硬軟演じ分ける大泉洋の魅力~レベルアップした『ノーサイド・ゲーム』~

2019/7/31 18:40

初回から3話までの平均視聴率が12.2%と順調に序盤を終えたTBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』。
原作・池井戸潤×プロデュース・伊與田英徳×演出・福澤克雄による作品で、『半沢直樹』(13年夏)・『ルーズヴェルト・ゲーム』(14年春)・『下町ロケット』(15年秋)・『陸王』(17年秋)・『下町ロケット2』(18年秋)に次ぐ6作目となる。

サムネイル
3ドラマの層別個人視聴率


【無料配信】「ノーサイド・ゲーム」最新話を配信中>>

基本は小が大に挑み、大組織の理不尽を跳ね返してゆく物語だが、大泉洋が主演する今回の『ノーサイド・ゲーム』は、従来とちょっと異なる。
何が支持を得ているのかを考えてみた。

■壮年・既婚男子、そしてビジネスマン

今クールの新作ドラマ序盤では、上野樹里主演『監察医 朝顔』が3話平均12.9%でトップ。2位が同率で大森南朋主演『サイン-法医学者 柚木貴志の事件-』と大泉洋主演『ノーサイド・ゲーム』となった(以上はビデオリサーチ関東地区のデータ)。

いずれも接戦と見えるが、関東2000世帯5000人以上の視聴率を詳細な属性別に把握しているスイッチ・メディア・ラボのデータだと、見られ方の違いが浮き彫りになる。
まず『サイン』は、3+層(男女65歳以上)が世帯視聴率を支えている。近年のテレ朝ドラマの特徴と一致する。また『監察医 朝顔』は、若年層で少し強い。月9らしさが垣間見られる。職業的には「パート・アルバイト」の人たちの間で一番よく見られている。

これらに対して『ノーサイド・ゲーム』は、年齢的には3-層(男女50~64歳)で突出している。職業では「経営・自営」と「会社員」に強い。ビジネスマンの間で、最も注目されているドラマなのである。
また未既婚の男女でトップクラスだが、特に既婚男性で突出している。
ビジネスと社会人スポーツの世界ゆえ、壮年・ビジネスマン・既婚男性にとって身近なのだろう。

■池井戸ワールド×大泉洋×松たか子

TBSの池井戸ドラマは今回で6本目だが、うち3本が社会人スポーツが舞台だ。『ルーズヴェルト・ゲーム』(14年春)、『陸王』(17年秋)、そして今回の『ノーサイド・ゲーム』。

これら3本で比べても、今回の世帯視聴率は遜色がない。
ただし個人視聴率を詳細に分析すると、大泉洋主演の影響が色濃く出ているように見える。前2作は唐沢寿明や役所広司と、本格的な役者が主役だった。ところが大泉は、北海道のローカル番組『水曜どうでしょう』でブレークし、ドラマ・映画・舞台・バラエティなどで多彩な才能を発揮する異色の俳優だ。
硬派から軟派まで幅広い演技が、これまでとは異なる視聴者をひき付けているようだ。

例えば未婚女性・既婚女性・主婦でも高い数字をとっている。基本は"男くさい""熱(暑)苦しい"路線だが、大泉のギャップが女性もひき付けている。

「大泉さんのマジな演技は好きだ...」
「大泉洋はどんな役でも出来ちゃうよなぁと思いつつもちょいちょい大泉洋が出てきて笑う」
「大泉洋が全身全霊で演じる、仲間のために死ぬ気でぶつかる熱血スポ根ビジネスドラマという新境地」(以上、SNS上のつぶやき)

もう1点、松たか子が恐妻を演じている点も新しい。

「松たか子さんの手厳しい感じも好き」
「いつもの日曜劇場の主演の奥さん役は"影で旦那を支える"的な感じだけど、今回は"かかあ天下"で奥さんが強い。主演が大泉洋さんだからかな」

前2作では、女優では秘書やチアリーダーのみだったり、家庭は登場するが妻の影は薄く、息子や娘が重要だったりした。しかも前2作は主人公が社長で、会社の比重が大きかった。
ところが今回は中間管理職だ。家庭でのグダグダしたシーンが、多くの視聴者に親近感を抱かせているようだ。

■前2作を超える!?

他に経営・自営や会社員、さらにパート・アルバイトで前2作より見られている。
やはり主人公が社長ではなく、中堅サラリーマンが組織と家庭の両方でさまざまな課題に直面し、乗り越えて行く設定が支持されているのだろう。

ただし男女19歳以下や1層(男女20~34歳)では、前2作に届いていない。
山崎賢人・竹内涼真・工藤阿須加・鈴木伸之などイケメンが出ていたが、今回はマッチョで厳つい男たちのオンパレードのせいかもしれない。

それでも負の条件を跳ね返し、序盤は前2作を凌駕(りょうが)している。
スポーツの勝ち負け・組織内での成否に加え、家庭の問題も絡ませた重層構造の今作。どこまで話が膨らみ、最終回のノーサイドでどんな感動と納得が待っているのかを期待したい。その展開次第では、これまで以上にブレークする予感がしてならない。

【無料配信】「ノーサイド・ゲーム」最新話を配信中>>

文・鈴木祐司 次世代メディア研究所