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 "寅さん博士"と異名を持つほど大の『男はつらいよ』ファンである落語家の立川志らく。そんな彼が「大きな夢が叶った」としみじみ語ったのが、山田洋次監督最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(5月25日公開)への出演だ。劇中、盗難事件の捜査のために平田家にやって来た刑事役を演じた志らくが、憧れの現場を経験した感想や、山田監督作品の魅力などを大いに語った。

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山田洋次監督 最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(5月25日公開)


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■夢にまでみた山田洋次監督の現場

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山田洋次監督 最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(5月25日公開)


――志らくさんの山田監督への思いはいろいろな場面で見聞きしていましたが、今回の出演の経緯を教えてください。

志らく: 山田監督を囲んでご飯を食べる「シネマ会」というのがありまして、私は第1回目から時間があるときに参加していたのですが、その席で山田監督から直接「次の新作に興味あるなら出てみない?」と声をかけていただいたのです。もう「出ます!」と即答しました。とてもありがたかったです。

――お話をいただいたときから、すでに役柄も決まっていたのでしょうか?

志らく: はい。刑事の役で(林家)正蔵さんと一緒のシーンがあるという話をされました。私が高座で正蔵さんの悪口を言っているのを知っていたのか、スタッフから「正蔵さんと一緒なのは大丈夫でしょうか?」って聞かれましてね(笑)。「そりゃあ、愛情の裏返しですよ」と返したのですが、私は『家族はつらいよ』での正蔵さんの役柄がすごく好きで、役者として素晴らしいと思っていたので「ぜひぜひ」という気持ちでした。

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立川志らく、憧れの山田洋次監督作品に出演(5月25日公開)


――志らくさんにとって、山田洋次監督の映画に出るというのはどんな気持ちなのでしょうか?

志らく: 外ロケ1日、スタジオ2日の合計3日間の撮影だったのですが、一つの夢が叶ったというぐらいの気持ちです。自分の人生を振り返ってみても、これまで夢が叶ったと思ったことはほとんどなかった。もちろん「落語家になる」というのは夢でしたが、真打になるというのは夢ではなくプロセスなので。それぐらい大きな喜びでした。

――実際の現場はいかがでしたか?

志らく: スタッフや役者を含め、周りの緊張感はすごいですね。それは山田監督だけじゃなく、小津安二郎監督、黒澤明監督などみんなすごく厳しい現場だと耳では知っていたのですが、山田監督もすごくピリピリしていました。フィルムでの撮影、基本的には順撮りなので、セットチェンジにも時間がかかりますし、手間がかかるぶん、やっぱり緊張感はすごいですね。また『男はつらいよ』で渥美清さんがやっていたと聞きましたが、前日の録音したものを次の日聞かせてから撮影を行うというのも実際そうでした。

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わたしたち、「主婦」辞めます! 妻の反乱で、夫たちに史上最大のピンチが訪れる――


――現場を経験して山田監督への思いはさらに強くなりましたか?

志らく: もともとすごく尊敬している人で、その現場を目の当たりにして、話で聞いていたことが本当だったと実感しました。私は刑事の役でしたが、本物の刑事を現場に呼んでいました。そういうところも徹底していましたね。

■人生経験を経て、山田洋次監督の魅力に気づいた

――山田洋次監督作品との出会いは?

志らく: 最初は洋画の方が好きで、ハリウッド映画を中心に鑑賞していました。邦画はせいぜい黒澤明監督ぐらい。黒澤監督はすごいなって思っていましたけれど、まだ小津安二郎監督の良さはわからなかった。『男はつらいよ』も何本か見ていたけれど、あまりピンとこなかったのです。変わったのは30歳過ぎたぐらいから。落語の世界に入って10年ぐらい修業して、人生経験をしたら小津安二郎作品がこんなに面白いのかと気づいたのです。何度繰り返してみても笑えて泣ける。そこからいろいろな映画を見るようになって『男はつらいよ』も見返すようになってはまっていきました。

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ファン待望の喜劇映画「家族はつらいよ」の第3弾(5月25日公開)


――どんな部分が新たな気づきだったのでしょうか?

