ドラマ終盤の盛上り 吉高由里子「わた定」が男20~40代、福山雅治「集団左遷」は女40~50代という意外性

2019/6/27 16:40

今クールは、男と女の対照的な働き方を描いたお仕事ドラマが際立った。
吉高由里子主演「わたし、定時で帰ります。」と、福山雅治主演「集団左遷!!」の2本だ。ともにTBSが制作した。

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3ドラマ終盤の盛り上り比較


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一般的には前者は女、後者が男の視聴者が多いイメージがある。
ところがクール平均を100として、終盤の視聴率を指数化すると、前者には男20~40代、後者では女40~50代が注視するという意外な状況が見えてくる。

■際立つ終盤の盛り上り

ビデオリサーチによる世帯視聴率では、「わたし、定時で帰ります。」の平均が9.7%、「集団左遷!!」が10.5%。ともに10%前後は可もなく不可もなくといった水準だが、ドラマ終盤の盛上りと言う意味では、両ドラマとも展開の秀逸さを見せつけた。

例えばクール平均が13.2%でトップだった天海祐希「緊急取調室」は、ラスト3回が12.9→12.8→12.9%で、いずれも平均を下回った。1話完結型ドラマゆえ毎話の数字は安定していた。ただし後半がより盛上るような展開にはならなかった。

ところが「わたし、定時で帰ります。」のラスト3回は、9.1→10.2→12.5%と平均の9.7%を突き抜けて急伸した。「集団左遷!!」も11.9→10.1→13.1%と、最終回は平均の10.5%を大きく超えてきた。
多くの視聴者を惹(ひ)き付けた優れた展開だったと言えよう。

■男も注目した「わた定」

次にスイッチ・メディア・ラボが調べる個人視聴率で、誰がどう見ていたのかに注目してみよう。
クール平均を100として、ラスト2回の視聴率を指数化すると、世帯視聴率は「わた定」が117、「集団左遷」が111。ともに最終回をリアルタイムで見ようという人を惹(ひ)き付ける力のある物語だったことがわかる。

これを男女年層別の個人視聴率で指数化すると、興味深い風景が見えてくる。
まず目につくのは、「わた定」がF1(女20~34歳)とF3(女50歳以上)で高い数字が出たこと。イメージ通り、女が残業をしないで職場で一定の位置を確保していくことに、多くの女性視聴者が関心をもっていたことがわかる。

ところが「わた定」では、女だけではなく男も惹(ひ)き付けた。
M1(男20~34歳)の終盤は約1.1倍、M2(男35~49歳)では約1.2倍の視聴者をクール平均より集めている。
"人は何のために働くのか"
"仕事と育児を両立させられないのか"
"家族を顧みず一心不乱に打ち込むのが仕事なのか"
女性が主人公で、女性の視点で仕事を見直すドラマだった。ところが20~40代の男性の中にも、人生の優先順位で揺れている人は増えており、そんな人々の中からドラマに共感したり、自分なりの答えを見つけ出そうとした人が少なくなかったようだ。

■「集団左遷」に注目した女たち

一方「集団左遷」では、男たちは10代から高齢者まで、最終回まで話の展開に集中した人が多かったようだ。全世代でクール平均より終盤の視聴率が上回っていた。

ところが女の個人視聴率でも、あまり大きくないが女40代から50代で、クール平均より終盤の視聴率が上回った。
もしかしたら夫と一緒に見ていただけかもしれない。それでもF1(女20~34歳)とF3+(女65歳以上)の終盤がクール平均より下回り、FT(女13~19歳)に至っては半減だったことを考えると、仕事の現実に直面した女性たちに刺さるドラマだった可能性は否定できない。

IT・デジタルが浸透し、AIの導入が現実となってきている。
従来の仕事の仕方は、大きく変わらざるを得ない。そんな激変に晒(さら)されたとき、生き残るための大胆なリストラも含め、銀行は生まれ変わるべきなのか。それとも市場からの退場という結果を覚悟の上で、不正を排し皆で地道な努力を続ける道を選択すべきなのか。

正直に言えば、本来なら選択肢はもう少しあると思われる。
ドラマゆえにデフォルメされた展開という感じが否めない。それでも無視できない大切な問題を含むだけに、多くの人が最後まで注目したドラマだった。そして仕事の現実を体感した女性たちも、目が離せなかったのではないだろうか。

個人の働き方に焦点を当てた「わた定」。会社の生き残りをかけて、上司の方針に逆らっても奮闘する男たちを描いた「集団左遷」。
一見女性向き・男性向きと対照的に見えるドラマだが、実は性差を超えて各人の関心から注目する物語だった。やはり番組は、テーマやメッセージの普遍性こそが視聴者を惹(ひ)き付けるという当たり前を改めて気づかせてくれる優れた作品だった。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所