ここから本文です

TBSの火曜ドラマ『G線上のあなたと私』が波瑠・松下由樹・中川大志によるトリプル主演で始まった。
初回の世帯視聴率は7.8%で今ひとつだったが、スイッチ・メディア・ラボの視聴者層別個人視聴率では、女性10代から50代まで幅広く支持されている。さらに会社員やパート・アルバイトの人々も注目しており、幅広い層が共感する内容と思われる。

サムネイル

波瑠主演『G線上のあなたと私』


役者でなく音が主人公のオープニングが秀逸>>

■3人の主役が代表するもの

主役の一人・加瀬理人(中川大志)は、社会に出る前の学生(19歳)。イマドキのイケメンなのに、ちょっと不愛想な"こじらせ系男子"でもある。
波瑠が演ずるのは、寿退社間近に婚約を破棄されていまい、仕事も結婚も失った也映子(27歳)。ターニングポイントで、次に惑うアラサーだ。
三人目は松下由樹が演ずる姑(しゅうとめ)や夫のために自分を犠牲にしてきた専業主婦・北河幸恵(46歳)。

以上、年齢も立場もバラバラな男女3人の、まったく共通点のない主人公たち。
毎日をもがきながら、"ヴァイオリン"を通して関係を深めていく。初めてのヴァイオリンに挑戦し奮闘する3人の物語は、悩める大人たちにエールを贈る、恋と友情の物語でもある。

原作は、いくえみ綾の同名漫画『G線上のあなたと私』で、「Cocohana」の連載を経て、集英社から単行本で全4巻発行されている。
原作のきっかけは、作者が実際にヴァイオリン教室に通ってみたら、意外にも面白く、難しかったことが作品の材料だという。

■名曲が人々の心を動かす

ドラマのテーマにもなっている、バッハ作曲の『G線上のアリア』は、誰もが耳にしたことがある名曲。
オリジナルは、菅弦楽組曲の中のアリアで、シンプルなメロディに、一音ずつ下降していく和音進行が、本当に美しい。

ヴァイオリンやチェロの独奏曲として演奏される時は、4本ある弦のうちのG線だけを用いてメロディを歌っているので、『G線上のアリア』と名付けられている。この演奏法で、ポジションの動きや弦の太さも相まって、より深い音が生み出され、名演奏が生まれることもあるほどだ。

アリア自体はテンポがゆっくりした曲。
しかも超絶技巧があるわけでもないので、ヴァイオリンを始めた初心者が「演奏できるかも」と、夢を抱きやすい。
ところが、いざ弾いてみてわかる壁が立ちはだかる。繊細に磨かれなければならない音楽性や表現力が、その難しさの一つと言えるだろう。

クラシック界だけでなく、この曲に魅せられたアーティストは数知れない。
R&BのSweet Boxがカバーしてラップを入れてサンプリングし、97年に発売された「Everything's Gonna Be Alright」は、世界中で大ヒットとなり、クラシック曲のカバーリングの道を切り開いた一曲となった。

ポップスとしてヒットしやすいコード進行はいくつかあるのだが、特にコード進行の中で音程が下降していく点が特徴だ。
つまりベースの音がドから始まったら、シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レと下がっていく。このため和音の響きにどこか哀愁が漂う優しい世界が広がり、聞く側の心に染み入りやすい。
そこにポジティブな歌詞を載せることで、大ヒットにつながったと考えられる。

かくして『G線上のアリア』は、クラシックを超えてどんなジャンルの楽曲になっても、多くの人々の心をがっちりと掴(つか)むようになった。もはやクラシック界のカリスマ的名曲と言える。

■三者三様が幅広い視聴者の心をつかむ

ドラマでは、冒頭からセリフもない沈黙の中、ヴァイオリンの独奏で旋律が流れる。
そして主人公3人が、ヴァイオリンの音色にそれぞれ心を奪われるシーンと続く。ストーリーの始まりは、主人公は実は役者ではなく"音楽"という演出も新鮮で、心奪われる。

ストーリー展開では、シーンの切り替えや回想シーンのタイミングも、ハッと思わせる演出がいくつもちりばめられていて面白い。
演出とは対照的に、波瑠の演技はごく自然で、ラフで平凡を演じる波瑠の新たな発見も心地よい。
"専業主婦あるある"に心のモヤモヤを抱えた幸恵を演じる松下由樹の演技も、とても共感できる。おおらかで明るい幸恵の存在は、このドラマには欠かせないキーパーソンとなるだろう。
そして若さと大人とのはざまをゆく理人を演じる中川大志。彼が醸し出す、ぎこちなさや危うさが絶妙だ。

こうした三者三様が興味深いドラマだ。
しかも『G線上のアリア』が美しいメロディで簡単に引けそうだが、実際に挑戦すると意外に難しいように、三人の主人公は意外にままならない人生に苦闘する。
そんな3人は、普通に暮らしていたら絶対に出会わない。そんな3人が『G線上のアリア』に惹かれ、関係を結ぶようになった。今後どう展開していくのか、どれほど美しいハーモニーを奏でてくれるのか、楽しみでならない。

役者でなく音が主人公のオープニングが秀逸>>

コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所

Facebookコメント
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。
PR

最新記事

rss

もっと見る

本文はここまでです このページの先頭へ