UI/UXを小売りに活用して大成功!~「セブンルール」地酒専門店 店主・東海林美保~

2019/3/29 17:12

東京・赤羽の住宅街にある、三姉妹が営む小さな酒屋「三益酒店」。店主は長女の東海林美保(34歳)。
月に一度ひらかれる酒蔵や寿司屋との合同"角打ち"では、店におさまらないほど人が溢(あふ)れる。地酒専門の酒屋だが、その名は地元に留まらず、全国的な有名店だ。

サムネイル
イメージ画像(写真:アフロ)


【無料配信】「セブンルール」最新話を配信中>>

「そのルールこそが人生を映し出す」がコンセプトの「セブンルール」。
そんなユニークな酒屋を営む彼女の7つルールは、要はUI/UXを小売りに活用した勝利の方程式のようだ。

■酒蔵の人の顔と名前は全員覚える

東海林の朝は、飲食店へのお酒の配達から始まる。
配達後は店に立ち、目の肥えた客に酒を勧めるのも彼女の仕事だ。そして店の隣には、実際にお酒を飲める"角打ち"コーナーを置いている。

店でユニークな点は、商品棚に東海林が撮影した写真や手作りのPOPがいっぱい展示されていること。実際に訪ねたり会ったりした人や酒蔵で、取引を結んだ相手の顔を全部覚えているという。販売の仕方やイベントの企画などを、一緒に考えている同士のような人々だ。
酒蔵からすると、客の声を吸い上げ、製造や販売に生かす東海林の存在は、大いに助かっているという。

実際に店の営業が終了すると、新規の酒蔵と合同で行うイベントの打ち合わせが入ることが多い。
かくして酒蔵の人の顔と名前を全員覚える東海林は、ヒットする地酒の数を増やしている。

■全ての酒にポップをつける

製造量に限りがある地酒。
酒屋に置かせてもらうためには、何年も通い詰めることもあるという。その末にやっと店に置く地酒たちには、必ずPOPをつけている。

「(酒瓶の)ラベルでお酒の味わいってわからない」
「だからこそPOPでお酒の味わいとか酒蔵さんの良さとかを伝える」
「現地に行って、酒蔵さんの声を聴いて、酒蔵さんの伝道師の気持ちで酒屋をしています」

お店の客は、今日の料理とどのお酒が合うかなどを気にして買いに来る。だからPOPを見るだけで、「あっ、飲みたいな」と思わせるような表現を心掛けている。

■勝利の方程式

東海林の7ルールでは、他5つも全てビジネスの成功に直結している。

<店頭に並べる酒は二女に任せる>は、東海林の暴走を食い止めるためのもの。
酒蔵を訪ね、人に会うことを前提にする東海林は、お酒への思い入れが強くなり勝ち。それをビジネスとして冷静に位置づけるのが、二女の役割だ。ゆえにお酒を店に置くかどうかは、店舗のスペースに限りがあるため、次女の役割となっている。

<取引先の飲食店には絶対食べに行く>は、営業終了後のこと。
お酒を卸す飲食店に足を運び、実際に料理を味わうようにしている。酒との相性を考え、卸すお酒の提案を考えるためだ。飲食店側からすると、サポートしてくれているという信頼関係につながっている。

<プライベートはレモンサワーを飲む>は一見休日のことだが、実際には仕事につながっている。
仕事を忘れるために、プライベートでは一切日本酒は飲まない。オンオフをはっきりさせることで、仕事での集中力を養っているようだ。

<三女のおつまみを毎日チェックする>は、酒屋の隣に設置した"角打ち"戦略。
ここを切り盛りする三女・美香は料理上手だが、"角打ち"での料理はお酒との相性が基本。その確認のために、全体としての最善を作り上げるために、料理の最終確認は全体を見通している東海林がする。

そして最後が<酒のストーリーを売る>。
学生時代に酒蔵をたくさん訪ね、25歳で父のお店に戻った東海林。当初は客の方が酒をよく知っており、酒蔵や酒の良さを説明しても、「そんなに飲み込んでいないのに何がわかるの?」と言われていた。
その悔しさから、28歳できき酒師の資格をとったりした。しかし一番大切なのは、それぞれの酒蔵やお酒の持つ事実を正しく認識し、きちんと客に伝えること。その"酒のストーリー"の深さと面白さで、次第に客の心をつかんで行った。

要は東海林のやり方は、酒蔵やお酒と直接向き合い、それらを正しく知る。お酒を卸す飲食店の特徴も把握する。そして三姉妹の店なので、二女や三女の持ち味も最大限に生かす。
あとはPOPを活用し、説明を懇切丁寧に行い、モノとしてのお酒を売るのではなく、お酒にまつわる物語を情報として提供して、顧客の経験を豊かなものにしようと考えている。
まさにデジタルの世界で言われるUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)を考えての仕事だ。
「三益酒店」の勝利の方程式は、単に酒屋の成功物語ではなく、やはり多くの仕事に通ずるものがある。

【無料配信】「セブンルール」最新話を配信中>>

文・鈴木祐司 次世代メディア研究所