高畑充希は"あり得ない"主人公の殿堂入り確定!? ~『同期のサクラ』の度肝を抜く演技~

2019/10/15 16:52

日本テレビ『同期のサクラ』が、視聴者の度肝を抜く展開で始まった。
初回の世帯視聴率8・1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、必ずしも好調と言えない。ただし内容的には、遊川和彦描く"あり得ない主人公"を、高畑充希が期待以上に好演している。
記録はさておき、記憶に残る名作になるだろう。

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『同期のサクラ』毎週水曜 夜10時放送


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■"あり得ない主人公"列伝

遊川和彦が描くドラマには、"あり得ない主人公"が活躍する名作がたくさんある。

1998年放送の『GTO』(反町隆史主演)は、暴走族の元リーダーが教師となって学校を立て直す物語。振る舞いはむちゃくちゃだが、目先の理屈よりも「ものの道理」を通そうとする姿勢で、次第に周囲を納得させる"あり得なさ"が秀逸だった。

2005年『女王の教室』(天海祐希主演)は、一見強権的で"悪魔のような鬼"教師。ところが自らが「壁」となることで、児童の成長を促す感動的なドラマだった。

他にも10年『曲げられない女』(菅野美穂主演)、11年『家政婦のミタ』(松嶋菜々子主演)、15年『〇〇妻』(柴咲コウ主演)、18年『過保護のカホコ』(高畑充希主演)、19年『ハケン占い師アタル』(杉咲花主演)などがあった。
"あり得ない"キャラクターなのに、視聴者の心を動かす主人公を描く名手が遊川和彦なのである。

■高畑充希の"あり得なさ"

北の小さな離島から、一人上京した主人公のサクラ(高畑充希)。
大手ゼネコンの入社式で、「私の夢は、故郷と本土を結ぶ橋を架けること」と宣言。ところが「忖度できない」性格から、さまざまなあつれきが生まれ、トラブルが続発する。

それでも周囲の態度は次第に変化する。
夢に向かって脇目もふらずに突進するサクラに、最初は冷めていた同期も次第に巻き込まれ始める。どんな逆境になろうと「自分にしかできないこと」にこだわり、自分を貫き続けるサクラと、その同期たちの10年続いた"あり得ない"物語のスタートだ。

初回でまず驚くのは、入社式の社長のあいさつに手を挙げてズバズバ感想を述べてしまう点。
「良いことを言っているのに長すぎる」と失礼な感想を述べ、データや言葉使いの間違いを指摘してしまう。現実にこんなことをしでかしてしまった新人を聞いたことはないが、もし「やってみろ」と言われてもなかなかできることではない。
これから30年以上続く会社人生を考えたら、普通の人なら絶対黙ってしまうだろう。しかも「あえて指摘するほどの内容ではない」という分別が先に来る。

■初回ラストのすごさ

初回はサクラが入社した花村建設の新人研修がメイン。
5人ずつのチームが作られ、各班に「今後、会社がつくるべき建築物」の提案用模型の制作が課せられる。社長賞がかかった真剣勝負だ。

ところがサクラがリーダーとなったチームの作品は落選。
そこで社長の判断にまたも反論してしまったサクラは、他の4人が希望の部署への配属を果たしたが、彼女だけは人事部預かりとなってしまった。

落胆しているはずのサクラを気遣う4人。
ところがサクラは、突然「諸君、あしたはもっと良いものをつくろう!」と言い出す。建築家のガウディが、バルセロナの「サグラダ・ファミリア」の工事中に、作業員たちに向かって言い続けた言葉だ。

サクラはこうも続けた。
「私には夢があります。ふるさとの島に橋を架けることです」
「私には夢があります。一生信じ合える仲間をつくることです」
「私には夢があります。その仲間と、たくさんの人を幸せにする建物を造ることです」
「それだけは諦められないので、私は自分にしかできないことをやります」

ドラマの醍醐味(だいごみ)は、視聴者の予想を裏切る展開だ。
それは普通の人々の言動から外れた"あり得ない"キャラクターや発想から繰り出される。しかも単に"あり得ない"のなら、視聴者は感動しない。
凡人の弱さや、安きに流れる安直な考えを超えるからこそ、人は自らを省み心が動く。

遊川和彦が創造した"あり得ない"主人公を、高畑充希が度肝を抜く演技でやり切った同ドラマの初回。
これはもう、遊川和彦がこれまで書いた数々の名作に並ぶような傑作になるに違いない。2話以降を楽しみにしたい。

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文・鈴木祐司 次世代メディア研究所