"俺さま"木村拓哉が鈴木京香で活きる~『グランメゾン東京』が熱いわけ~

2019/11/28 11:07

木村拓哉主演『グランメゾン東京』が熱い。

「料理なめんじゃねえぞ」
「おまえ、どんな料理人になりたいんだ。自分で決めろ」
「俺たちが本気で考えた料理、マネできるわけねえだろ」

バイトの芹田(寛一郎)に浴びせかける尾花(木村拓哉)の言葉は容赦ない。ただし厳しいセリフの数々は、プロとしての覚悟を示すもので、全ての仕事に共通する。発言は芹田に向かいつつも、まるで視聴者に向けられているように、切れ味が鋭い。

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木村拓哉主演『グランメゾン東京』(写真はイメージ)


木村拓哉のセリフが熱い>>

■熱量はホンモノ!

TBS日曜劇場は、中盤から最終回にかけて4割前後、世帯視聴率(ビデオリサーチ関東地区)を上昇させるパターンが多い。今年を振り返ると、『グッドワイフ』35%アップ・『集団左遷!!』68%上昇・『ノーサイド・ゲーム』42%増ときている。いずれも熱い物語という側面を持つ。
この法則を当てはめると、木村拓哉の熱さあふれる『グランメゾン東京』は、最後は17~18%ほどに届く可能性がある。

根拠もある。
全国で140万台以上のネット接続テレビの視聴状況を調べるインテージ「Media Gauge」は、各ドラマの冒頭からエンディングまでの接触率の推移を調べている。
これによると、今のところ『グランメゾン東京』は、どの3本より毎話後半に向けての上昇率が高い。各回すべてで、視聴者が熱い、つまり見ている人が面白いと感じている証拠だ。

「三ツ星狙うんだったら、自分でホンモノを生み出すしかねえんだよ」
レシピをgakuに売り渡した芹田を叱る代わりに、尾花が真の料理人の厳しさを伝えた言葉だ。こうした熱量が、『グランメゾン東京』の真骨頂だ。

■面白さにはワケがある

面白いと感ずる人が多いドラマにはワケがある。

まずストーリー展開。
3年前、尾花は、パリにオープンした自分の店・エスコフィユで二つ星を獲得。ところが己の慢心から事件を招き、店も仲間も信用もすべてを失った。

そんな尾花が、女性シェフの早見倫子(鈴木京香)と出会うところから物語は始まる。
東京で三つ星レストラン「グランメゾン東京」を作り上げようと動き出した。そしてエスコフィユ時代の京野(沢村一樹)、相沢(及川光博)、丹後(尾上菊五郎)、弟子だった平古祥平(玉森裕太)、元恋人のリンダ(冨永愛)などとの関係が再始動した。

次に料理が大きな要素となっている。
素材の組み合わせの意外性。
完成プロセスでの巧みな映像モンタージュ。
読めないスピードでの材料名などのテロップ。
見たことのない斬新な盛り付け。
「料理をドラマチックに見せる」手際は一級品だ。

さらに人間の描き方がすごい。
尾花(キムタク)は料理に対して繊細で誠実。ところが周囲には"俺さま"ぶり全開で、一見「人間として最低」に見える。それでも仲間には、繊細で誠実な側面を持ち合わせている。

例えば「変わったわね、あなたの料理。何か心境の変化でも?」と元恋人に聞かれた際、「あれは俺の料理ではなく、早見倫子シェフの料理」と"俺さま"ぶりが消えていた。

3年前の事件が祥平のミスだったと判明しても、怒ることもなく、彼の再起を促す。仲間の罪を被っての再起を誓った彼の優しさが隠し味になっていた。

■秀逸なチームワーク

チーム「グランメゾン東京」は、影の主人公に倫子(鈴木京香)を置いた点が、木村拓哉ドラマとして新しい。
京野(沢村一樹)を仲間に加えたのは、倫子の熱意ゆえだった。
相沢(及川光博)をチームに引き入れられたのも、家族の問題を配慮した倫子の思いやりゆえだった。
そして店オープンのための資金も、最後は倫子が自宅を担保に入れる覚悟を決めたから、何とか銀行から借りられた。

第6話のエンディングでは、倫子の存在を明示するシーンが登場する。
京野「倫子さんのおかげだ。倫子さんがシェフをやっているから、尾花も自由にやってられる」
相沢「あれっ!もしかして今の尾花、最強?」

各自が少しずつ自らの位置づけを知り、役割をこなす。個々の熱さから成る秀逸なチームワークが、困難をどう乗り切り、三ツ星に近づいていくのか。
ゴールそのものより、そのプロセスが奥深い味わいのドラマであることは、どうやら間違いなさそうだ。

木村拓哉のセリフが熱い>>

文・鈴木祐司 次世代メディア研究所