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男性陣が今期最も熱くなっているドラマは、やはり阿部寛主演「下町ロケット」だろう。
第7話までの平均視聴率13.2%は、米倉涼子主演「リーガルV」に次いで2位。またテレビの視聴状況を独自に調査している『テレビ視聴しつ』(eight社)の満足度調査によると、同ドラマは5段階評価で4.13と、やはり2位につけている。
量と質の両方を勘案すると、トップを行くヒット作と言えよう。

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Hiroshi Abe, The 30th Tokyo International Film Festival, Opening Ceremony at Roppongi Hills in Tokyo, Japan on October 25, 2017.(写真:2017 TIFF/アフロ)


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■3年ぶりの新シリーズ

15年秋に放送した前作から3年、「下町ロケット」新シリーズは、活躍の舞台を宇宙(そら)から大地に移した。
前シリーズでは町工場『佃製作所』が、特許侵害訴訟・ロケットエンジン用バルブシステム開発・人工心臓弁ガウディ計画など、たび重なる困難を社員が力を合わせて切り抜けてきた。新シリーズでも、予期せぬトラブルにより窮地に陥っていく。

今や佃製作所の主力商品となっているロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工の業績悪化、主要取引先からの非情な通告、そして番頭の殿村に訪れた危機。
次々に起こる絶体絶命のピンチに、今回も阿部寛演ずる社長を初め、中小企業だがプライドは一流の全社員が力を合わせて、敢然と立ち向かっていく。

■実績も好調!

ご存じの通り、同ドラマは13年「半沢直樹」・14年「ルーズヴェルト・ゲーム」・15年「下町ロケット(第1期)」・17年「陸王」に続く、池井戸潤原作×TBS日曜劇場の鉄板コンテンツだ。

各ドラマの視聴率は、そうそうたる成績を残している。
「半沢直樹」平均28.7%(最高42.2%/最低19.4%)
「ルーズヴェルト・ゲーム」平均14.5%(最高17.6%/最低11.8%)
「下町ロケット(第1期)」平均18.5%(最高22.3%/最低16.1%)
「陸王」平均16.0%(最高20.5%/最低14.0%)
これらに続く「下町ロケット(第2期)」も、平均13%台(最高14.7%/最低12%)で推移している。ドラマの視聴率が全般的に低下している中、この成績は大健闘と言えよう。

■男たちの熱い支持

『テレビ視聴しつ』(eight社)が10月に実施した満足度調査でも、同作の4.13は「大恋愛~僕を忘れる君と」の4.18に次ぐ。朝ドラから23時台までの全ドラマの中での2位は、極めて高い評価と言えよう。
この高値は、主に男性からの支持による。キーワードは"熱"だ。

「毎回胸が熱くなる展開」(37歳男性)
「熱い気持ちになる」(17歳男性)
「ハラハラドキドキしながら見てます。阿部寛が熱い」(33歳男性)
「熱くなれる、とても好きな番組です」(45歳男性)

■距離をおく女たち

ところがポジティブな男性視聴者に対し、女性陣はやや距離をおいているようだ。
「あつすぎる」(45歳女性)
「暑苦しい」(50歳女性)
「暑苦しいくらい熱い」(35歳女性)
一部の女性視聴者は、その"暑苦しいほどの熱"について行けないようだ。

男女差は、満足度に如実に現れた。男性4.16に対して、女性は4.01。
「女性視聴者の支持がやや低いことが視聴率にも影響を及ぼしている」と同調査を行った大石庸平室長は言う。
さらに"池井戸潤原作×TBS日曜劇場"と言えば、「水戸黄門」のような勧善懲悪で、"愛すべきマンネリ"が特徴なのだが、ここにも厳しい目がむけられ始めている。
「いつも同じような内容で飽きてきた」(32歳女性)
「感動の押し売り感が強すぎ」(64歳女性)

さらに企業間の権謀術数や先端技術の優劣など、高度に専門的な話も次々に出てくる。ここについて行けない視聴者もいるようだ。
「難しいです。ドラマに入り込めません」(75歳女性)
「内容が難しい」(47歳女性)

■多様性にこだわるTBSドラマ

以上のような弱点を持つ同ドラマ。演出陣もマイナスを補う努力を惜しんではない。
善悪の単純な構造をチープに感じさせないように、大量のエキストラ・大規模なロケ・空撮を駆使した"ダイナミックな映像"などで、弱点を補って余りある世界観を構築・提示し、視聴者を圧倒してきた。

しかし、そうした努力もさることながら、最も伝えたい志については、妥協しない姿勢が見られる。
例えば25日に放送された第7話。帝国重工は無人農業ロボット開発を進めるにあたり、これまで重要な役割を演じてきた佃製作所を斬り捨て、同研究の第一人者で佃の親友・野木に、特許の開発コードを全て委ねるように迫る。
"下請けが元請けに協力するのは当然"という大企業の傲慢(ごうまん)を前面に出して、高圧的な態度で迫ってきたのである。ところが野木は、「開発コードは提供する。ただし世界中にも公開する」と帝国重工の思惑を砕く。下請けを蔑(ないがし)ろにする姿勢を全否定したのである。

果たしてこうした駆け引きや、サラリーマンが直面することのある窮地でのやりとりは、万人受けするかどうかは怪しい。
それでも強者の理不尽に屈しない弱者の志に、TBSドラマはこだわっている。たとえ視聴率が「リーガルV」のように跳ねなくとも、一定以上の数字を確保し、かつ見た人々の心に深く刻む物語をめざしていることがヒシヒシと伝わる。

繰り返しになるが、視聴率13%台は今日のドラマでは大健闘だ。それ以上の数字を追い求めるより、ぜひ熱い感動にこだわり続けてもらいたい。
最終回に向け、巨大組織の理不尽に屈せず、純粋な動機で理想にまい進する弱小集団が、どう難局を乗り越えるのか、情熱と感動のエンターテインメント巨編のダイナミズムを堪能したい。

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文:鈴木祐司・次世代メディア研究所

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