最後まで傍若無人でわがままな石原さとみ~『Heaven?』の一貫した魅力~

2019/9/13 11:40

石原さとみ主演『Heaven?~ご苦楽レストラン~』が、ついに最終回を迎えた。
佐々木倫子の漫画原作『Heaven?』の復刻版で、原作の漫画に忠実なラストを飾り、ファンにとっては満足なドラマだったのではないだろうか。

サムネイル
『Heaven?』出演の石原さとみ


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■苦楽ないまぜの不思議な空間

レストラン『ロワン・ディシー』で働く従業員達のヌルさ全開は、最後まで健在だった。
特にサービスの向上を目指そうとはせず、売り上げを伸ばそうともしない。客の入りを増やしたわけでもなく、従業員が成長したわけでもない。全てがそれぞれ現状維持のままだった。

別にそれをポリシーとして、かたくなに貫いて来たわけでもない。
人も場所も、ただただ"そのままで良い"と、漂っていただけなのだ。

仕事の効率を上げ、売り上げを伸ばすには、オーナーと従業員がそれなりの改革や対策を、ミーティングなどを通して打ち出していかなければならない。ところがロワン・ディシーでは、まったく違った形で、オーナーと従業員達のコミュニケーションが取られていた。

例えばレストランで働くうちの一人が問題を抱えると、みんながそれについて考える。
オーナーはざっくり漠然とした発言しかしない。多少大ざっぱで思いつきのように見えるが、意外に問題の核心をつく発言をしているのである。
そして皆のガヤガヤした反応の末、悩んでいた一人もまたいつもの自分に戻っていく。
こうして数々の問題をクリアしながら、ロワン・ディシーのみんなが結束していた。

コミドラン・川合太一(志尊淳)の独特な現代的スルーの仕方。
面倒に足を踏み入れないソムリエ・山縣重臣(岸部一徳)の大人の知恵。
真面目でお客にも同僚にも誠実であるシェフドラン・伊賀観(福士蒼汰)の真摯(しんし)な態度。
肝が小さく、トラブルですぐにパニックに陥る店長・堤計太郎(勝村政信)の小市民ぶり。
心配性で弱気になると塩気が薄くなるシェフ・小澤幸應(段田安則)の不思議な存在感。
彼らの姿を眺めていると、"そんなにクヨクヨと細かく悩んでも仕方がないじゃないか"と言われているようで、ホッと一息つけて癒やされる。

■心憎いエンディング

最終回では、ロワン・ディシーが廃業に追い込まれる。
しかし、それは「追い込まれた」と言うより、「流れに乗った」と言う方が的確と言えよう。

レストランの賃貸契約更新を前に、和菓子屋と手を組んでやってきた不動産屋の提案は、ロワン・ディシーの条件付移転で、事実上の立ち退き交渉だった。
悪い条件ではなかった提案に、簡単に乗ろうとするオーナーとは反対に、いつもながら"伊賀くんにどうにかしてもらおう"と人任せな従業員たち。
店長の堤、コミドランの川合、ソムリエの山縣、シェフの小澤が一丸となって、店の存続に意気込んだ。

「やっぱり、この古さとダメさが、居心地いいんだよねぇ。」と、まったりと川合が呟(つぶや)く。
確かに褒めるほどの長所がないけれど、そこにいて落ち着く場所というのは、意外に少ないものだ。新しくオープンしたショップやレストラン、カフェに行っても、近代的すぎて全てが新しく、人工的過ぎる違和感を受けることだって良くある。

古くて落ち着く店は木を使ったものが多く、時間を経た天然素材の温かみは何にも代えがたい。
ロワン・ディシーは、移転契約などの問題を解消したところで"あっけない結末"を迎える。拍子抜けするようなこのラストは、言われてみれば初めから想定不可能ではなかった。

テレビドラマは年々、刺激的なストーリーや想定外のインパクトで視聴者を惹(ひ)き付けようとしてきた。ところが『Heaven?~ご苦楽レストラン~』は、こうした流れに背を向け、"ぬるーい感じ"を貫き通した。ストーリーらしいストーリーが展開したわけでもない。
ストレスフルな社会に生きる現代人にとって、意外に一番必要な雰囲気を提供してくれたドラマかもしれない。

しかも、いつもナレーションで出演していた、謎の紳士(舘ひろし)が、最後の最後で正体を明かす展開も、ただぬるいだけじゃ終わらない心憎い演出だった。
最終回の余韻は、見事な着地と言えよう。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所