鈴木浩介が抱く"妄想の中の自由"~「癒されたい男」は中間管理職への福音~

2019/4/24 10:58

今回で2話目の放送となったテレビ東京の深夜ドラマ枠・パラビ「癒されたい男」。

このところテレビ東京の深夜ドラマは、掘り出しモノが多く、孤独な大人の夜の時間を楽しませている。
ドラマパラビは、2018年10月から始まった新しい枠で、放送時間は深夜1:35~2:05。近年増えている深夜ドラマの中でも、かなり遅い時間だけに、ドラマの内容もかなり自由でやりたい放題といった感じだ。

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イメージ画像 Happy young love couple kissing behind red heart. Isolated over white background.(写真:アフロ)


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■深夜なのに味のある主演

ただし同枠の主演俳優については、18年10月の放送開始から、シーズンごとに岸谷五朗や遠藤憲一など、かなりのベテラン俳優を起用しており、深夜だからと言ってお手軽に制作しているわけではない。
時間帯を考慮すると、視聴率を狙っているわけではないだろう。放送時間も30分と短い中、「好きなことやっちゃおうぜ!」「それが結局、ビジネスとしても新たな成功の道を切り開く」的な、テレ東ならではの想定外の番組が生まれる素地を感じる。

今クールの「癒されたい男」の主演は、映画・舞台など、数々のパフォーマンスで活躍中の鈴木浩介が抜擢(ばってき)された。「ドクターX」や「刑事7人」で独特の存在感を出し、今期は「緊急取調室 3rd Season」にも出演中。ゴールデンタイムでも視聴者を楽しませて来た実績を持つ。

■中学生並のピュアな中年

今回の深夜ドラマで鈴木浩介が演じるのは、トイレの便器を扱っている会社に勤める中年サラリーマン・秋山寛。
会社で上司には叱咤(しった)され、働かない部下の穴埋めに追われ、仕事に疲れた中年男が「癒やされたい」一心で、街中で出会った若い美女たちにピュアだがエロティックな妄想を抱き、つかの間の癒やしを求める。

ストレスフルな社会に生きる、孤独な中年オヤジのエロロマン小品ドラマといったところだろうか。
たまに電車の中では、スポーツ新聞の風俗のページや週刊誌のピンクなページを恥ずかし気もなく、堂々と読む"おっさん"を見かける。そんな太々しい輩と比べると、中学生並みのピュアでスケベな想像を発展させて創られた「癒されたい男」の方が、淡い男心と呼ぶべきか、紳士的な快楽と癒やしの求め方で、かわいげがあるではないか。

■俗を包む聖なる演出

働く大人の人口の大半を占めるサラリーマンの中で、疲れていない男などいるだろうか。
特に特技や特徴があるわけでもなく、毎日、満員電車でぎゅうぎゅうに箱詰めされ揺られながら、社会の一員として会社に行って業務をこなす。それだけでも、立派な社会人と認めてあげようではないか。

疲れた男たちが、一時の癒やしを求めて何が悪い!
現にメイドカフェなどは既に新しいものではなく、ひざ枕に耳かきをしてもらうだけのビジネスだって存在する。
そうした新手の風俗に行くのは、世間の目が気になるし、勇気が出ないという中年男性諸君。ドラマの中で秋山寛と一緒に妄想の世界を覗(のぞ)いてしまうのはいかがだろうか。

すでに第1話を見た視聴者は、リピーターとなって第2話を迎え、さらに続く癒やしの世界の一時を待ちわびているに違いない。
鈴木浩介の絶妙な演技は、平凡なサラリーマンの雰囲気が良く出ていて親しみを呼ぶ。心の声はナレーションとなり、妄想のエロスは多くの共感と反響を呼んでいるだろう。

そして笑ってしまうのが、劇伴となる音楽。
いわゆるピンクっぽいムーディなサウンドではなく、クラシック音楽を使用している。中でもバッハやオッフェンバックなど、バロックや古典の時代のわりとかっちりしたジャンルに絞って、低俗な妄想を清らかで高貴なもののように大切に演出している。俗な男のロマンを、聖なる響きで邪険にしない繊細な演出が絶妙だ。

妄想の世界に登場する美女たちの名前付けも、飾り気もない、イメージそのままでまわりくどくない。ランニングする美しい女性を"桃尻エリカ"、美しいタクシードライバーを"初乗イク子"......、この低俗さが、またクスッと笑えるツボとなっている。

中年オヤジとは言わず、20代から30代、さらには年齢問わず、男ならば誰でも楽しめるドラマに仕上がっていると言えよう。
世の中の男性諸君、探し求めていた癒やしは、テレビという身近な世界でいとも簡単に手に入れることができるのだ。
存分に楽しんでもらいたい。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修・次世代メディア研究所