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1月クールは刑事ドラマがめじろ押しだ。
「トレース」「メゾン・ド・ポリス」「記憶捜査」と並び、沢村一樹主演の「刑事ゼロ」。これら刑事ドラマの中で、「刑事ゼロ」は視聴率トップを行く。さらに今クールGP帯(夜7~11時)の全ドラマの中でも1位だ。

サムネイル

Ikki Sawamura on February 3, 2018, in Chiba, Japan.(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)


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同ドラマは単に視聴率が高いだけじゃなく、面白さでも独特だ。
50歳を超え外見だけでなく演技や内面がかっこ良くなっている沢村一樹の存在と、「てっぱん」瀧本美織が沢村のバックアップデータ役をしながら、記憶を失う前の沢村の偉大さを発見していくという展開が秀逸だからだ。

■沢村一樹の存在感

沢村一樹は遅咲きの役者だ。
連続ドラマデビューは29歳。「続・星の金貨」だった。
連続ドラマの初主演は42歳。「浅見光彦~最終章~」だった。ちなみに余談だが、「サラリーマンNEO」のセクスィー部長として一世を風靡(ふうび)したのも40歳頃だった。

最初の当たり役は44歳の時。「DOCTORS~最強の名医~」の主人公・相良浩介を演じたが、3シリーズとスペシャル2本を数えるまでのヒット作となった。

そして50歳からは、毎年連続ドラマの主役に抜擢(ばってき)されている。
50歳の時は、「ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~」(テレビ東京)。51歳で「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(フジテレビ)。そして今年が「刑事ゼロ」(テレビ朝日)だ。
しかもこの間に、大河ドラマ「西郷どん」と連続テレビ小説「ひよっこ」で重要な役を担った。天命を知った後に、人気が上昇した稀有(けう)な俳優なのである。

「ユニバーサル広告社」では、かつての栄光を失った広告マンの奮闘ぶりから、「人はいつでも輝くことができる。その輝きの色は、自分で決めれば良い」とハートフルな生き方を説得力のある演技で魅せた。遅咲きの沢村ならではだった。
51歳で主役を演じた「絶対零度」は、今世紀月9主人公の最高齢だった。ところが狂気に満ちた顔芸など、エネルギッシュな演技で視聴者を魅了した。
そして「刑事ゼロ」。かつての敏腕刑事が、事件をきっかけに記憶喪失になる。そのビフォア/アフターの演じ分けは見応えたっぷりだ。

■秀逸な展開

沢村演ずる主人公・時矢歴彦は記憶喪失を伏せて刑事を続けている。
よって同僚などの名前もポジションも覚えていない。喪失後に初めて出会う同僚が誰だかわからずシドロモドロになった際、バディを組む新人刑事・佐相智佳(瀧本美織)が、機転を利かせて個人情報を伝える。要は瀧本が沢村のバックアップデータになることで、二人の仕事が回り始めたのである。

二人の関係は絶妙だ。
記憶喪失前の時矢を佐相は尊敬していた。ゆえに彼の20年間について、刑事部庶務係時代に調書で全て知っている。しかし佐相が憧れたのはビフォア時矢。今の情けない姿で百年の恋も醒めてしまった状態だ。

ところが時矢は記憶を失ったがゆえに、"生まれたての五感"と"洞察力"が研ぎ澄まされた。
赤ん坊は警戒心が強く臆病ゆえ、危機回避能力が高く、鋭い洞察力を持つ。記憶を失い、刑事の経験値がゼロになったおかげで、時矢は新たな能力を総動員し、思いもよらないアプローチで事件に挑むようになった。知識として知るビフォア時矢と、実存として触れるアフター時矢のギャップがユニークだ。

もう一つの見どころは、毎回事件を解決する中で、時矢の空白の20年が徐々に埋まって行く展開のお面白さだ。記憶喪失には"ある秘密"が関係している。その謎解きが牽引力(けんいんりょく)になっているが、もう一つ、敏腕刑事だった頃の時矢の人間性が次第に明らかになっていくのも魅力だ。
調書で知っていた時矢の実存部分にも、佐相はバディとして一緒に捜査をする中で次第に出会っていく。

例えばリアルな犯罪にサイバー犯罪が組み合わさることで、思いもよらない展開になった第4話。
その解決プロセスも十分見応えがあるが、かつてバディを組んでいた但馬(野間口徹)の間違った考え方が誘発した新たな犯罪を、時矢は身を挺(てい)して阻止し、しかも組織的に守ることで正しい方向に導こうとした過去があった。
この献身ぶりと同僚を思いやる姿勢は、見る者の心を動かさざるを得ない。当然、佐相のバックアップデータにも記録されていない人間性だ。

初回視聴率が14.7%で今期全ドラマの中で最高。しかも2話でいったんさがった数字が、3話4話と上昇を続けている。
「科捜研の女」「相棒」「スペシャリスト」などを手掛けてきた戸田山雅司の本の力と、五十路でますます進化する沢村一樹の役者の力ならではの実績だろう。
派手さはないので大ブレークとは行かないだろうが、通好みでジワジワ右肩上がりを続ける予感がある。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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