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16年夏にヒットした連続ドラマ「家売るオンナ」が帰ってきた。続編にあたる「家売るオンナの逆襲」だ。

主演は前回と同じ様に北川景子。去年10月にTBS「オールスター感謝祭」で、「4分間まばたきしない」チャレンジに成功し、驚異の"演技力"と"どアップ"に耐えうる美貌が評判になったが、今回も前回に増して北川の"どアップ"が多用されている。
初回を見る限り、バラエティドラマがバージョンアップしているが、さらに「テレビからネットへの逆襲」的な含みを持たせるあたりが心憎い。

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Keiko Kitagawa, Oct 29, 2015 at TOHO CINEMAS in Roppongi (写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)


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■新境地を切り開いた「家売るオンナ」

16年夏クールに放送された「家売るオンナ」は、平均視聴率11.6%でそのクールのトップに輝いた。しかもデータニュース社が行っていた満足度調査でも、全ドラマ中で1位となり、質量ともに優れたドラマとして多くの視聴者に支持された。

高視聴率の背景には、話題づくりがあった。
初回の視聴率は12.4%で、やはり全ドラマのトップだった。主人公はDAIGOと結婚したばかりの北川景子。昨年の日テレ「24時間テレビ」で、DAIGOが「(2年経ても)美しさに慣れていない」とノロケるほどの美貌の持ち主だ。
そんな北川が、放送直前の1週間で同局の12番組に出演。うち4番組は視聴率の高いGP帯のバラエティで、認知度を存分に上げロケットスタートにつなげていた。

イモトアヤコが連ドラ初出演を果たしたことも話題だった。
結果的に多くの記事で取り上げられ、話題が話題を呼び、高視聴率につながった。いわば「イッテQ」のパワーで、ドラマが飛翔(ひしょう)したと言えよう。

極め付きは、ドラマの作り方。
小田麗奈プロデューサーの初ドラマだったが、彼女は入社以来、ドラマ希望だったのにバラエティの現場に長く置かれた。ようやく希望通りドラマを作れたことの熱量と、バラエティで培われたドラマの常識にとらわれない感性が、"バラエティドラマ"という新境地を切り開いたのである。

例えば撮影の仕方や、ポスプロでの加工の仕方。
ダメ社員・白洲美加(イモトアヤコ)に三軒家万智(北川)が「GO!」と命令する際、顔にクイックズームすると同時に、小さな突風が髪をなびかせた。相手を睨(にら)みつける際にも、クイックズームやアップサイズへの短いカットの積み重ねが多用された。しかも後光のようにキラリと光まで付け加えられた。
リアリティを求めるドラマの伝統ではあまりお目にかからない手法だが、今回は前回以上に頻繁に出てくる。しかも北川の"どアップ"のサイズが上がっている。メリハリが格段に進化している。

■興味深い裏テーマ

今シリーズの初回は、裏テーマも秀逸だ。
YouTuber・にくまる役として、加藤諒がゲスト出演している。そしてテーコー不動産内で、彼が作る動画を見た際の会話が、テレビとネットの関係で遊んでいる。
「テレビの方がずっとちゃんとしているし、安心して見ていられる」
「テレビで流される映像は、さまざまな機関のチェックを経(へ)ているからちゃんとしている」
なんと杓子定規(しゃくしじょうぎ)な公式見解が、わざわざテレビで流された。

実はにくまるは、PV狙いの動画作りが嫌になり、ネットから逃げ出したい気分になっていた。その結果、三軒家を脅かす留守堂謙治(松田翔太)の提案した、祖母が住んでいたような家を買ってしまった。
三軒家の初めての敗北だった。

ところが三軒家は、ここから白洲(イモト)を動員して巻き返す。
その一連のシーンで、三軒家はYouTuberを辞めたにくまるに対してこう発言する。
「あなたには平穏な暮らしはいらない」
「必要なのは人々の目。賞賛と批判の嵐。それこそがあなたの命を支えている」
「命を懸けYouTuberを続けてください。あなたにしか出せない動画を、世に出し続けてください」
「あなたは世の中の関心を集め、批判を受け、炎上に至り、命ぎりぎりYouTuberを生きるのです」

最初につまらない建て前を出しておいて、最後は表現者としての覚悟を熱弁する。
これはテレビマンの矜持(きょうじ)を語っているかのようなセリフだ。
「テレビ番組は熱量が全て」
そう主張し、ネットの表現者にそれだけの覚悟があるのかと挑発しているようだ。ここ何年もネットに押され気味だったテレビからの、まさに逆襲だ。

こんな具合にドラマの中に、時代状況を反映した遊びを放り込むあたりが、日テレのバラエティドラマの真骨頂だろう。
ついでに同ドラマには、同社の状況を受けて、こんな役割まで担わせていたようだ。
SNSでは今回のイモトの演技を見て、「イッテQ思い出してしまった笑」「急にイッテQ感でたーー」などの声が上がった。祭りでっち上げ事件でゆれた「イッテQ」を、今度は同ドラマが救っている。

さすがにここまで計算したかは怪しいが、実に多面性を持った奥行の深い作りだ。
どこまで深読みするかは視聴者の自由だが、視聴しながらいろいろ夢想できる出来であることは間違いない。バラエティドラマの新境地、堪能してみてはいかがだろうか。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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