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"やりがい"と"自分の納得"のために、大変な苦労をあえて引き受けている女性がいる。
看護師であり写真家でもある半田菜摘(32歳)だ。カメラを持ってわずか5年で、国内外問わず多くの賞を獲得する注目のカメラマンになった。そんな彼女のモットーは、「そこそこ良いのを100枚より、1年に1回かもしれないけど、1枚特別なスペシャルを撮りたい」。

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イメージ画像(写真:アフロ)


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「そのルールこそが人生を映し出す」がコンセプトの「セブンルール」。
二足のわらじにこだわり続けユニークな写真を撮り続ける半田の生き方を、今回は追っている。

■撮影前夜は車中泊

看護師の仕事が終わった夜8時、写真家・半田の仕事が始まる。旭川を出発して、数時間かけ現場となる山野に移動。
ペットボトルの飲み物も凍るような寒い車の中で、朝まで最大限の防寒体勢で仮眠をとる。

■まずは動物の正面に座る

早朝から雪深い原野を歩き続けると、動物との出会いは唐突にやって来た。
最初に気づくのは動物の方。しばらく緊張状態が続くが、やがて半田は距離を詰め始め、そして動物の正面に腰を下ろしてしまった。

「ある程度むこうが慣れたなと思ったら姿を出しちゃう」「無害だよっていうのを知って欲しい」
出会いから20分、動物が半田を気にしなくなった頃、写真を撮り始める。
「動物のあどけない正面の顔」「無防備な居眠りの姿」など、ほとんどの人が見たことのない大自然に暮らす動物の素の姿を、半田は次々にものにしている。

他にも「にっこり笑ったような顔を見せるモモンガ」「まるで頬にキスをしているような、つがいのフクロウ」など、人の目を惹(ひ)き付ける写真がたくさんある。

代表作のひとつは、連作「キタキツネの家族」。
疲れているのかぐっすり眠り込む母ギツネが1枚。そして子ギツネに授乳中の母ギツネと父ギツネが頬ずりする一家全頭をとらえた一枚。
1カ月間、同じ色の服で通い、その度に座り込んで、警戒心最大となる子育ての最中をとらえた作品だ。
「お父さんもお母さんも毛がボロボロなのが良い。子育ての苦労が毛にも出ている。その姿も私は美しいと思う」

彼女の個展を企画・運営した人は、「長く動物と対峙(たいじ)しないと撮れない。同じ空気を共有することを許してもらっているんじゃないかな」と、半田の実力を評価する。

■ストロボと連写はしない

カメラマンとしての半田のすごいところは、単に決定的な写真を撮っていることだけじゃない。動物に対する徹底した優しさに溢(あふ)れている点こそ素晴らしい。

タンチョウの撮影では、居合わせた多くのカメラマンは、羽ばたきをとらえようと連写ばかりする。
ところが半田のモットーは、「ストロボと連写はしない」だ。動物のストレスを最小限にするためだ。
「動物に迷惑をかけてまでは撮りたくない。あくまで動物の世界をのぞかせていただくという姿勢」という。

■病院に写真を飾る

厳しい写真撮影とは別に、半田は看護師の仕事中は一切写真のことは考えない。
「命に直接かかわって来るので、事故のないように」と、看護師の仕事を最優先している。それでも病院の壁には彼女の撮った動物の写真が飾られている。

■二足のわらじは脱がない

看護師を辞めようと思ったことはある。
ところが病院での患者の言葉が、「二足のわらじはぬがない」と決意させているという。
「半田さんの写真を見て、生きているっていうか、生きる力をもらった感じ」とは某患者。
「看護師辞めて写真家一本でもいいのかなって考えたが、2個とも捨てられない」
「大変って感じることもあるが、それ以上にやりがいをかんじている」
目の前のことに全力を注いできた彼女が、考えに考え抜いた末の答えである。

■半田のセブンルール

彼女にとっての残り2つのセブンルールは、「グチはノンアルコールで」と「フンがあればにおいを嗅ぐ」。いずれも二足のわらじを履き、どちらも最善を尽くすために、自らを律するルーティーンだ。

かつて新米看護師だった半田を救ったのは動物だった。
看護師としての最初の勤務地で上司との相性が悪く、看護師の仕事に挫折しそうになっていた。実家の母への電話でも、号泣を繰り返したという。
ところが、そのつらい新人時代を支えたのは子犬の"殿"だった。仕事が終わった後の犬との散歩が唯一の癒やしとなり、結果として看護師を諦めずに済んだ。

二足のわらじを履くようになり、写真家として歩き始めた半田。
自分が得た癒しを、必要としてくれる人に届けるためにも、つらくとも半田はまた雪山に登る。
そこそこの100枚ではなく、特別な1枚を目指して。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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