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 『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督&主演・佐藤健のコンビが贈る最新作『億男』(10月19日公開)。3,000万円の借金を抱えた男が、3億円の宝くじを当てるも、そのお金を親友に持ち逃げされたことから起こる、さまざまな人間模様を描いた本作。なぜ大友監督は"お金"をテーマにした映画化し、主人公の冴(さ)えない男を佐藤健に演じてもらおうと思ったのだろうか――。

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大友啓史監督&主演・佐藤健 『億男』(10月19日公開)


【予告編映像】大友啓史×川村元気×佐藤健×高橋一生『億男』>>

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■思いがけない大金を手にしたとき、人はどうするのかを描きたかった

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『億男』(10月19日公開)


――映画業界に進出以来、常に明確なテーマを持って作品を作られてきた印象の強い大友監督ですが、川村元気さんの小説を題材にした大きな理由は?

大友: まずシンプルにお金の話って面白いですからね。僕は以前『ハゲタカ』という作品でお金をテーマにしたのですが、この原作は『ハゲタカ』とはまったく違うアプローチでお金について書かれている点に興味が沸きました。主人公は大金を手にしますが、自分で稼いだものではなく、天から降ってきたようなもの。そういう類のお金を手にしたとき、人はどう変わっていくのかという命題は、とても面白いなと。

――主人公の一男は、借金を抱え日々の生活に追い込まれている冴えない男ですが、最初から佐藤さんに演じてもらいたいと思ったのでしょうか?

大友:原作を読んだとき、一男には生活に疲れた中年男のイメージを持ったので、最初から健くんが頭に浮かんだわけではないんです。何しろ脚本段階での人物造形に時間がかかって、なかなかキャスティングまで辿り着けなかった。脚本開発のプロセスの中で、借金で苦しんでいる男の話で、金額は3,000万円、そのぐらいのローンを背負っている人はたくさんいるだろうし、それに苦しむ姿にウエイトを置く見せ方ではいけないと、ふと思ったんですね。むしろ、今という時代の中で、人がどうお金と向き合っていくかを映画にしたいなと。そういった方向で考えると、どんどん健くんのイメージが湧いてきた。で、ある段階で彼にお願いしたいなと、素直にそう思ったんですね。

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『億男』(10月19日公開)


――佐藤さんとはどんな形で映画を作り上げていこうと思ったのでしょうか?

大友:突然、空から3億円が降ってきたら人はどういう風にその僥倖と向き合っていくのか、それをジェットコースターみたいな展開で描きたいなと。そこに地獄の閻魔(えんま)さまみたいなキャラクターがたくさん出てきて、目の前の借金を返すことに懸命で、お金への哲学もなにもない男が、親友の九十九や様々な人物に振り回され右往左往する中でお金との距離感を見出していく。話の展開や構成を含め、個人的には実験的な作品だと感じていて。その中で、何しろお客さんが感情移入していくであろう一男という主人公を、とにかく地に足の着いた存在にしたいなと。健くんとは、その都度話し合いながらね。まあ、一緒に作り上げていける人ですから。

――設計図に沿って進んでいくのではない、ドキュメント感は感じましたか?

佐藤:ライブ感みたいなのは、他の現場と比べても強いですね。現場でどんどん変わっていく感じは今回の現場は特に感じました。

■大友監督は、役者から湧き出るものを捉えてくれる

――佐藤さんは作品に臨むとき、なにか意識していることはあるのですか?

佐藤:与えられた役柄で、どこをどのように頑張ればいいのかというのは毎回考えます。今回で言えば、一男のキャラクターのどこを見せていけばいいのか、最初結構悩みました。

大友:一男はどこにでもいそうな人で記号性が高いキャラクターなので、肉付けにはこだわって話しましたね。例えば、一男の妻である(黒木華演じる)万左子に薦める絵本はどんなものなのか......みたいなものをしっかりイメージしたりとか。

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『億男』(10月19日公開)


――大友監督は佐藤さんとご一緒するとき、なにか意識されることはありますか?

大友:意識というか、出会ったとき健くんは20歳ぐらいだったのが、もうすぐ30歳でしょ。当然変化していくと思うのですが、その時々でこうして一緒に仕事ができるのはいいなと思います。いろいろなところで現場を経験して、俺の知らない佐藤健というのもいっぱいいると思うし、互いに再会したとき、なにか相手に刺激を与えられたらいいなという気持ちもあります。僕がくたばらない限り、今後も続いていく関係だと思うので、これからも、なにかものに触れるたびに「この役は佐藤健にどうだろう」みたいな意識が真っ先に浮かぶように思いますね。

――佐藤さんは、大友監督との再会で「もっと違う部分を見せよう」みたいな意識はあるのですか?

