の長いハーバード大学出の秀才みたいなイメージがあって、この人にABCを習ったらきっと英語が堪能になるんだろうな」と、本作で斎藤が演じる寺子屋の先生として無償で勉学を教えている佐伯友之介のイメージが最初からあったという。さらに「斎藤さんは映画監督もやっているので、彼に未来を託そうという気持ちにもなった」と賛辞を贈る。

 また前田についても「敦ちゃんも向田邦子賞の授賞式で、『北の国から』を撮っていた杉田成道から紹介されたのですが、さすがAKB48のセンターに立っていただけあってオーラを感じたんです。それで出演してもらったら、ものすごく良くてね。いまはもっとファンになってしまった。次の作品に、もし若い役があったら、なにがなんでも敦ちゃんだね」とこちらも最大級の評価をしていた。

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前田敦子、伊達男の亭主(豊川悦司)を持つ妻・おちえ役『のみとり侍』(5月18日公開)


 「あまりうちの組は代替わりしていない」と語っていた鶴橋監督だが、「バトンを渡していくのは僕じゃなくてもいい。今回、豊川さんは敦ちゃんと一緒に芝居をしていましたが、彼が現場を彼女になじませる役割を果たすこともある」と語る。「まだ企画は何本もあるので、この作品が『次を作ってもいいぞ』と言われるぐらいまでヒットすれば、次の日にでも企画は出したいですね」と豪快に笑った鶴橋監督。――その勢いはとどまることを知らない。

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阿部 寛 主演映画『のみとり侍』(5月18日公開)


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貴方のみ、愛しています――。愛と笑いの痛快人間喜劇、ここに誕生。
生真面目なエリート侍が、たった一つの失言で、ある日突然左遷されてしまった。侍の新たな仕事は、お客の飼い猫の蚤(のみ)をとるサービス業。しかし、その実態は......?
『後妻業の女』の監督・鶴橋康夫が約40年間、映画化を熱望し続けた本作。阿部寛、寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、松重豊、桂文枝が出演。
映画『のみとり侍』は5月18日公開。

(C)2018「のみとり侍」製作委員会
(取材・文・撮影:磯部正和)

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名匠・鶴橋康夫監督が、小松重男の短編小説「蚤とり侍」をモチーフに描いた『のみとり侍』(5月18日公開)


鶴橋康夫(つるはしやすお)
1940年1月15日生まれ、新潟県出身。1962年に読売テレビに入社すると、数々のテレビドラマを手掛け、1981年に「五瓣の椿」「かげろうの死」で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。その後も、さまざまな賞を受賞し、2007年には紫綬褒章、2013年には旭日小綬章を受賞するなど、日本を代表する演出家として、多くのキャスト、スタッフから絶大なる支持を受けている。座右の銘は、自身が作った詩「なんかこう、命をかけて、花りんご」。

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