中谷美紀は企業社会のジャンヌダルク!?~『ハル~総合商社の女~』が斬る旧弊~

2019/10/25 15:42

テレビ東京で放送されるドラマBiz枠で、『ハル~総合商社の女~』が始まった。

18年4月に始まった同枠は、『ラストチャンス 再生請負人』(仲村トオル主演)、『スパイラル~町工場の奇跡~』(玉木宏主演)、『リーガル・ハート ~いのちの再建弁護士~』(反町隆史主演)などのように、瀬戸際に立たされた会社組織の再生・再建物語が多かった。

サムネイル
『ハル~総合商社の女~』出演の中谷美紀


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ところが今回の『ハル』は、大企業にありがちな"事なかれ主義"や"各部の足の引っ張り合い"など、古い体質を主人公のシングルマザーが痛快に解決していく物語だ。新たな風が吹き荒れそうな予感に満ちている。

■魅力的なキャスティング

主演は中谷美紀。
昨年、ウィーン交響楽団のヴィオラ奏者と結婚した。もともと聡明で壮麗な輝きをまとったような女優だったが、結婚後は潤いを増し、キラキラしたオーラを放つようになった。
堪能な語学も、早速第一話で披露されていた。

共演者は、藤木直人、白州迅、奥田瑛二、忍成修吾、山中崇、寺田心と演技派俳優がそろう。

ストーリーは、小説や漫画が原作ではなく、先の予想がつかないオリジナル作品。
このドラマを手がける栗原美和子プロデューサーの実話をもとに描かれており、作品にかける情熱、社会に対するメッセージの強さ、そして意気込みと熱量があふれるドラマだ。

■ドラマのテイスト

「コトナカレ主義ヲブッ壊せ!」
日本特有の古い体制と、事を荒立てず無難にやり過ごす会社の体質を、一人の女がぶっ壊し、切り開いていく。ただし中谷美紀演ずる主人公・海原晴は、思いもよらない発想と前向きさで仕事に邁進(まいしん)する一方、シングルマザーとして10歳の息子・涼(寺田心)を育てる。
「仕事とママと、ときどき、恋」というテイストの物語だ。

東京にジャンヌダルク、到来か!
海原晴(中谷美紀)は、10歳の息子がいるシングルマザー。五木商事という総合商社へ、社長のヘッドハンティングでNYから転職してきた。

息子・涼(寺田心)は、英語が堪能な帰国子女で、晴の一番の理解者。年齢より大人びているのも魅力だ。
環境がそうさせたのであろうが、早く大人になる事を求めすぎる現代社会の影が、子供を通して垣間見えるのは、なんとも皮肉ではないか。

■何のために組織で仕事をするのか?

能力のある母親が、海外でキャリアを積み、日本に凱旋(がいせん)帰国しても、男社会で別の軋轢(あつれき)と戦わなければならない現実がそこにはある。
男尊女卑の考えは、想像よりも根強く社会にはびこっており、短時間で変えられる風潮ではない。
今の子供たちの過半が、人としての自覚を持った親のもとで教育され、社会に出る頃にきっと何とか変革され始めるか否か。いずれにしても、先はまだ長い。

だが、絶望感に浸る必要はない。
たくましくシンプルでポジティブな晴が、私たちに希望を与えてくれる。
しかもコレ、ドラマの中の作り話ではなく、実話をもとにしていて「本当にこういうことがあるんだよ!」と背中を押してくれる。

男性だけが悪いわけではない。
古い体制にウンザリし、「変えたい」「変わりたい」と思っているサラリーマンもいるはず。ただきっかけがないだけだし、もし失敗して今のポジションをなくせば、「組んでしまったローンやバカ高い子供の教育費をどうするか!」と考えたら、踏み出す足が引っ込むのも当然と言える。

大きな組織だからこそある、派閥や古い体質の中で生き抜くには、仕事力だけでなくコミュニケーション力も問われる。ここが一番難しいところだが、晴はそんなもの、モノともせず邁進(まいしん)する。
最初はかたくなだったが、刺激されてやがて立ち上がった田村修(田口浩正)の変貌ぶり。実は失っていなかった"仕事への情熱"も、第一話の見どころだ。

「楽しく仕事したい」とウルトラポジティブを裏づける発言力と行動力は、実はあらゆる問題解決につながる。見習いたいところだ。
そんな晴に憧れを抱き、サポートする部下の青柳悠馬は、白州迅が演じる。爽やかで素直なイメージの白州迅にピッタリの適役と言える。

そして晴の直属の上司・和田寿史は、藤木直人が演じる。オフレコ元夫という微妙な位置で、元妻のキャリアウーマンとどう関わっていくのか。

先日のラグビーのワールドカップで、国籍やバッググラウンドの壁を超えて、一丸となって闘い抜いた日本チームは、世界中に感動を与えたが、社会もこうして、性別や人種などあらゆる違いを取っ払って、共存していく時代になったのではないか。

私たちが働く組織や社会は、今後どう変わっていけるのか。このドラマを通して、あるべき姿を考えてみたい。

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コラムニスト:はたじゅんこ
監修:次世代メディア研究所