志らく: 渥美清さんのすごさもありますが、時間を気にしないで見られる映画ってなかなかない。深いし名人芸も随所にみられる。最初から見ていて30何作目になってくると、あと10作ちょっとで終わってしまうのだと寂しくなってくるのです。最後まで見たら、今度は最後からさかのぼったり、"さくら"だけ中心で見たり、作品に好き嫌いはあるけれど、見るたびに発見がある。良い映画は年令と共にどんどん面白くなっていくものです。

――『家族はつらいよ』の魅力を教えてください。

志らく: 「日本映画はこうあるべきだ」という山田監督のメッセージです。昔は日本人にしか撮れないこういう映画はたくさんあった。小津安二郎、成瀬巳喜男、木下恵介、黒澤明......。黒澤監督は日本映画でもハリウッド作品のようなものが作れるという考えの方でしたが、個性的な映画監督がたくさんいて、それを追いかける映画人もいた。ホームドラマにしても、いまは害も毒もないようなものが多いですが、昔は鋭く人間を描いたり、衝撃があったり......。そういったものを『家族はつらいよ』ではみせてくれているような気がします。

■「家族はつらいよ」の林家正蔵はものすごくいい!

――映画への造詣が深い志らくさんですが、今後映画というメディアでやってみたいことはありますか?

志らく: これまで自主映画は5本ほど監督をしたのですが、私は映画ファンなので、どうしてもカルト映画になってしまうのです(笑)。映画はテクニックが必要で、感性だけでは作れませんから。いま演劇(劇団下町ダニーローズ主宰)で落語の表現ができないかという試みをやっているのですが、落語のエッセンスを映画で表現することをやってみたい気持ちはあります。でも長い経験のなかで、やっぱり映画は見るものだなとも思います(笑)。

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山田洋次監督最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(5月25日公開)


――志らくさんにとって良い俳優とは?

志らく: あまり「うまいな」と感じる人は好きではありません。渥美清さんを見て「うまいな」とは思わない。芝居していると感じさせない人が好きですね。その意味では、この映画の正蔵さんの芝居は大好きです。監督やスタッフさんも皆さん「正蔵さんには苦労した」とおっしゃっていましたし、ものすごく無器用なんだと思う(笑)。でも映像だとものすごくいいんですよね。他の役者にできないものを持っている。

――座右の銘を教えてください。

志らく: いろいろな言葉はあるのですが「自信と怯(おび)えの共存」ということをモットーにしています。落語やその他のことをやるとき、100パーセント自信だけだと、見ている人にとって鼻につく芸になる。逆に怯えばかりが目立つとお金はとれない。半々だといいかといえばそうではなく、6対4ぐらいで自信が勝っている方がいいのかなと思います。

――コメンテーターなどでも活躍されていますが、そのときもこういった考えで?

志らく: そうですね。自分の発言していることが100パーセント正しいとは思っていません。私は常識的な人間ではないので。でもいろいろ発言を求められるときがあります。そのときは「どこかで自分が間違っている可能性はある」という意識でいます。

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わたしたち、「主婦」辞めます! 妻の反乱で、夫たちに史上最大のピンチが訪れる――。
「男はつらいよ」シリーズ終了から20年の時を経て山田洋次監督が作り上げた、ファン待望の喜劇映画「家族はつらいよ」の第3弾。三世代でにぎやかに暮らす平田家。ある日、主婦・史枝(夏川結衣)がコツコツ貯めていたへそくりが盗まれた! 夫・幸之助(西村まさ彦)からは嫌味の嵐......ついに我慢も限界に達し、史枝は家を飛び出してしまう。掃除、洗濯、食事の準備......主婦がいなくなってしまった平田家の暮らしは大混乱! 家族崩壊の危機に......!? "主婦への讃歌"をテーマに、すべての女性が笑って共感し、しみじみ泣けて励まされる、"家族のラブストーリー"が幕を開けます。

【本編】映画『家族はつらいよ』(2016年)(01:47:46)>>


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(取材・文・撮影:磯部正和)
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立川志らく(たてかわ・しらく)
1963年8月16日生まれ、東京都出身。1985年、大学在学中に五代目立川談志に入門し落語の世界に。1995年に真打に昇進。映画好きとしても有名で『キネマ旬報』に映画エッセイ「立川志らくのシネマ徒然草」を連載中。1998年に『異常暮色』で映画監督デビューを果たし、これまで5本の自主映画で監督を務める。その他、情報番組「ひるおび!」のコメンテーターなども務め、マルチな活躍をみせている。座右の銘は「自信と怯えの共存」。
6/7~6/17、作 演出 主演の下町ダニーローズ公演「人形島同窓会」を下北沢・小劇場B1で開催。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
エンタメ業界を担う人が見ている「視線の先」には何が映るのか。
作品には、関わる人の想いや意志が必ず存在する。表舞台を飾る「演者・アーティスト」、裏を支える「クリエイター、製作者」、これから輝く「未来のエンタメ人」。それぞれの立場にスポットをあてたコーナー<視線の先>を展開。インタビューを通してエンタメ表現者たちの作品に対する想いや自身の生き方、業界を見据えた考えを読者にお届けします。

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