平成最後に昭和のなつかしさ ~井ノ原快彦「特捜9」で光る安定の力~

2019/4/15 14:55

新年度を迎え、新たな元号"令和"の発表で盛り上がりを見せる中、春のドラマシリーズが続々とスタートしている。

その中でも早いスタートを切ったのが、テレビ朝日系のドラマ「特捜9」。
初回の視聴率は15.2%。昨春放送のseason1の平均視聴率は14.0%、初回16.0%だったので、season2も極めて好調な出だしを切ったと言えよう。

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A general view of the Metropolitan Police Department in Tokyo Japan. (写真:西村尚己/アフロ)


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■安定の設定とキャスティング

主演はV6の井ノ原快彦。
06年にスタートした渡瀬恒彦主演「警視庁捜査一課9係」に当初から出演していた。「相棒」と同じ年に始まった同ドラマは、season12まで続いたが、渡瀬が亡くなり、去年から「特捜9」と改め、井ノ原が主役を引き継いでいる。

彼を中心に、寺尾聰、羽田美智子、津田寛治、若手の山田裕貴、吹越満、田口浩正、中越典子、原沙知絵、と個性豊かなメンバーが結束し、事件解決に挑んでいる。
さらにストーリーが刑事モノだけあってか、警視庁の上部にも里見浩太朗、伊東四朗、名取裕子など大物俳優がキャスティングされている。
それぞれの存在感と貫禄が画面に滲(にじ)み出て、ドラマがぐっと引き締っている。

特捜班チームは、事件の早期解決を目指す「独立した捜査班」。
組織としての警視庁をきっちり描くと同時に、ヒューマンドラマ的でちょいコメディタッチな部分をまぶしている。結果として飽きのないストーリー展開となっており、気軽に見られる間口の広さが視聴者を惹(ひ)きつけている。

■昭和のなつかしさ

第1話ではイノッチが事件に巻き込まれ、山小屋に監禁されてしまう。
命をかけて犯人を説得しようと挑み、刑事魂を見せ、初回の山場を大きく盛り上げた。
「主演が死んじゃったら、話が終わっちゃうじゃん!」と思いつつも、ドキドキしながら解決するであろう事件の結末を見守った。

またテレ朝"刑事もの"特有の映像の雰囲気は、古典的"刑事ドラマ"で昭和の大ヒット作「太陽にほえろ」を思い出させてくれる。
まるで映画を見ているような、古い感じの映像のタッチ。誰もが知っている「太陽にほえろ」のイントロのインパクトのある軽快なリズムと、一度聞いたら忘れないあのメロディを思わせる劇伴は、先日亡くなった萩原健一氏へのオマージュであるのだろうか。

■光る安定の音楽

音楽を手掛けているのは吉川清之だ。
サスペンスや警視庁捜査一課シリーズ、刑事ドラマから映画まで幅広く手掛けており、もはやこの手のジャンルの劇伴のエキスパートと言える作曲家だ。
また前のシリーズ「新・警視庁捜査一課9係」の中では、ピアニスト役で出演していた。作曲家だけでなく、ピアニストでもある音楽家なのである。

ドラマの始まりから、ドーンと音楽で盛り上げるのではなく、役者の演技、セリフをまるでリスペクトしているかのごとく、控えめな音付けが"古典的刑事モノスタイル"なのか。
今はやりのインパクトと絢爛(けんらん)豪華な音楽で、有無を言わせない演出とは違った、作曲家のこだわりが見える。
その絶妙な音楽の出所が良いだけに、コミカルなシーンも結果としてグッと引き立っている。

演出も刑事ドラマにしては、暴力的な殺陣シーンがあるわけではない。
主人公の浅輪直樹(井ノ原快彦)を中心に、特捜チームのそれぞれの個性と人間模様を細かくこだわった演出で描かれている。またヒューマンドラマ的なストーリー展開も視聴者の心にソフトに語りかけるメッセージ性を含み、彩色豊かなドラマの作品作りは、多くの人の心を惹(ひ)きつけているのだろう。

浅輪とタッグを組む新藤亮(山田裕貴)は、今の若者を象徴するタイプ。
ドライで合理的な考えを好む新人刑事なのだが、今後どう成長していくか。ストーリー展開に大きな役割を果たしてくれそうな期待感を抱かせてくれる。

season1に引き続き演技・演出・音楽と三拍子そろったseason2。
安定したドラマ力を見ていると、「特捜9」も「警視庁捜査一課9係」と同じように長期シリーズに成長する予感に満ちている。
今後の展開に期待したい。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修・次世代メディア研究所