"人を作るのは遺伝子と環境"~山下智久「インハンド」が魅せる科学の新ドラマ~

2019/6/ 5 11:15

今クールは科学をベースにしながら対照的な内容のドラマが2つある。
放送開始20年・SEASON19のロングランとなっている沢口靖子主演「科捜研の女」と、山下智久主演「インハンド」だ。

サムネイル
科学2ドラマの個人視聴率比較


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前者は現実を正しく認識させる科学の進歩を前提にしている。ところが「インハンド」は、科学をベースにしながらも、あえてあり得ない話などへ飛躍させることで新たな物語を作ろうとしている。
科学の進歩を切り口にしながらも、新しいタイプのドラマがまた1つ定着しそうだ。

■科学を取り込んだ老舗ドラマ

1999年にスタートした「科捜研の女」は、科学に拘(こだわ)り続けてきた。
この20年間に科学は飛躍的に進化を遂げ、最先端の知識や技術を前提にした同作は、新たな視聴者を取り込んできた。

例えばSEASON1のキャッチコピーは、「科学は私を裏切らない」。
当初から科学の客観性・中立性でドラマを作る新しさがあり、役者やセットが地味な割に、M1~2(男20~49歳)にもしっかりファンを作って来た。

そのキャッチコピーは、20年間に"科学の進化"を意識したものになっている。
例えばSEASON17では「科学と正義は、進化する。」。SEASON18では「私は真実が知りたい 科学の進化が試される」。そして今クールのSEASON19が「あなたはまだ、榊マリコを知らない―。」。

DNA鑑定や埋蔵物の捜索技術などで最先端の科学技術が次々に登場することで、科学好きが新たなファンになってきた。これが20年間でジワジワ視聴率を押し上げてきた原動力と言えよう。

■超科学の魅力

一方、最新科学がさまざまな難事件を解決する"爽快サイエンスミステリー"を目指したのが「インハンド」。右手が義手の寄生虫専門学者・紐倉(山下智久)は、興味を持った案件では法や倫理を無視した行動を平気で取る。

この主人公の破天荒な行動と同様、物語の展開も一見科学的だが、実はフィクションが随所に入る。
例えば第8話。赤い色素を出すこともあるセラチア菌や、暴力や犯罪と関連するMAOA遺伝子を登場させ、最先端の科学の魅力で視聴者をぐいぐい物語に引き込む。
ところが上之宝島の鬼伝説など、もっともらしいフィクションが物語の重要な要素となる。鬼の血が流れる遺伝にまつわる迷信が物語の鍵を握っていたのである。

ところが紐倉は、「人間を決定するのは遺伝子なのか環境なのかではなく、遺伝子と環境だ」と迷信を一言で斬り捨てる。
そして先入観が犠牲者を出すような愚から、人間は解放されなければならないというメッセージがラストに描かれる。

そういえば初回にも、「人間は感情の奴隷」という言葉がアンドロイドのような紐倉の口から飛び出した。この回では感情を全否定するのではなく、うまくバランスをとることの重要性をラストで言っていた。
こうした常識や迷信を一見否定しながらも、あるべき姿に戻ろうとする展開が、どうやら同ドラマの魅力のようだ。
科学を入り口にしながらも、こうした人間の物語に回帰する点が、FT(女13~19歳)を初めF1~3-(女20~64歳)に熱く支持される所以(ゆえん)だろう。

■視聴者の声

「テレビ視聴しつ」(eight社)の満足度調査では、両ドラマの特徴は視聴者の声にも表れている。科学に絡めて「科捜研の女」を高く評価する声は、こんなものが多い。

「さまざまな鑑定方法があって驚かされる」男23歳・満足度5
「科学の力はすごいと感じる」男24歳・満足度5
「科学とまりこさんのすごさに圧倒される」女18歳・満足度5

一方「インハンド」では、科学や知識への興味とともに、ドラマとしての新しさへの評価が目立つ。

「あり得ない設定で非常に面白い」男56歳・満足度4
「解説ありでわかりやすくとても楽しい」女43歳・満足度5
「知らない知識が多くて面白い」女29歳・満足度5
「新しい感じのドラマで好き」女33歳・満足度4
「聞いたことない病名ばかりで興味をそそられます」男19歳・満足度5

どうやらドラマの作り方は、科学の進歩で新しくなるようだ。
さらに人間の問題をどう塗すかによって、自分事として見てくれる新たな視聴者を開拓できるようだ。今クールの「インハンド」は、そんな新たな可能性を示した一作と言えそうだ。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所