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TBSの日曜劇場「この世界の片隅に」が、静かに幕をあけました。
舞台となった広島県呉市は、先日の大雨によって被害を受けた方々が大勢住んできた場所。自然豊かな美しい街が、元の姿に戻り、住民の皆様の当たり前の生活が一刻も早く戻ることを願います。

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イメージ画像 有明海のノリヒビ(ペイレスイメージズ/アフロ)


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■一味違う戦争ドラマ

さてドラマの主演は、松本穂花と松坂桃李。夫婦役を務めています。共演者は二階堂ふみ、村上虹郎、尾野真千子、仙道敦子、宮本信子、伊藤蘭、榮倉奈々、ドロンズ石本ら。豪華なキャスティングで、安定した実力派俳優たちが作り上げる世界は、引き込まれること間違いなしです。
原作はこうの史代の漫画作品で、『漫画アクション』に連載されていた『この世界の片隅に』です。2011年8月にドラマ化され、2016年には片渕須直監督によってアニメ映画化されました。日本国内で異例のロングランとなる大ヒットで、大きな話題を呼びました。この映画は日本アカデミー賞最優秀アニメーション賞を初め、数々の賞を受賞しました。さらに世界各国で翻訳もされています。
原爆という戦争の象徴的なエピソードから、一歩離れた視点で戦争と向き合うドラマです。「戦争による暴力がいけないのではなく、戦争そのものがいけないのだ」と、改めて考えさせられる素晴らしい作品です。この大作をドラマシリーズ化することで、より細かい描写で細部を表現できます。これまた海外で翻訳され放送される機会があればと願うばかりです。

■日本の美しい風景

ストーリーは、現代のカップル近江佳代(榮倉奈々)と古舘佑太郎(江口浩輔)が、佳代のリクエストでドライブをしながら、主人公、浦野スズ(松本穂花)が住んでいた家を訪れるところから始まります。近江佳代は、一体、スズとはどういう関係なのでしょうか。
美しい風景が広がり、呉の街並みが映ると、日本はなんて美しい国なのだろうと改めて思い知らされます。そしてこの美しい風景は、呉だけではなく、日本の各地にありました。こうした自然に溢(あふ)れた豊かな風景を、戦争が破壊して行ったのです。それは想像を絶する苦難であり、現在の近代的に建設された街の風景とのギャップがあまりにも大きすぎます。戦争という事実が、本当に現実的に起こったものなのかさえも実感することが難しくなります。

■片隅で生きる人々

徴兵制度のため、若者男子のほとんどが戦争に行かなくてはなりませんでした。決死の覚悟で戦地へ赴く人の気持ち、送り出す家族の気持ちを、ドラマは繊細なタッチで描いています。ものに溢れた現代の若者の自殺は、年々数を増やし社会問題になっています。一方当時は、「死にたくない!」「必ず帰る」と言って、家を出て行く光景がたくさんあったようです。そうしたシーンを見るのは、本当に胸が張り裂けそうになるくらいつらいものがあります。人さらいにあった幼いスズと周作がキャラメルを口にした時、うれしそうにおいしそうに大切に食べていました。モノがないからこそ大切にする。存分に生きられないからこそ命の大切を知り、前に進む。ここに生き物の美しさがあると気づかされます。

映画のようなタッチで表現されており、とてもクオリティが高いドラマです。毎年夏になると、特別番組で戦争のドラマや映画が放送されます。それでも「この世界の片隅に」のような日曜劇場という、比較的視聴率がのびやすい枠で、ドラマ化され放送されることは、大きな意味を持つだろう。

■片隅を包む大きな世界

音楽は、久石譲がプロデュースしています。日本のアニメ映画界の巨匠が手がけているだけあって、まるで空気のようにシーンと音楽が溶け込んでいます。そして楽器のチョイスから、オーケストレーションなどあらゆる点で、巨匠の技を見せてくれています。ふと気づくと、ジブリの『天空の城ラピュタ』などの名画の世界にいるような錯覚にとらわれます。片隅に生きる人々を描いているのですが、音楽によりその世界の大きさを感じさせます。

初回の視聴率は10.9%でした。TBS日曜劇場としては、ちょっと物足りないと感じた人も多いでしょう。歌舞伎の大見えのような、大きくて派手な演技のない静かなドラマなので、こんなものかもしれません。それでもいつもと違う日曜劇場が口コミで話題を集め、「逃げ恥」の時にように徐々に数字を上げていく可能性も十分あります。劇場アニメ版と違って、初回の冒頭とエンディングには、現代版がついていました。これが原作にはなかった"その後"と深く関わってくるのでしょう。
スズと周作が厳しい状況をどう生き抜いたのか、前を向いて進む姿を見守りたいと感じるドラマです。

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コラムニスト: はたじゅんこ
監修・次世代メディア研究所

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