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前年度上期の朝ドラ「ひよっこ」は、前作「べっぴんさん」の影響を受け、当初2カ月あまり、視聴率が不調だった。ところが「あかね荘」での暮らしが始まった辺りで数字は上向き、13週目からついに週平均が20%台の大台に乗り始めた。
その「あかね荘」の大家・立花富役を演じたのが白石加代子(76歳)。
昔は赤坂きっての売れっ子芸者だったという設定で、何とも不思議な存在感を出していた。
彼女の魅力は「サワコの朝」を見ると、「なるほど!」と納得できるユニークな俳優人生にあるようだ。

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Sawako Agawa holds a talk show at the Mitsukoshi department store in Tokyo on Sunday, April 2, 2017. (写真:つのだよしお/アフロ)


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■早稲田小劇場前

小さい頃から演劇に憧れを抱く子供だった。
小学校で児童劇団の行事があったが、それから劇に夢中になっていた。
ところが逓信省の役人だった父が、5歳の時に結核で亡くなると、家計は非常に苦しくなった。母はおっとり型の頼りない人で、弟が就職するまで長女として家計を支えなければならないという責任感から、高校卒業後は公務員試験を受けて港区役所に就職した。

それでも演劇の夢は捨てきれず、路上で踊ったりして、近所でも評判の変人だったという。テープレコーダーを購入し、高村光太郎の詩の朗読など、自分でも独自に練習をしていた。
そして役所勤めを7年続けた後、弟の就職が決まった1967年の春に退職した。早稲田小劇場の鈴木忠志に出会い、「こんなすてきな人がいるんだあ」とすぐに入団したのである。
小劇場の人々は、安定した公務員の仕事を投げ出して、食えない役者稼業を始めるとは、「変なやつがいるなあ」と好奇の目で迎えたそうだ。

■小劇場時代

番組ではゲストに、「記憶の中で今もきらめく曲」を選曲してもらっている。
白石が選んだ曲は、美空ひばり「越後獅子の唄」(1950年 作詞:西條八十 作曲:万城目正)。その理由は、所属した早稲田小劇場が富山県の利賀村に本拠地を移したが、そこでの練習がハードで、掃除をしながら皆で歌った歌だったからだという。
「今日も今日とて 親方さんに 芸がまずいと 叱られて 撥(ばち)でぶたれて......」
この「芸がまずいと 叱られて」は、団員全員の大合唱だった言う。厳しさが楽しい思い出となる瞬間だ。

小劇場の中で白石は、狂気女優として評判になり、同劇団の看板女優になっていく。そのきっかけは、「舌切り雀」のおばあさん役だった。
白石はかわいい雀の立場と、憎たらしいと考えるおばあさんの立場を忖度(そんたく)した。その結果、舌を抜いた後、手を放すと飛んでいく雀を見て、おばあさんが突然「はっはっはぁ~」と哄笑(こうしょう)したのである。
一瞬にして周りは凍り付いた。何とも言いようのない"不気味な笑い"だったからだ。「変わった感性のやつ」と思われ、そこから女優の道がにわかに開かれて行ったという。

■サワコvs.加代子

「陸王」で阿川が演じた正岡あけみの役を、白石は絶賛する。「自意識がものすごく上手だった。役者はすご苦しむのよ」と評した。
普通は自意識があるので、顔の筋肉がピクピクしてしまう。それがなく、極めて自然だったというのだ。
サワコはこう返した。「昔から無意識過剰って言われる」「きれいに映りたいとか、自意識はあるんですよ」
白石は「こういううまい人とは、私はやりたくないと思うんですよ」と手際よくお話を終了させる。

逆にサワコは、かわいいおばあさんから不気味な老婆まで、さまざまな役を演じ分ける白石を絶賛する。
芸歴50年にして初出演したNHK連続テレビ小説での、ヒロインが住むアパートの大家役を持ち出した。
「かわいらしい大家だった。どう演じようとした?」とサワコ。
「最初はあまり色がなかったが、どんどんスタッフが遊び始めた。どんどんおちゃめなキャラに変化していった。本人も徐々に"ここはこんな風に面白くした方が良いかな"と考え始めた結果」だったという。

さすがに、過去の凄まじい数々の演技の結果と言えよう。
例えば、映画作品では『女囚さそり 第41雑居房』では、主人公にライバル心を燃やし、男憎さのあまり、その赤子を殺すために自分の腹に刃物を突き立てた過去を持つ女囚役が強烈な印象を残した。
他にも、『悪魔の手毬唄』(1977年)、『魔界転生』(1981年)、『八つ墓村』(1996年)などで、印象的な役を数多く演じてきた。

人に歴史ありというが、役者は芸歴に応じて引き出しが増え、突出した存在になるようだ。白石のトークを見ていると、役者の奥の深さを痛感させられる。

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文・次世代メディア研究所

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