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「緊急取調室」通称"キントリ"の3rd SEASONが、まもなく最終回を迎える。

14年冬のファーストSEASONは、平均視聴率が12.9%。17年春のセカンドSEASON平均は13.9%。
3rd SEASONは最終回を残して今のところ13.2%。この2シリーズは、全GP帯(夜7~11時)ドラマの中でトップ、同ドラマ人気の絶大さがわかる。

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「緊急取調室」3シーズンの個人視聴率


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■若年層に支持されたFIRST SEASON

世帯視聴率の平均は、3シーズンとも1%の中に納まっており、各作品の評価は一見似たり寄ったりに見える。ところが男女年層別の個人視聴率で比べると、3作で意外に大きな差がある。

14年冬のファーストSEASONは、テレ朝ドラマの人気シリーズドラマ「相棒」と「科捜研の女」に並んで放送された。既に両ドラマとも12~13シリーズに達しており、テレ朝ドラマは刑事モノ・ミステリーモノで盤石な評価を得ていた。
その中にあり、ユニークな切り口で攻めた同ドラマは、新境地を切り開いた。

とかく刑事モノは男の世界になりがちだ。
ところが同ドラマは紅一点の女刑事(天海祐希)が主人公。しかも刑事の疾走・聞き込み・銃撃戦・犯人との格闘など、視聴者の目を引く派手なシーンはほとんどない。取調室という密室だけで、会話劇を柱にしてストーリーを展開させ、かつ見応えを創り出した。
これまでの刑事ドラマにないオリジナリティだった。

この新奇性が、若年層をひきつけたようだ。
FT(女13~19歳)やF1(女20~34歳)で2~3%となり、「相棒」「科捜研の女」を大きく上回った。特にF2(女35~49歳)の7.8%は、同ジャンルに新たな視聴者を引き寄せたと言えよう。

しかもM1(男20~34歳)やM2(男35~49歳)でも3~4%を獲った。女刑事が主人公でも、若年男子に届いていたのは快挙と言えよう。
トレンディドラマでも社会派ドラマでもヒット作を数多く書いた井上由美子と、宝塚由来の正統派演技力を誇る天海祐希の面目躍如だった。

■高齢化とその反動

世帯視聴率を1%押し上げたセカンドSEASON。
その原動力は、男女とも65歳以上の高齢者をひきつけた点だった。完全な一話完結型とした点、取調と心理戦による駆け引きをメインとした点が視聴率を上げ、特に高齢者を引き寄せたようだ。
男女とも3~4%も個人視聴率が上昇した。

ただしこの変更は、FT・F2とMT~M2の個人視聴率を失わせた。若年層はやはりマンネリ感に敏感なようだ。特に密室の心理戦や会話劇だと、脱落する若者が出るらしい。

そこで3rd SEASONは、もう一工夫加えてきたようだ。
女対女の緊迫した対決を柱にしてきたのである。毎回の被疑者(ゲスト)として、浅野温子・松井珠理奈・仙道敦子・松本まりかなどが、天海祐希と渡り合う怪演を見せる。
第9話でも、吉川愛が天海に「手をついて頭を下げろ!」と言い放つシーンは、多くの視聴者を「ゾクゾク」させ、その怪演ぶりに脱帽した人は少なくなかった。

こうした変化で、65歳以上は男女ともセカンドSEASONより個人視聴率が下がっている。
ただし男女とも10代から40代は上昇している。演出や内容の進化が、結果を伴ったと言えよう。

■骨太のメッセージ

もう一つ忘れてならないのは、同ドラマの骨太なメッセージだろう。

日本の取調べのやり方は、とにかく自白させることが至上命題となってきた。ところが冤罪(えんざい)を産むなど、問題も多く指摘されるようになっていた。2016年に刑事訴訟法が大幅に改正され、検察官の証拠リスト開示や、取調べの可視化が義務付けられたのである。

同ドラマの真骨頂は、2019年6月末に実施される取調べ録画の改革を、いち早く題材として取り上げ、制度としても人間ドラマとしても考えるべき問題を視聴者に突き付けている点だ。

例えば警察の行き過ぎにブレーキをかける風潮に対して、真壁有希子(天海祐希)は「取調べは、インタビューではない。容疑者はお客様ではない!」と言い切る。確固たる信念のもと、取調べのスタイルを一切変えない。

制度は世の理不尽を改めるために、改正される。
ところが人間の営みゆえ、変化した制度を利用して、新たな理不尽が生まれる。同ドラマはこうした理不尽の連鎖に対して、個人の変わらぬ信念・正義感・実行力で、理不尽をより小さくしていくことの大切さを訴えている。
しかも天海のりんとした声のトーン、セリフを語るスピード、視線とその目ヂカラなど、一挙手一投足が説得力を持つがゆえに、魅力的なドラマになっている。

あと1回で最終回だが、早くも次のシーズンでどんな進化を見せてくれるのか、新たな期待に胸が膨らむ。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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