ムロツヨシ×古田新太が若者の心を燃やす~ドラマ24の新境地『Iターン』~

2019/7/25 12:00

今クールの『Iターン』は、テレビ東京ドラマ24の流れの中で、かなりユニークな作品だ。
2005年に始まった同枠は、制作費は潤沢とは言えないが、奇想天外な切り口や展開のドラマが多い。その自由さが魅力で、ギャラが安くとも参加したがる俳優やクリエーターが多いのが特徴だ。

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テレ東ドラマ24の視聴率推移


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世帯視聴率も、このところ上昇を続けていた。
深夜ゆえ若者中心と思いきや、実は中高年で人気に火がついている。スイッチ・メディア・ラボによれば、19歳以下や1層(20~34歳)では、大きく変わっていなかったが、今春の『きのう何食べた?』まで、2層(35~49歳)で1.5倍ほど、3層(50歳以上)では2倍近くまで視聴者が増えていた。

ところが今期『Iターン』の序盤は、異なる一面を見せている。
2~3層は前期より下がっているが、1層で急伸・19歳以下で微増と、若年層で盛り上がっている。
同枠の流れの中で、珍しく中高年ではなく若者の心に火をつけ始めている。

■W主演の二人

主演はムロツヨシと古田新太。
ムロツヨシは、前作『大恋愛~僕を忘れる君と』で戸田恵梨香と共演し、若年認知症の彼女と大恋愛をし支えるという、感動ドラマでの活躍が記憶に新しい。今までのムロツヨシのイメージを革命的に変えたとも言える作品だった。
今回は、平凡なサラリーマンがヤクザに追われ、舎弟業と会社員という、恐怖のWライフを強いられる役を演じている。

古田新太は、前クール『俺のスカート、どこ行った?』で、ゲイで女装家の高校教師役を熱演し、強烈なインパクトを与えた。設定は奇想天外だが、実は現代版「金八先生」ともいうべき、人生に大事な事を生徒たちに伝えるヒューマンドラマだった。
"どんな役でも演じる"古田新太は、俳優業にとどまらず、声優ではバカボンのパパまでやってのける。さらにラジオパーソナリティー・DJなど感性豊かに何でもこなすアーティストだ。
多芸な2人がどんな世界を描くのか、序盤からその才能を発揮する両者の掛け合いがおもしろい。

■脇も見もの!

もう一人重要なのが、2クール連続の長編作『あなたの番です』に主演している田中圭。
妻を殺されたスポーツジムのインストラクター役を演じているが、『Iターン』ではヤクザの組長役という、新境地の役に挑戦している。
いつも、優しくて弱めのいい男役が多いが、極端にハードなキャラに挑んでいる。田中圭の新しい顔も楽しみだ。

そして、驚くべき豪華キャストの共演者たちだ。
スナックのママ役には黒木瞳。極道の妻を思わせる迫力とすごみのある低い声で、ヤクザのチンピラをピシャリと斬る。
美しさは今も健在で、古田新太と同様に"どんな役も演じられる"ザ・女優の演技がドラマに勢いを与えている。

笹野高史・相島一之・手塚とおる・渡辺真起子ら超個性派の俳優陣が、短時間ドラマにも関わらず次々と登場し、本当に深夜枠のドラマなのかとうれしい疑問を抱くほどだ。



原作は福澤徹三の同名小説『Iターン』。
主にホラー小説や推理小説が主流のスタイルだが、作家に至るまでにさまざまな職業を渡り歩いてきているためか、非現実的な設定のストーリーの中にも、どこかリアリティがある。自身が広告代理店に勤めた経験もあることから、主人公の狛江光雄にどう反映されているのか、興味深い。

作品に対しては、「悪と正義のどちらを選ぶか、自らを生きる道へと導くか、それとも自らを破滅の道に追い込むのかという、ある意味究極の選択を迫られた時に、平凡なサラリーマンはどんな動きをするのだろうかというのに興味を持った」と語っている。
それにしても究極すぎな設定が、スリリングでエキサイティングなエンターテイメントを生み出している。

第2話では、岩切組、組長の岩切猛(古田新太)の愛犬、チワワの"昌三さん"が登場。
その愛くるしいクリクリの目の昌三さんを散歩させることになった狛江(ムロツヨシ)がリードを放してしまい、昌三さんは楽しそうに公園を駆け抜けるが、後を追いかける狛江の滑稽な焦りが笑いを誘った。

人間は、平凡な暮らしを続けているとそこに慣れすぎて、本当の自分を見失いがちだ。
窮地に立たされたら冷静でいられるのか、自分にとって正しい選択ができるか、超究極のシチュエーションで進んでいく先に見えるものは何か?

若年層を動かし始めた同作。ムロツヨシ×古田新太のコンビが、新しい世界を見せてくれるだろう。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所