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 名カメラマン木村大作が3度目のメガホンをとった映画『散り椿』(9月28日公開)。"美しい時代劇"をテーマに、映像だけではなく登場人物の精神性にまでこだわった本作で、岡田准一演じる主人公・瓜生新兵衛や、西島秀俊ふんする榊原采女らをつなぐストーリーテラー的な役割を果たす若侍・坂下藤吾を演じたのが、池松壮亮だ。『春を背負って』以来、木村組二度目の出演となる。「大作さんの3作目に関わりたかった」とまっすぐなまなざしで語った池松が、本作の持つ魅力を語った。

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池松壮亮 出演の映画『散り椿』(9月28日公開)


【予告編映像】岡田准一 主演映画『散り椿』>>

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■自身の役者ポリシーと反してまでも参加したかった、木村組

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岡田准一 主演映画『散り椿』(9月28日公開)
(C)2018「散り椿」製作委員会


――池松さんが演じた坂下藤吾は、物語のストーリーテラー的な役割を果たしているような立ち位置でした。

池松: 黒木華さん演じる姉の里美の変化と、藤吾の成長は、主人公の心の変化とともに物語に作用してくると思っていました。まだ何者でもなく、自分の無力さにとらわれていつつも、新兵衛が目の前に現われたことで、徐々に自分の行く末が研ぎ澄まされていく変化を担うことができればいいなと思っていました。

――原作での藤吾は12歳という設定でした。映画では、年齢設定が上がっていますが、青臭さも大きな鍵になってくるキャラクターですね。

池松: 自分の最近の嗜好(しこう)としては、あまり若い年齢の役をやるのは躊躇してしまいます。なぜなら、その年齢に応じた俳優さんがやった方がいいと思うので。年下の役を演じたり、学生服を着たりするのは、抵抗があるのですが、大作さんが3作目を撮るというのは、日本映画界からすれば喜ばしいことですし、僕も近くで関わりたいという気持ちが強かったんです。

■木村大作監督作品は、上品で色っぽい出来上がりに

――会見で池松さんは木村監督の現場には"哲学がある"と話していましたが、木村組にはほかの監督の現場とは違う特別なものがあるのでしょうか?

池松: 映画というものを60年間かけて見てきた方。そこで感じるものはゆるぎないものがあります。

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映画『散り椿』(9月28日公開)
(C)2018「散り椿」製作委員会


――多重カメラでの撮影などもその一つなのでしょうか?

池松: 多重カメラという形上のものだと、デジタルですが、ドラマの現場では当たり前ですからね。それよりは、大作さんのもとにフィルムカメラが集まるというのはすごいことだと思います。今でも年間5本ぐらいはフィルムで撮影された作品はありますが、2台以上集まる現場はないんじゃないかと思っています。あと大作さんは、被写体との距離感が上品だなと感じます。黒澤明監督もカメラの気配を感じさせないと聞いたことがありますが、あまり「撮っている」と意識することがないんです。出来上がった作品を見ても、ワンカットワンカットに品があって、すごく色っぽくて上品なんです。

――他の作品とはどこが違うのでしょうか?

池松: フィルムの作品は撮影中、ある程度は把握していますが、モニターがないので、どう切り取られているのか未知の部分があります。でもふたを開けると、本当に美しいんです。それは大作さんのまなざしであり、世界の切り取り方、俳優との距離感がそうさせていると思うんです。作り物を写さない。例えば、新兵衛と藤吾のシーンも、とんでもない量の雪なんですよ。

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映画『散り椿』(9月28日公開)
(C)2018「散り椿」製作委員会


――確かに圧倒的な映像です。

池松: 物語や人物に都合のいい量ではない。あくまで自然と人間をどう捉えているかなんです。僕は平成という時代で映画をやってきて、日本映画に情緒とか情感、趣はもう映らないと思っていたんです。でもそれがしっかり映っている。もちろん時代劇がそうさせている部分はある。これが現代劇だったらこういう上品さや色気は出ないと思うんです。

――その映像に負けない俳優さんたちの佇(たたず)まいもあります。間も大きな意味を持つ作品ですね。

池松: その通りですね。僕はさておき、すばらしい俳優さんたちが集まっていますし、そこに大作さんのカメラが相まって「絵が持つな」と思いました。

■池松壮亮の考える時代劇とは

――次作『斬、』も時代劇ですが、池松さんにとっての時代劇とは?

池松: こんなこと言ったら時代劇を大切にしている人に怒られそうですが、あまり僕は"時代劇でこそ"と固執はしていません。"失われていく"という危機感も、ほかの人よりないと思います。ただ『散り椿』が現代劇だったら、登場人物の誠実さや精神性って通用しないと思うんです。その意味で、この作品は時代劇である必要がある。僕はそういう作品が好きなんです。次の『斬、』も時代劇だからこそ、表現できるものだと思ったので、出演を望みました。日本たるものを突き詰めると時代劇は必要だし、その意味では大切だと思います。とは言え、時代劇の傑作ってたくさんある。それを様式として美化しすぎる風潮は、少し違うかなと思うんです。

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池松壮亮 出演の映画『散り椿』(9月28日公開)


――劇中、「大切なものに出会えれば、それだけで幸せになれる」という言葉が出てきます。

池松: 僕らは高度経済成長後に生まれて、圧倒的な資本主義を生きてきた世代。「頑張ることがすべて」とか「お金をいっぱい稼ぎましょう」という時代を生きてきたので、こんな言葉を真正面から言われるとハッとしてしまいますね。

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映画『散り椿』(9月28日公開)
(C)2018「散り椿」製作委員会


――木村監督の現場で得たことを、受け継いで伝えていこうという責任感みたいなものはありますか?

池松: 例えば、会ったことがないどこかの国の好きな映画監督は、フィルモグラフィをたどっていき、そこからなにかを受け取って、つないでいこうという気持ちは常に持っています。今回は、目の前で大作さんの現場を経験しているわけで、それは触れた人の責任というか、役割として当然、今後どうやって映画と向き合っていくかということは強く意識しています。

【予告編映像】岡田准一 主演映画『散り椿』>>

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岡田准一 主演映画『散り椿』(9月28日公開)
(C)2018「散り椿」製作委員会


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ただ愛のため、男は悲しき剣を振るう――。不器用でも清廉に生きようとする侍たちの凛とした生き様、愛する女性の為に命を懸けて闘う男たちの切なくも美しい愛の物語。
主演は岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子、富司純子、奥田瑛二ら豪華俳優陣が集結。日本映画界に新たな歴史を刻む、"美しい時代劇"が誕生する。

(取材・文・撮影:磯部正和)

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池松壮亮 出演の映画『散り椿』(9月28日公開)


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池松壮亮(いけまつ・そうすけ)
1990年7月9日生まれ、福岡県出身。2003年、映画『ラストサムライ』でスクリーンデビューを飾ると、コンスタントに映画やドラマに出演。2014年は、木村大作監督の『春を背負って』ほか、『愛の渦』、『大人ドロップ』、『ぼくたちの家族』など印象的な作品に多数出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞のほか、数々の映画賞を受賞。待機作に時代劇『斬、』(11月24日公開)がある。座右の銘は「ちゃんとした大人になる」。

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