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東京から南に358km、伊豆諸島の最南端に位置する青ヶ島。
ここで日本一の塩作りに取り組む女性がいる。厳しい絶海の孤島だが、だからこそある美点を生かして優れた品を作り出している。
『セブンルール』には、こんな"あっと驚く出会い"がある。

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山田アリサが塩作りを行う青ヶ島


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■数奇な運命の孤島

青ヶ島は人口170人程の小さな島だ。この島で特産品「ひんぎゃの塩」を作っているのが、塩職人の山田アリサ(57歳)。

「ひんぎゃ」とは、地中から蒸気が噴き出す"噴気孔"を表す島言葉。
島を囲むミネラル豊富な海水を材料に、地熱のみを利用してじっくり時間をかけて作られた「ひんぎゃの塩」は、大粒で甘みがあるのが特徴。「食材の味を引き立たせる最高の塩」と、東京の一流レストランからも絶賛されている。

八丈島から南へ80kmほどの青ヶ島には、筆者もテレビ番組のロケで訪れたことがある。
年末年始の訪問だったが、冬の海は荒れ、連絡船は何日も欠航した。仕方なくヘリコプターで往復したが、この往来の困難さゆえ、観光客は年間1000人前後しかいないという。

島には数奇な歴史がある。
活火山の同島は1785年の噴火で全島が全滅し、無人島となった。
それから40年ほどで、島から脱出した全島民が帰還する"環住"が達成された。これを指導したのが佐々木次郎太夫伊信で、柳田邦男は「青ヶ島のモーゼ」とたたえている。

その末裔(まつえい)に奥山治(1918-2000年)がいた。
戦後まもなく27歳にして島の指導者になった。そして60~70年代、日本の僻地(へきち)・離島が廃れていく中、日本国から独立し治外法権をとる覚悟で、東京都に激しく陳情した。
こうして島の生活と文化と暮らしを守りきり、「現代のモーゼ」とたたえられている。

■女モーゼ見参!

この数奇な運命の島に、新たなモーゼが現れた。青ヶ島で生まれ育った山田アリサだ。
小さい頃は電気がなく、ランプ生活で食べ物はほぼ自給自足。勿論(もちろん)、娯楽もなかった。そんな環境の中、彼女が目を輝かせたものは、島の大人たちが作った芝居だった。

芝居に心を奪われた彼女は「いつかプロの舞台に立ちたい」と思い始める。そして20歳の時、難関を突破し「文学座」の養成所へ入所した。その後、劇作家・井上ひさしが立ち上げた「こまつ座」に入団。しかし10年経(た)ってもチャンスをものにできず、両親の死にも直面し、失意のうちに青ヶ島に戻ってきた。

そんなある日、「一日で辞める男性もいる」というほど過酷な塩づくりの仕事に出会う。50度を超すサウナのような釜場で行う地道な作業。
彼女のルールの一つは、「釜場にいるのは20分まで」。仕事の厳しさが伝わってくる。

役者を辞めた後、島の男性との結婚・離婚を経た山田は、大学生の娘を持つシングルマザーでもある。
「娘と必要以上に連絡を取る」が五つ目のルールだが、高校から親元を離れざるを得ない青ヶ島の親子の絆が表れている。
また「食品は冷凍保存する」というルールもある。連絡船が何日も欠航すると、今でも食糧不足に陥る。絶海の孤島に暮らす上での重要なルーティーンとなっている。

■仕事の仕方と生き方

仕事の仕方にもルールがいくつかある。
「塩の前では煩悩を捨てる」というが、塩の作り手に迷い・欲望・余計な感情があると、それが塩に移ってしまうという。

「塩は透明な袋に入れる」も大切なルールだ。
売ることを考えると、見てくれの良いパッケージを使いたくなる。ところが山田は、塩にごみなどの不純物を混入させないことを最優先する。
透明な袋に入れ、テーブルに何度も叩(たた)きつけることで、静電気が発生し不純物がビニールに吸い寄せられてくるという。最終チェックを優先して、透明な袋を使い続けているのである。

「内地から来た人は地熱釜料理でもてなす」というのもある。
食材を地熱でじっくり調理すると、他では味わえない美味になるという。内地から来た人に、島の美点をじっくり味わってもらう"もてなしの心"が、「青ヶ島の塩を日本一にする」という最後のルールにつながっている気がしてならない。

いずれにしても島の塩を日本一にしようという山田の生き方は、江戸時代の佐々木次郎太夫伊信や昭和の奥山治につながる、青ヶ島に脈々と伝わる"島の自立・発展"への願いに思えてならない。
「革命は辺境から」とよく言われるが、最も不便な孤島の状況を逆手にとって、日本一を目指す女猛者を取り上げる『セブンルール』に脱帽だ。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所

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