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石原さとみ主演『Heaven?~ご苦楽レストラン~』が意外な展開を見せている。
わがままで適当なオーナー(石原さとみ)。彼女の発言に振り回される福士蒼汰など従業員たち。これまでは登場人物一人ずつに焦点を当てながら、漫画のページをめくるようにストーリーが展開して来た。

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『Heaven?』出演の石原さとみ


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ところが第6話では、店長の堤計太郎(勝村政信)が話の中心となりながらも、物語の中心に「良いレストランとは何か?」「日本流もてなしは本当に正しいのか?」など、店のあり方を問う深い哲学が初めて滲(にじ)み出た。

■日仏でかくも異なるサービス論

これまで影が薄かった店長(勝村政信)は、以前働いていた牛丼屋の仲間達が来店したのをきっかけに張り切り始め、オーナー(石原さとみ)と意見を対立させてしまう。
「日本のサービスは素晴らしい!」と訪日外国人観光客から評価される日本の接客業だが、今回を見ると接客業のあり方を考え直さざるを得ない。

日本のサービスには、「お客様は神様」という精神がある。
従業員がお客に接する前から、すでに存在する上下関係は日本特有かもしれない。
例えばフランスでは、洋服店・ブティック・チーズ専門店・お惣菜(そうざい)店など、あらゆる個人商店やレストランに入る時は、必ず「ボンジュール」とお客から声をかける。日本で言う「おじゃまします」に相当するあいさつだ。

そして店員側も、「ちゃんとあいさつするなら入ってもよし!」とでも言いたげに、初対面の客を見定めるように振る舞う。ところが日本人の客には、"お邪魔させてもらって、おたくのサービスを利用させてもらう"という心は、ほぼ皆無と言っていいだろう。
「丁重に受け入れられ、手厚く大事に扱われるのが当たり前」と考えている人が大半だ。

日仏でかくもサービス業の姿勢は異なる。
ただし簡単にどちらが正しいとは言えない。日本のように、サービスを提供する側ができる限りを尽くすことで、また来てもらえるリピーターを獲得するメリットはある。
これが日本が外食産業で店舗数世界一を誇る背景で、そこには熾烈(しれつ)な競争が存在することも意味している。表では「お客様は神様」と言いながらも、実態は生き残りをかけた戦いを日々続けているのである。

■石原さとみの経営論

売り上げとコストのバランスは、「つぶれない程度にバランスが取れてればそれでいい」と言い切る黒須仮名子(石原さとみ)。この発言は、現代的な割り切ったサービス精神と言えるかもしれない。
レストランに来た客のわがままとも言えるTPOを無視した要望に、どこまでも必死で応える店長だが、自我を殺し、店のポリシーに背を向け、身をすり減らしながら提供するサービスに、お客たちは皆喜んではいるように見える。ただし伊賀(福士蒼汰)・川合(志尊淳)・ソムリエの山縣(岸部一徳)・シェフの小澤(段田安則)らは顔を曇らせている。

「NO!と言えない日本人」の特性もあろう。
お客のリクエストに応えようとマジメな店長は、お客様に対して「NO!」と言うことができない。
そんな店長の行動に対して「NO!」と言えない伊賀。違和感を持ちながら、クオリティを落としてでも誕生日プレートを提供するシェフ。苦笑いを浮かべながらそれをテーブルに運ぶ川合。
誰一人自分からは「NO!」とは言わないのである。

店長が悟るまで、周囲の皆はただただ待つ。
優しさなのか、単に波風を立てないための沈黙なのか、全てがオブラートに包まれて物語は進展する。

ただしオーナーの黒須は、最後にズバリ問いただす。
「店長はこの一週間楽しかった?私は前の方が楽しそうに見えたけど。お客様に懸命に寄り添おうとして息苦しくなってたんじゃない?」
「一番大事なのは自分よ。さらに言えば私が快適かどうか。これがこの店の在り方よ」と言い切る。
店のやり方や経営に多少の問題があっても、「働いている従業員やオーナーが楽しめなければ、店に来る客も楽しめない」と言う考え方は、どこか芸術的でもある。
そしてラストシーンでは、わがまま放題になってしまったお客のリクエストをしらみつぶしに断っていく笑顔の川合が、まろやかで柔らかい強さを放っていた。

コメディタッチの一話に、日本のサービスについて考えるメッセージが忍んでいたことに、改めて佐々木倫子と同ドラマ演出陣の魅力を感じた。
今後はどんな隠し味が仕込まれているのだろうか。既に涎(よだれ)が出て仕方ない。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所

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