大泉洋と松たか子が幅を広げた『ノーサイド・ゲーム』~世代間での評価差の意味~

2019/9/ 5 15:56

終盤に入った大泉洋主演『ノーサイド・ゲーム』。
日本テレビ『24時間テレビ』のあおりを受けた第7話を除くと、このところ世帯視聴率は順調に推移している。実はこのドラマ、世代間での評価にちょっと差が生まれている。

サムネイル
『ノーサイド・ゲーム』の視聴率推移


【無料配信】「ノーサイド・ゲーム」最新話を配信中>>

■老若での評価の違い

ビデオリサーチが関東900世帯で調査する視聴率では、初回13.5%の後、4話までで10%台に下げた。ところがその後持ち直し、『24時間テレビ』の裏となった第7話を除くと、11%台以上で推移している。

一方、関東2000世帯5000人超の属性別視聴率を測定するスイッチ・メディア・ラボのデータでは、少し気になる傾向が見られる。
若年層では視聴率は当初からの水準を保ったまま8話まで来ているが、3-層(男女50~64歳)や3+層(男女65歳以上)では、序盤で見られていたほど中後半では見られていない。明らかに中高年層では、途中の脱落者が一定程度出ている。

同様の傾向は、属性別でも見られる。
未婚の男女は安定した数字で推移しているが、既婚の男女では脱落者が見られる。経営者や会社員でも同様だが、大学生の視聴は安定している。
やはり世代間、あるいは社会や家庭生活での差とみても良さそうだ。

■大泉洋と松たか子が広げた物語の幅

主演の大泉洋が演じる君嶋隼人は、ラグビー部のゼネラルマネージャーだ。
序盤では頼りなさすぎだったが、物語が進むにつれGMが板についてきた。選手たちとの信頼関係も築き上げ、固く結ばれた絆が見ていて気持ち良いし、だからこそ感動を呼ぶ。

大泉の熱演は、言うまでもなく素晴らしい。
ただし熱血しているだけではなく、わかりやすい感情の揺れや、家庭に戻った時のヌケ感が、また味わいがある。

曲がった事を嫌う、君嶋と同じ価値観を持つ妻・真希役の松たか子。
その妻にビシバシと刺されながら、夫婦の会話の中でしか見せないオフになった夫と、GMとしてキリッと気を張っている君嶋の二面性の対極。これらは松たか子との掛け合いがあるからこそ、生み出される産物であり、大泉洋だからこそ演じ分けられたのではないだろうか。

ドラマは、会社とラグビーをかけた男たちの闘いが主軸だが、人間としての信念を熱く描くヒューマンドラマの幅と味わいは、明らかに大泉と松により豊かになっている。

■世代間の見え方の差?

人間は、ずっと闘い続けることはできない。帰ってくるオアシスが必要だ。
仕事人間の中には、家に帰ってきても鎧(よろい)を脱ぐことをせず、闘いモードのまま家族と接するから、待っていた家族とはすれ違い、家庭内がギクシャクしてしまうことがある。
夫婦仲や親子関係に亀裂が入っていることすら気づかず、気づいた頃にはもう遅い。修復不可能になっていることだってある。

妻や子供たちとの会話がある家庭を描くことで、一家族としてのあり方を現代人に提示するという、池井戸潤のメッセージが込められているようだ。だたしこの受け取りには、世代間に差があるのかもしれない。

GMとして働く男、ハッキリと物申す妻を持つ夫、ラグビーに夢を抱く息子の父親に共通して言えることは、人として真っすぐに生きるという信念を忘れず、前に進んでいることだ。
どんな困難が立ちはだかろうとも、その軸は変わらない。
ドラマの軸となるテーマが、家の大黒柱のようにどっしりと構えているから、ストーリー性にブレがなく、最後まで強い。

ただし仕事と家庭を、大泉演ずる君嶋隼人のように生きられる人はさほど多くはない。
オンとオフを切り替えられず、仕事人間のまま50歳代以上となってしまった男たちにとって、このドラマはちょっと眩(まぶ)し過ぎるかもしれない。
また仕事人間の夫に、松演ずる妻・真希のように、夫に意見できなかった女たちにも、正視できない思いがあるのかもしれない。
ところがワークライフバランスなどが当然と見る世代にとっては、この夫婦のバランスは"かくあるべし"と望ましい関係に見えているのだろう。

池井戸作品の定番でもある、困難に立ち向かうストーリー展開は、期待を裏切ることなく、真っ正面から弾丸が飛び込んでくる仕掛けだ。
それに主人公とその仲間達が、勇敢に歩を進めていくのだが、第8話が終了したところで、またしても問題が発生した。
トキワ自動車を中心としたカザマ商事の買収問題に絡む、オイル漏れのタンカーの事故が、今後のトキワ自動車とラグビー部の存続に、大きな鍵を握ることになった。
金と地位のために買収を進め、社長の座を狙う滝川桂一郎常務(上川隆也)に、君嶋はある資料を持って闘いに挑む。大きな組織を相手に、敵の陰謀を暴くことができるだろうか。

最終回前のセミファイナルで、この緊迫感とストーリー展開がマックスに達すると予想されるが、さらに大きな困難が待ち受ける最終回では、どんな結末が待っているのだろうか。
ラスト2話は、目が離せなくなりそうだ。期待に胸が膨らむ。

【無料配信】「ノーサイド・ゲーム」最新話を配信中>>

コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所