佐藤:もっと違うところを......みたいな意識はないです。大友監督のスタイルとして、役者を自分の計算どおりに動かして映画を作っていくのではなく、役者から湧き出てきたものを捉えようとしてくれる監督。逆に言えば、僕らからなにも出なければ、なにもない映画になってしまう。その意味では、自分がしっかりキャラクターを理解して、内から出していかないと......みたいな使命感は大友組では強いですね。

大友:僕は「計算し尽くして撮る」というタイプじゃないからね。

佐藤:大友組でしかできない表現というものはあると思います。

■現場を通して健はずっと一男として存在していて、不機嫌そうにみえることもあった

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『億男』(10月19日公開)


――その意味では役を演じるというよりは、なり切ることが必要だったのですね。

大友:この間電車の中でのシーンを改めて試写でみたのですが、健くんの髪型がめちゃくちゃでビックリしましたね。あれは芝居するというか、スクリーンに映る髪形じゃないなと思ったよ(笑)。朝ドラ(「半分、青い。」)やぎぼむす(「義母と娘のブルース」)を見ていた人が、この映画を見たら、どう感じるんだろうと(笑)。「今回疲れている役だからね」という話はしましたが、そうは言っても人生の疲れだから、なかなか出せるものじゃない。役を生きている感じだよね。撮影中は終始不機嫌だったしね。

佐藤:不機嫌というかずっと悶々(もんもん)としていましたね。

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『億男』(10月19日公開)


大友:確かに。ずっと悶々とした雰囲気で撮影していて、最後終わった瞬間「やっと終わった!」と言ったときの顔が別人だった。本当に撮影中は悶々としていて、なんだか不愛想というか、疲れていたり眠そうだったり(笑)。でもよく考えたら、そういう役なんだよね。不機嫌になるよな。

佐藤:演じているところというより、生活しているところを撮ってほしかったんですよね。

大友:牛丼の食い方とか本当に良かった。

――そういう佐藤さんを切り取ったときは「しめた!」と思うのでしょうか?

大友:撮っているときに「しめた!」と思うほど、いつも明確な答えは出ていないですね。今見ると、結果的には「しめた」ってことにもなるんだけど、撮っているときは、一男という人間の生き方を追いかけているので、「次こいつはどうするんだろう」「この後彼はどうするんだろう」という視点で見ているので、「撮れた」という感じとはちょっと違う。

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『億男』(10月19日公開)


――ドキュメンタリーを撮っているような感覚なのですか?

大友:一男が千住(藤原竜也)と会ってどうなるんだろうとか、その都度、気持ちの動きが次の場面へのヒントになる。それを積み重ねていくうちに、佐藤健くんが演じる一男の着地点が見えてくるという発想はドキュメンタリーに近いのかもしれませんね。でもあくまでも俳優たちが演じるフィクションですからね。いろいろな見方で楽しめる映画になっていると思います。

【予告編映像】大友啓史×川村元気×佐藤健×高橋一生『億男』>>

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お金とは何か? 幸せはどこか? 愛、友情、3億円。すべてを失った男の、お金と幸せの答えを探す"地獄めぐり"が始まる――。
大友啓史×川村元気×佐藤健×高橋一生が仕掛ける、新感覚マネーエンターテインメント。出演はそのほか、黒木華、池田エライザ、沢尻エリカ、北村一輝、藤原竜也。
映画『億男』は10月19日公開。

(取材・文:磯部正和/撮影:ナカムラヨシノーブ)

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『億男』(10月19日公開)


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大友啓史(おおとも・けいし)
1966年生まれ、岩手県出身。1990年NHKに入局。1997年から2年間ロサンゼルスに留学し、ハリウッドで脚本や映像演出について学ぶ。帰国後、連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズ(01年)や、『ハゲタカ』(07年)、大河ドラマ『龍馬伝』(10年)の演出を務める。09年公開の映画『ハゲタカ』で映画監督デビューを果たすと、『るろうに剣心』シリーズ(12/14年)、『プラチナデータ』(13年)、『秘密 THE TOP SECRET』(16年)、『ミュージアム』(16年)、『3月のライオン』2部作(17年)など注目作を世に送り出している。座右の銘は「一期一会」。

佐藤健(さとう・たける)
1989年3月21日生まれ、埼玉県出身。『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』『何者』『亜人』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』など数々の映画で主演を務め、人気を博す。大友啓史監督との出会いはNHK大河ドラマ『龍馬伝』(10年)。その後『るろうに剣心』シリーズでもタッグを組む。

トレンドニュース「視線の先」 ~築く・創る・輝く~
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